ジョルジョーネの家美術館
4月11日まで
Giorgione
Castelfranco Veneto, Museo Casa Giogione
12 dic 2009 – 11 apr 2010
www.giorgione2010.it
よく晴れて、気持ちよく暖かくなった日曜日。
ちょうどお昼ごろに到着したら、入口には行列ができていた。・・・しまった・・・。
城壁に囲まれた小さな小さな町、カステルフランコ・ヴェネト(Castelfranco Veneto)で、1500年ごろにヴェネツィアで活躍した、この町出身の画家、ジョルジョーネの企画展が行われている。
というわけで、
一昨日の答えは「カステルフランコ・ヴェネト」。
にじむようにぼんやりと描かれた風景や人物の表情がいかにも情緒的。かつ、当時は、絵画といえば宗教画、歴史画、肖像画、とはっきり決まっていた中で、テーマのわかりづらい、ナゾなものが多いのも、人の気を引く。加えて、早逝しているために記録が限られ、彼自身に関しても「謎」が多く、また、自筆と認められている作品が極めて少ない。
その中でも最も知られているのは、今でも研究者たちの間でも意見の分かれる「嵐」(ヴェネツィア、アッカデミア美術館蔵)だろうか。
ローマやヴェネツィア、フィレンツェなどの大(?)都市だけでなく、全国各地に文化遺産が点在するイタリア。かつ、どこもみな「食」自慢なイタリアでは、もう随分前から、アート&グルメの村おこしが盛んだ。人を呼べる、目玉となる展覧会を開催し、それを観光の核とする。そんなわけで、あまり大きくない町のちょっとした展覧会へ行くと、日帰りバスツアーなどでやってきたイタリア人団体客とはち合わせることが多い。年配の参加者が大半のツアーは平日も多いのだが、それに家族や友人同士などの個人も加わる週末は、できれば避けたいところだが、今回はやむを得ず出かけた。
覚悟の上とはいえ、「本日チケット完売」の張り紙にはさすがに驚いた。とりあえず先に食事をし、出直して、団体と団体の合い間に、なんとか交渉して入り込んだ。
はっきり言ってしまうと、それだけの混雑、苦労してもぐりこんだ割に、企画展としてはかなり物足りなかった。まず、ジョルジョーネ自身の作品が少ない上に、アトリビューション(作者推定)が、えーそうなの?と怪しいものもいくつか含まれ、かなり無理がある。
2003-04年に、ヴェネツィアとウィーンで合同で開催した企画展が、代表作を揃えて数と言い質といい比類なきものだったので、それを越えることはないだろうと最初からあまり期待していなかったが、その予想通りというか予想以下というか、ちょっと残念な内容だった。
おまけに、会場となっている「ジョルジョーネの家」は、彼の生家や暮らした家ではなく、「ジョルジョーネのフレスコ画のある家」なのだが、その肝心のフレスコ画であるモノクロのフリーズが、展示のためのボードが下ぎりぎりまで迫っているためにかなり見にくくなっている。
(建物に描きこまれてどこにも動かせない)このフレーズこそ、このカステルフランコで見るべき「ジョルジョーネ」なのに・・・。かつ、このフレーズこそ、ミステリアスで暗示的で、1つ1つの絵の解き明かしをしていってもいいくらいなのに・・・。
ただでさえそう広くない部屋で、そこに主な作品は全部展示されているから人ですぐいっぱいになってしまい、大切なフレーズをじっくり鑑賞できる人が果たしてどれだけいることやら。
それでも、やはり、ふだんはあちこちに点在するいくつかの作品を、こうして並べて見ることができるのは貴重な機会。特に、上記「嵐」や、フィレンツェ・ウフィッツィ美術館の「幼子モーゼの炭の試み」と「ソロモンの審判」、同・ピッティ美術館の「3世代」は、それぞれの常設のときよりも、より近く、かつ明るい照明の下でじっくり見ることができるのはいい。
かつ、なんといってもこの町の「お宝」であるドォーモの祭壇画は、日中の本来は教会が閉まっている時間も、そこだけ入れるように配慮されているのはうれしかった。
同じトレヴィーゾ県内、同じ時期に活躍した地元出身の画家を取り上げた企画展として、内容は先日の
チーマ・ダ・コネリアーノのほうに断然軍配が上がる。
だが、ご近所出身で、時期のかぶっている画家同士だからこそ、絵そのものもテーマも、何かと「クリア」なチーマと、ミステリアスで何もかもが不透明なジョルジョーネとの違いを改めて考える、いい機会となった。
画像は www.wga.hu, www.frammentiarte.it から拝借。
会期いっぱい、週末はすべて予約でいっぱいらしい。もし行かれる場合は、平日に、できれば予約して行くのが望ましい。
16 marzo 2010