ヤコポ・バッサーノとすばらしきだまし絵
バッサーノ・デル・グラッパ、市立美術館
6月13日まで
Jacopo Bassano 500
Jacopo Bassano e lo stupendo inganno dell’occhio
Bassano del Grappa, Museo Civico di Bassano
6 marzo – 13 giugno 2010
www.bassano500.it
先日、
バッサーノ・デル・グラッパに行ったのは、旬のホワイト・アスパラガスを味わうためではなく(うかつにも、バッサーノが名産地だと知らなかった)、この展覧会を見るためだった。
ちなみに、この週末18日(日)は、ホワイト・アスパラ祭りが開催されるらしい。
父フランチェスコ、息子たち(フランチェスコ、レアンドロ、ジローラモ、ジャンバッティスタ)と、一家そろって画家として活躍したこと、そして、伝統的な聖書の場面を、地元の農民や町民の姿や生活の中に描いた、風俗画的な要素が強いところなど、フランドルのブリューゲルと共通するところがあるバッサーノ一家だが、その中で、家族としても、また活動からしても中心的な立場にいるのが、このヤコポ。
この春、すでに紹介してきたように、
カステルフランコのジョルジョーネ、
コネリアーノのチーマ、そしてこのバッサーノでのヤコポ、と、ヴェネツィア派絵画を語る上で欠かせない、重要な画家3人の展覧会が、それぞれ生誕の地でほぼ同時に開かれた。
ヴェネツィアやヴェローナ、パドヴァやトレヴィーゾといった、(一応)県庁所在地の町ではない小さな、ベッリーニやティッツィアーノ、ティントレットほどの大物でもない、彼らの誇る画家を紹介する回顧展は、町おこしとしても重要であるばかりでなく、訪ねる側にとってもやはり大変楽しみなものであった。
しかも、超・個人的なことを言うと、そのうちジョルジョーネとJ. バッサーノは、卒論のときに使った絵があり(
卒論物語・ない袖は振れぬ?2、参照)、それらを続けて見られるという偶然がうれしかったということもある。
・・・だが、期待は裏切られるもの。
いや、小さな町の市立美術館で、何かスゴイものを期待しすぎたのかもしれない。
それでも、もともといくつか所有している作品のほかに、ほんの少しプラス・アルファ程度でよそから借りてきた作品を並べただけ、その派手な宣伝の割に、作品数もうんと少なくて、がっかりとまではいかなかったが、え、これだけ!?と、かなり拍子抜けしてしまった。世界中の主な美術館に、バッサーノのいい絵がもっといっぱいあるのに・・・。
庶民的というよりは、農村的で土臭い背景を丁寧に描きこんだバッサーノの絵は、昔は結構好きだったのだが、いつのまにかその土臭さのためになんとなく遠ざかっていた。今回、いい作品をまとめて見ることができたら、ひょっとしたらまた好きになるかもしれない、などと淡い期待もあったのだが、残念ながら全くそこまでいかなかった。
カステルフランコ(ジョルジョーネ、11日ですでに会期終了)、コネリアーノ(チーマ)、バッサーノ(ヤコポ)、の、ヴェネトの小さな町3つのお国自慢対決は、圧倒的大差でコネリアーノに軍配が上がった。
余談ながら、このバッサーノの展覧会の宣伝のコピーに「Da vedere(見るべき)」というフレーズが使われていたのだが、チーマ・ダ・コネリアーノのほうは、「Da guardare. Non da vedere(見るべき、ではない。よく見るべき)」というコピーを使っていて、これは偶然かぶってしまったのだろうけど、言い得て妙というのか、なんだかな、と思ってしまった。
もちろん、元フランチェスコ会修道院の美術館は、その美しい建物といい、所蔵品も小さな町の市立美術館としては充実したいい美術館なので、誤解なきよう・・・。
15 aprile 2010