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ヴェネツィア ときどき イタリア

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これぞ大英帝国の実力!? タメイキの「イタリア素描」展

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フラ・アンジェリコからダ・ヴィンチまで イタリア・ルネッサンス素描展
ロンドン 大英博物館
2010年7月25日まで

Fra Angelico to Leonardo
Italian Renaissance DRAWINGS
The British Museum, London
22 april – 25 july 2010
www.britishmuseum.org

うわっ!・・・ええっ?・・・うそっ!・・・まじ!???・・・はあ・・・・・・ぎゃーっ!!!

会場に入ってすぐ、まずはペルジーノの「東方三王の礼拝」、そしてフィリッピーノ・リッピ。これは、ローマのサンタ・マリア・ミネルヴァ教会の内部、カラファ礼拝堂を飾るフレスコ画の一部、「トマス・アキナスの勝利」の下絵。その「本物」の写真が、ちゃんとキャプションとともに展示されているのが好ましい。
タイトル通り、イタリア・ルネッサンスを代表する芸術家の素描や下絵が並ぶが、これはほんの文字通り序の口だった。




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展示はテーマごとに。第1章は、「ゴシックからルネッサンス」。
ここではなんと、ロレンツォ・モナコのデッサン「6人の跪く聖人」(ウフィッツィ所蔵)が、その本物というか多翼祭壇画の該当部分(ロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵)と合わせて見られるようになっているが、その展示方法もいい。大きさの違う2つの絵を同じ壁に並べるのではなく、あえて段差をつけて置いてあるため、ちょうどうまく見比べることができるようになっている。
フラ・アンジェリコの「預言者ダヴィデ」。細密画家でもあったアンジェリコのデッサンは、髪の毛や装束の描き込みも細密で美しい。
ピサネッロ「首つり男の習作」は、ヴェローナ、サンタナスタシア教会のフレスコ画のための習作。
ベノッツォ・ゴッツォリは、ペルージャのサンテルコラーノ教会を背景にした歴史画のデッサンで、これは今でも、同町のプリオーリ館、すなわち国立美術館内で見ることができる。

そして、フィリッポ・リッピの、あの聖母子。透き通るガラスのようなこの絵は、イタリア・ルネサンス美術の宝庫、ウッフィツィ美術館を代表する作品の1つだろう。今回の展示品である、その習作もウフィッツィの所蔵ながら、ジカに目にしたのは私も初めてで、思わず息を飲む。

そう、ともかく、「あの」画家の「あの」作品、あるいは「あの」デッサン、ばかりなのだ。
大英博物館と、フィレンツェ・ウフィッツィ素描・版画室といえば、あとここにルーヴルを加えれば、おそらくイタリア・ルネッサンスの素描において、その質と量で世界の大半を占めるであろうが、それにしても、その中でも特に重要な作品ばかりを、惜しげもなく見せている。

えっ!?・・・と、思わずまた声をあげてしまったのは、ヤコポ・ベッリーニの「アルバム」。
当時、素描アルバムは、さまざまな題材、対象をまとめた素材集といったところで、注文主にとっては、カタログの役目を果たし、また、工房の弟子たちにとっては技術を習得するための見本帳であった。15-16世紀ヴェネツィアを代表する画家一家の長、ヤコポのそれは、特に、息子たち、美しい聖母子像や祭壇画を得意としたジョヴァンニ、大きな歴史画を得意としたジェンティーレらの修業をも推察させる、特に貴重なもの。
そのアルバムが、(ガラス・ケースに入っているとはいえ)、目の前に、どーん!と・・・。

展示は、ポッライオーロ、そしてマンテーニャと続く。パドヴァのオヴェターリ礼拝堂のための素描も。

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ヴェネツィア共和国から宮廷画家としてオスマン・トルコに派遣されたこともある、ジェンティーレ・ベッリーニのトルコ装束の男女の素描は、全く初めて見たが、これはヴァチカンの中のピントリッキオのフレスコ画に引用されているらしい。男性の袖にも注目、そして、うーん、好き×好きの組み合わせ、今度ヴァチカンに行ったらよく見てみなくては・・・。

もうすでに頭はクラクラ。
・・・だが、いよいよここからがハイライト、「ヴェッロキオとダ・ヴィンチのフィレンツェ」。
今回の展覧会のポスターにもなっている、「女性の頭の習作」。ヴェロッキオは、弟子、レオナルド・ダ・ヴィンチの描いた天使の絵を見て、自らは筆を置いた、と言われているが、いやいや、あのレオナルドは、この師あってこそだったのだとはっきりわかる。精密で、それでいて、伏し目の女性の顔の柔らかさ、やさしさ。みつあみの髪のしなやかさ。
非常によく似た、レオナルドの習作がそこに並ぶ。
・・・そして、レオナルドの風景習作。

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フィレンツェの、サンタ・マリア・ノヴェッラ大聖堂のためのギルランダイオの習作は、そのフレスコ画とデッサンとを、映像で重ねて見せる。
ただでさえ、豪華な作品が並んでいるのに、いちいち展示がすばらしい。
だいたい、すべての作品が、ガラス入りの額にこそ入っているとはいえ、素描にしてはかなり明るい照明の中、目の高さに壁にかかっていて、ほんとうになめるように、目を近づけて鑑賞することができる。キャプションはシンプルで、内容も表示もほどよい。やたら大袈裟だったり、50cm以上近付くとすぐにピーピー鳴ったり、ほんとは作品をあまり見せたくないんじゃないかと勘ぐってしまうことの多いイタリアの企画展も、こういうのを見習ってほしい。

ボッティチェッリ、シニョレッリ、と続いて、ヴェネツィア派へ。
カルパッチョは、やはり映像とともに。チーマ・ダ・コネリアーノもある。

フィナーレは、ミケランジェロとラファエッロ。
ラファエッロの「聖ジョルジョの習作」は、ほとんど同サイズ、ルーヴル所蔵の同作品と並べられている。
最後の最後は、ティッツィアーノの「女性の肖像」。たった1枚、だた、ティッツィアーノらしい、ふくよかで美しい女性の、やわらかな習作はショップでの絵ハガキも人気が高いらしい。

・・・タメイキ、タメイキ、タメイキ。
あまりにも豪華な素描展、星をつけるとするなら5ツ星しかあり得ない。

イタリア美術が好きで、期間中、もしロンドンにいる幸運があったら、絶対に、絶対に、絶対に逃してはならない展覧会。

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(画像がほとんどないのが残念。1番上のみ公式サイトより、あとはwww.guardian.co.uk より拝借した。)

26 aprile 2010
by fumieve | 2010-04-27 08:33 | 見る・観る
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