5月4日午前、ヴェネツィア、カンナレージョ地区の路地で、白いビニール袋に入った男の頭部とおぼしき物体が発見された。
男の身元はすぐに判明、ヴェネツィア在住のムーア人商人、アントニオ・リオバ氏(推定年齢およそ800歳)。ほかの3名とともに、すぐ近くのムーア人の広場(Campo dei Mori)に面した建物に半分埋め込まれる格好で立ち、近隣の住民に親しまれていたほか、ガイドブックにもしばしば登場し、
ティントレットの家の並びでもあることから、観光客の散歩コースにもなっていた。
広場に面して立つ2名、ティントレットの門番のような1名の間で、建物の角を占めていたリオバ氏はとくに、その彫像にさわると豊かになるという言い伝えもあり、とりわけ人気があった。目に明らかな金属による鼻の再生手術もよく知られている。
そのリオバ氏、先週4月30日(金)夜から5月1日(土)未明にかけて、頭部がすっぱりと切り離された上に、どこかに持ち去られ、捜索願いが出されていた。警察の公式捜査に加え、あっという間にネット上でもcercasi(探しています)のサイトが立ち上がり、その人気を裏付けていたほか、数年前から首に入ったひびが深刻になっており、本人自ら、早急な修復の必要性を監督庁に訴えていたことなどが指摘されている。
(在りし日のリオバ氏。2008年4月撮影)
週末には、目の前の運河も潜水捜査が行われたものの手掛かりがつかめず、リオバ氏は頭なしの無残な姿をさらしていたが、事件から3日たった今朝、行方不明現場からそう遠くないラッケッタ通り(Calle della Racchetta)で、白いビニール袋に入った姿で無事発見された。
RAI(国営放送)のTVニュースなどによると、発見された頭部にはとくに新たな傷などは見つかっていない、という。(写真下は、http://corrieredelveneto.corriere.it より拝借)
犯人やその目的などは不明。ちなみに、すぐ近くにある
オステリア・ダ・リオバのガラスが、外側から何かをぶつけられたように割れており、あわれなリオバ氏の頭が投げつけられたりした疑いもある。
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一件落着、とはいかないものの、とりあえず無傷の頭部が発見されてほっとするヴェネツィアで、今日はもう1つ、残念なニュースがあった。
カステッロ地区、サン・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会のすぐ近く、
サンタ・マリア・デイ・デレリッティ教会(Chiesa di Santa Maria dei Derelitti)、通称オスペダレット教会(Chiesa dell’Ospedaletto)で昨夜、火災があった。1575-77年にアンドレア・パッラーディオにより完成したあと、ジュゼッペ・サルディ、バルダッサーレ・ロンゲーナとヴェネツィアの歴代建築家の手を経て現在の姿となっている。
今日の火災は、外の火が教会の開いた窓から中へと燃え広がったもので、17世紀の画家アントニオ・モリナーリの「聖母生誕」を損傷したほか、煙や消火のための水などによる被害もある。
火災の原因はまだ明らかになっていない。
(ニュースの映像は以下をどうぞ)
http://corrieredelveneto.corriere.it/veneto/notizie/cronaca/2010/4-maggio-2010/incendio-santa-maria-derelitti-distrutto-dipinto-pittore-molinari-1602955250792.shtml
4 maggio 2010