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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ヴェネツィアの2つの「レース」@箱根

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ヨーロッパ貴族の至宝 レースとレース・グラス展
箱根ガラスの森美術館
11月3日まで
www.ciao3.com/museum/kikaku/2010_laceglass/index.html

ムラーノ島のガラス、ブラーノ島のレース。

ヴェネツィアを代表する2つの工芸が、もともとヴェネツィアン・ガラスのコレクションで知られるガラスの森美術館で、一緒に展示されている。
今ではすっかり観光みやげ的な要素ばかりが強くなってしまったが、どちらもヴェネツィアの歴史と深く関わっている。




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古く古代から使われていながら、長いこと、ごく一部の特権階級の人々のみ持つことのできた高級品であったガラスは、言ってみれば錬金術の1つ。自ら資源を持たない、商業と(戦争業と)加工貿易で成り立っていたヴェネツィア共和国にとって、高級絹織物などと並んで重要な産業の1つだった。火を使うから、火事の危険を防ぐため、ということもあったにせよ、その技術がよそに流出しないよう、ガラス職人をムラノ島に集めて、厳しく国の管理下に置いた、というのは、ムラノ島の成り立ちとしてよく知られているところ。
ムラノ島の職人たちは、その中で伝統の技術を極め、また新たな技法を開発しては欧州中の顧客たちを魅了してきた。

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一方、同じく高級商品であるレースだが、産業としての発達はちょっと違う。
細い糸を編んで布の装飾に使う、レース自体は、これも古くから存在はしていて、たとえばトルチェッロ島のサンタ・マリア・アッスンタ聖堂のモザイクの聖母は、マリアのシンボルの青いマントをはおっているが、そのマントの縁が金色のレースで飾られているのが印象的。

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一度にたくさんのボビン(糸巻き)を使って、それらをくるくると文字通り編んでいくボビン・レースと違い、図案の上を針で1つ1つ縫っていくニードル・レースがヴェネツィアに登場するのは、15世紀後半。それも産業ではなく、レース編みは、もともとは良家の子女のたしなみの1つであった。豪華なレースが、洋服のカフスや襟などの飾りに使われるようになったのは、まずは男性の服装から。貴族の奥様やお嬢様は、その夫や家族のためのレースを競うように編んだ。
ちなみに、私の卒論で使った「古今東西世界の服装」で知られるチェーザレ・ヴィチェッリオは、1591年にレースのパターンを集めた「高貴かつ徳の高い女性たちの冠(Corone delle Nobili et Virtuose Donne)」という本を出版している。

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やがて女性の服装にも派手にレースを使うのが流行になり、「ヴェネツィアのレース」はヨーロッパ中の貴族や金持ちの人気を席巻する。
だがその地位も、国力の低下とともにフランスに取って代わられる。

・・・その昔、ブラーノ島に1人の若い漁師がいました。
ある日、彼が海に出ると、セイレンが魅惑的な声で彼を誘ってきました。が、彼は誘惑に負けずに婚約者のところに戻ります。そのため、女王からすてきな贈り物を受け取りました。そしてセイレンが尾で船の横の泡をたたくと、それが花嫁の美しいヴェールになりました・・・
というのがブラーノでレース作りが盛んになった理由としての伝説。

その2つの、美しい手工芸を「レース」というキーワードでくくって、同時に見せているのがこの企画展。
白い細いラインを1本入れた、透明のガラスの棒を作って、それをねじったり、たくさん並べたり、さらに回したり、ふくらましてまたつぶしたりしながら成型したガラスは、まるでレースで編んだような模様を作り出す。
いろいろな手法があるガラスの中でも、そのレース・ガラスに焦点を絞り、ほんものの「レース」とともに展示している(らしい・・・私は見てないので。)。

ヴェネツィアの市立博物館の共催のため、ムラノ・ガラス博物館、ブラーノ・レース博物館、そしてモチェニーゴ衣装博物館から、所蔵品が貸し出されている。

ここだけの「お知らせ」、今回の企画展に合わせて、以前紹介した、ムラノ島のこのお店のアクセサリーや小物がショップで販売されている。数に限りがあるので、興味のある方はぜひお早めにどうぞ。

見に行かれた方は、ぜひまたご感想などお寄せいただければ嬉しいです。

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12 maggio 2010
by fumieve | 2010-05-13 07:34 | 見る・観る
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