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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ほんとはゆっくり見たい、シエナ

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水の上にびっしりと建物を並べ、町を作ってしまったかつてのヴェネツィア人のことを、須賀敦子さんはそのエッセイの中で「冗談のきつい人々だと思った」と書いていたが、冗談のきつさにおいては、このシエナの人々だって、どっこいどっこいなのでは、と思う。

イタリアの、ほかの多くの中世の都市国家同様、自らの防衛のために、丘の上に作られたシエナの町は、その町の中にも見通しの悪い迷路のような道や、急こう配の坂道や階段がたくさんある。
それでも、ほかのたいていの町では、町の中心の広場といえば、そのでこぼこを削ったり埋めたりしながら、辛うじて平地に近く体裁を整えるのだが、このシエナでは、広場そのものを半分に割ったすりばちのような、あるいは貝がらのような、最初からカーブのついた広場を作ってしまった。
逆転の発想とでも言おうか。広場が平らでなきゃいけないなんて、誰が決めた?・・・みたいな。




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写真では残念ながらその勾配などがわかりづらいのだが、ベンチもなく、直接座るのはもちろん、こうしてごろりと横になっていてもなんの不自然もないくらい、広場のほうは不自然に正面のパラッツォ・プブリコ(Palazzo Pubblico, 市庁舎)に向かって傾斜している。
ちなみに、シエナの代名詞といってもいいくらい有名なパリオ(Palio、一種の競馬)は、ここで毎年夏に行われる。
このカンポ広場(Piazza del Campo)と、現在は私立美術館にもなっている、パラッツォ・プブリコが何と言ってもシエナの観光の中心なのだが、この日は、展覧会の共通券で、ドォーモなどを見ることになっていたので、こちらはあきらめる。

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初めてシエナに来たのは、もう10年以上も前、フィレンツェからの日帰りだった。一通りメインの観光地を見て、それからドォーモに来たのだと思うが、外も中も、その白黒の縞々のコントラストに強い威圧感を覚え、正直のところあまり好きになれなかった。

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(そういえば、シエナのサッカーのチーム・カラーも白黒=bianconeroだ・・・)

ここの魅力に気がついたのは、その次に来たときのこと。

縞模様の圧倒感は相変わらず。だが、教会といえば、主な見どころはステンドグラスであったり、モザイクであったり、あるいはクーポラであったり、と、とかく首を上に向けて鑑賞するものが多いのだが、このシエナのドォーモでまず見逃してはならないのは、床。

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大理石による象嵌で、各種シンボルや旧約聖書の物語、預言者たちなどが描かれている。お得意の白、黒に黄色や赤など、若干の色を足しているのが効果的。古いもので1369年、一番新しいもので1547年、当時のシエナ出身の主な画家や彫刻家が携わっているが、そのうち、ベッカフーミの下絵が国立絵画館に展示されている。

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主祭壇手前、向かって左側にある、大理石の説教壇(pergamo)は、ニコラ・ピサーニとその弟子たちによるもので(1266-68年)、イタリアの中世美術を代表する彫刻として、美術史の教科書には必ず登場する。

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もう1つ、この中で個人的に絶対にお勧めなのが、「ピッコローミニの図書室(Libreria Piccolomini)」。1495年ごろ、フランチェスコ・ピッコローミニ(Francesco Piccolomini)が、叔父(伯父?)である法王ピオ2世の蔵書を保存するために作らせた。
この壁一面に、ピオ2世の生涯を描いたのが私の大好きなピントリッキオ。威圧的でやっぱり暗い聖堂の本堂から、ドア1枚抜けただけで、天井の高い広々と明るい空間、その壁を明るい色のフレスコ画が埋めているのに驚く。
フランチェスコは、のちにピオ3世としてやはり法王になった。
写真はその入り口上にある、「ピオ3世の戴冠」。

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今回、初めて入ったのが洗礼堂。

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イタリア中世の教会らしく、大聖堂の中ではなく、すぐ近くではあるが別の建物として建っている。大聖堂から出て、左側の急な階段を下ったところに入口がある。
ここの洗礼盤こそが、「シエナはルネサンス初期の彫刻の中心地」と自負する理由であった。

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全体のデザインはヤコポ・デッラ・クエルチャ、そして、ロレンツォ・ギベルティの銅版やドナテッロの彫刻がそれを飾っている。

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その置かれた空間はいかにもゴシック、だが、そこにもよく溶け込んだ、確かに、均整のとれた美しい作品だった。

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(・・・で、こちらの床もやはりこんな・・・)

もう1つ、何年か前から、観光客に開放されているのだがやはり今回初めて入った、クリプタ(地下祭室)。大聖堂と洗礼堂との間に入口がある。こちらは撮影禁止のため写真なし。

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シエナ美術を駆け足でめぐるなら、ほんとは、前述のパラッツォ・プブリコと、大司教博物館(Museo dell’Opera metropolitana)、そしてドォーモをささっと見るのがおそらく正解。
今回、1日しかなかった私は、前者2つを割愛してほかを見学したが、それでも時間が足りなったくらい。

疲れたら、途中、広場に直接座ったり、ごろりと横になったり。
シエナをたっぷり楽しむなら、できれば2日以上かけたい。

・・・最初に来たときの帰り際、夕暮れの中に向こうの丘に浮かぶドォーモを眺めたような気がする。あれはどこから見たのだったろう・・・?

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24 maggio 2010
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by fumieve | 2010-05-25 09:07 | ほかのイタリア
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