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ジャンバッティスタ・ティエポロ、「冗談」と「奇想」の間で~ウディネ

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Gianbattista Tiepolo tra scherzo e capriccio.
Disegno e incisioni “di spirituoso e saporitissimo gusto”
22 mag – 31 ottobre 2010
Udine, Castello
http://www.udinecultura.it/opencms/opencms/release/ComuneUdine/cittavicina/cultura/it/eventi/Eventi_culturali/2010/settimanatiepolo/mostra.html

澄んだ明るい水色の空、ふわふわの雲とともに浮かぶ天使、彼らの祝福を受けて天に昇る聖母や聖人、こちらを見下ろす神話の登場人物。あるいは、2世紀前のヴェネツィアの巨匠、パオロ・ヴェロネーゼに学んだ、古代風の建築物を背景にした、劇場風な場面の数々・・・。
ティエポロといえば、まず思い起こされるのが、祝福的なテーマを扱ったフレスコ画、大型の天井画や壁画ではないだろうか。
ヴェネツィアなら、スクオラ・デイ・カルミニ、パラッツォ・ラビア(非公開)、ヴィチェンツァのヴィッラ・ヴァルマラーナをはじめとするヴェネト各地のお屋敷。
活躍の場はヴェネツィアにとどまらない。ミラノ、ドイツのヴュルツブルグ司教館、そしてマドリッドの王宮。
だが、彼の輝かしいキャリアの出発点は、ウディネであった。
(以前のブログ、珠玉の町、ウディネ司教区美術館およびティエポロ参照。)




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そのウディネで、この5月21日から30日の1週間、「ティエポロの日々」と称して、講演会や当時の音楽を聴かせる演奏会などが行われている。

イベントの中心はこの展覧会。言ってみれば、派手で華やかな絵を得意とする印象のあるティエポロだが、実はそのイメージとはちょっと異なる、おもしろい版画を残している。
神話の登場人物、それも、サティロス(上半身が人間、下半身がヤギ?の半人半獣)など「悪」の象徴であるような人物(神)を使った、ちょっと皮肉な、いたずらな絵。内容がよくわかっていないものも多いらしい。
そんな空想的な不思議な題材のエッチング、もともとはバラバラに作られたものを、当時、素描や版画等のコレクターとして知られたアントン・マリア・ザネッティがまとめ、そのうちの10枚をCapricci(カプリッチ、冗談などの意)として出版。同様に、ティエポロの死後、さらにScherzi di Fantasia(スケルツィ・ディ・ファンタジーア、空想の冗談)として再び彼のエッチングが世に出回った。
”Scherzi...”のほうは、巨体にひげを生やし、頭にターバンを巻いたmago(マーゴ、魔術師)と名付けられた人が中心になっている。それも1人のものもあれば、2人登場しているものも。

この展覧会では、そんな2つのエッチング集の内外の作品と、版画作品のいくつかの銅板オリジナル、そして、画家のデッサンが展示されている。

何年か前に、ヴェネツィアで、息子ジャンドメニコ・ティエポロのやはり素描・版画展があって、息子のほうはもう完全に、そのアイロニー性や風刺、グロテスクなデフォルメなどが目立ち、父親と違う才能、違う時代、違う人生を送った画家の姿を如実に表しているように思った。(この展覧会について、どこかで書いた覚えがあるのだが自分でみつけられなかった・・・。)
その斜に構えた視線や批判的な精神は、やはり父親譲りのものであることは間違いない。だが、その代表作に見られるように華やかな人生をまっとうしたといえる父親のほうは、ファンタジーもエレガント。
大きな天井画とまた違った、ティエポロの一面を楽しめる。
同館、ウディネ市立博物館素描室所蔵のものに加え、ヴェネツィアのコッレール美術館、ロンドンのV&A博物館、ドレスデン国立などから作品を集めた、貴重な企画展。

「ティエポロの日々」週間は30日までだが、展覧会は10月末まで。

こうして見ると、今度はまた改めて、ティエポロの大きな作品も見たくなる。いい季節になったことだし、久しぶりにヴェネツィア近郊のヴィッラなどを訪ねてみようか・・・。いや、その前にまず、ヴェネツィアとウディネの中のティエポロ見どころを紹介するのが先か。

28 maggio 2010
by fumieve | 2010-05-29 20:57 | 見る・観る
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