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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「旅」の旅2・アッピアーノ城礼拝堂

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あづーーーい、と言っていたら、雨が降って、また嘘みたいに涼しくなった。

そういえば、あの日も寒かった。
雨、そして濃霧。
撮影が終わるころには全身がこわばり、手足の指先は全く感覚がなくなっていた。そこの城番兼任でもあるタヴェルナで、「ともかく何か温かい飲み物を」と頼んだら出てきたのが、りんごジュースのお湯割りだった。ビールのジョッキと思わしき、分厚いグラスに、りんごジュース(濃縮?)を注ぎ、その上からお湯を注ぐ。日本的に言う、あっつあつな飲み物ではないが、じんわりあたたまったグラスを両手で包んで手を温めながら飲んだホット・ジュースは、冷え切った体によく効いて、おいしかった。

訪れた南チロル地方は、どこを通りぬけても、あっちにもこっちにも、お城が見える。現在はホテルやレストランなどになっているところもあるが、廃墟になっているところも多いという。

テルメーノから、「ワイン」街道をさかのぼって、ボルツァーノよりちょっと手前。

岩の上にそびえ立つ、このアッピアーノ城(Castel d’Appiano)を有名にしているのは、付属礼拝堂(la cappella)のフレスコ画。
そう広くもない、城の敷地に入って一番奥にある、小さな建物。外壁にもフレスコ画が残っているが、中に入って、思わず声をあげた。




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主祭壇、アブシスには大天使に両側を囲まれた、聖母子像。その下、左側はマントに身を包み、神に捧げものをする「善き乙女たち」、右側がおしゃれに身をやつした「悪い乙女たち」。
半円の上は、玉座のような立派な椅子にそれぞれ座った使徒たち。側面の壁には、キリストの誕生から受難、復活までの物語が描かれている。

時代は13世紀初頭。チケット売り兼ガイドの女性によると(名前失念、失礼!)、このフレスコを描いた画家の名前は残念ながらわかっていない、という。だが、少なくとも3人の画家が関わっているのは間違いないとされているらしい。具体的に、この部分と、この部分と、そしてこの部分、と、その違いを説明してくれた。なるほど、そう言われると、明らかに絵の上手、下手がはっきりと表れている。
その女性が非常に親切だったのも印象的だった。・・・もっとも、人が親切だったのは、ここだけではなくて、南チロルにいる間、訪れたどこでも、みなが丁寧で感じがよく、親切だったのにとても癒されたのだが・・・。

絵に戻る。地の鮮やかな青に、赤、黄の原色でアクセントをつけた、はっきりとした配色、おおげさなくらい、ぎざぎざにとがった衣服のドレープ、すらりとかなり長身な人物像は、イタリア・ロマネスクというよりは、ビザンチンの絵画を思わせる。特に、受胎告知の大天使ガブリエルなどは、(私は本物は見たことがないのだが)、キプロスやマケドニアの礼拝堂に残るフレスコ画のガブリエルに酷似している。

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もともと「ローマの」という意味を持つ、ロマネスク(romanico)美術は、厚い壁のどっしりした教会、顔が丸く頭でっかちで二頭身や三頭身なプリミティブな姿が特徴。このフレスコは、それに比べるとかなり異質で、むしろ、建物も人間も、縦に長く長く伸ばした、北方の=野蛮な人々のゴシック(gotico)の先駆けのようでもある。
だが、コシックの教会と違い、この礼拝堂を個人の礼拝堂らしく、あたたかで居心地のいい空間にしているのは、その空間の小ささ、天井の低さのためだろう。

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そして、壁の一番下の段には、実はここにもまた、ケンタウロスや戦闘の場面が描かれている。絵自体も、ほかの部分の色の美しさや構図の細やかさに比べると、妙に簡素で、いたずら書きのようにさえ見える。画家も違うだろうが、時代も少しさかのぼるのかもしれない。

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そして、嬉しいサプライズだったのが、ここのタヴェルナ(Taverna、食堂)。
なにしろ、一般観光客には車のアクセスがなく、20分ほどの山道を歩いて来なければいけないようなところ。正直、そんなところの「城」にある食堂なんて何も期待していなかった。
ところが、地方名物のカネデルリというお団子料理も、スペックという燻製生ハムも、なんとなんとここの自家製。
外にたくさんテーブルが並んでいて、お天気がいいときには絶景レストランになる(はず)。
広々と気持ちのよい別室にもテーブルがあるから、お天気がよくなくても大丈夫。壁に、村のお祭りの写真がたくさん貼ってあって、それはそれで面白かった。

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Cappella del Castel d’Appiano
Via Castel d’Appiano, 16
San Paolo-Missiano
www.hocheppan.com
(下の写真のみ、www.eppan.comより拝借)

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15 giugno 2010
by fumieve | 2010-06-16 06:38 | ほかのイタリア
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