ブログトップ

ヴェネツィア ときどき イタリア

fumiemve.exblog.jp

「旅」の旅3・ナトゥルノのサン・プロコロ教会

a0091348_191653.jpg


ぶどう畑の向こう、まだてっぺんには雪の残る山並みを背景に、小さな教会が見えた。

アルト・アディジェ(Alto Adige)、またはドイツ語で南チロル(Sudtirol)のヴェノーザ谷(Val Venosa)にある小さな町の1つ、ナトゥルノ(Naturno)。イタリア産りんごの代名詞のようなヴェノーザ谷、ナトゥルノの町には一大りんご集配センターもあるのだが、このあたりは、日当たりのいい南斜面ではぶどう、それ以外ではりんごを作っているらしい。
そのナトゥルノ町のすぐ外れ、町の中心まで歩いてもせいぜい10分くらいのところにぽつんと立つ教会は、ほんとうにまるで「絵のような」風景を作りだしている。



a0091348_1954986.jpg


近づいてみると、外側の壁にもフレスコが残っていることに気付く。とくに下のほうは消えかかっていてわかりづらいが、よく見ると、それは旧約聖書の「創世記」の物語であることがわかる。

a0091348_1964811.jpg


はじめに神は天と地とを創造された。
・・・神は「光あれ」と言われた。すると光があった。
神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。
神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。
神はまた言われた、「水の間におおぞらがあって、水と水とを分けよ」。
・・・神はそのおおぞらを天と名づけられた。夕となり、また朝となった。第二日である。



中に入る。教会どころか、個人の礼拝堂より小さいような空間。

正面、深いアーチ型の上は、中央が「幼子イエスに授乳する聖母」、左が「聖母戴冠」、右は「ペストから信者を守るキリストと聖母」の図。その下、天使たちにはさまれたアーチの向こうには磔刑図。

a0091348_1984250.jpg


右側の壁に目を移すと、上段に「最後の晩餐」、そして下には・・・なんとも不思議な「ブランコ乗り」の絵が。

a0091348_1992176.jpg


が、このマンガのような絵こそ、この教会を有名にしているオオモトなのであった。
ブランコに乗っているのが、この教会の名前にもなっている聖人プロコロ(San Procolo)。敵の手から免れるために壁を伝って逃げた・・・というエピソードを描いたものだが、どうもそのおおらかな表情のせいか、逃亡というよりは、冒険のように見えてしまう。頭の後ろにある白いものも当然、麦わら帽子ではなくて聖人を示すオーラ(aureola)のはずなのだが・・・。

a0091348_1915168.jpg


どう見ても、お世辞にもうまいとは言い難い絵なのだが、聖人と、周りをとりかこむ人々の、この面長の大きな顔、大きな手足の、強い表現がとても印象的。実はこれは、中世初期、カロリング朝時代の美術の、貴重な、そして代表的な例の1つとされている。
縞模様のように見える衣類の強いドレープ、とくに聖人の膝はまるでサポーターでもはまっているかのようなぐるぐるの渦巻き・・・見ればみるほど奇妙な、へんてこりんな絵は、一度見たら忘れられない。

入口の壁を振り返ると、そこにはカラフルの動物の一群が。やはり顔が長くて、足がスリムで、馬?・・・のようにも見えるのだが、たてがみはなく、その代わりに立派な角。どうやらこれ、聖人プロコロに捧げられた「牛」らしい。

a0091348_1910283.jpg


その「牛」たちは、よく見ると、しっかり似たような顔の「犬」に先導されている。

向かって、左側の壁は、上が「東方の三王礼拝」、一枚の絵の中に、道中の三王と、聖母子に跪く三王と、2つの場面が描かれている。

a0091348_1911788.jpg


下は・・・天使と人の区別が辛うじてつくものの、残っている部分が少ない。
絵の上に、丸石でひっかいたような跡があるのはかつて、その上にもう一度漆喰を塗って、新たな絵が描きこまれた(あるいは描きこまれるはずだった)ため。

ブランコ聖人や牛、ここまでの、下の段の絵は、8世紀から9世紀にかけてのもの。一方、上の段、ゴシック様式に分類されるこれらの絵は、1400年ごろのものとされる。
写真ではわからないが、近くで見ると、下の壁は上の壁より、確かに数センチ引っこんでいる。

実はこの小さな教会、近年の考古学調査により、古代には住宅があったことがわかっている。
最初にここに聖堂ができたのが8世紀。そのときに描かれたのがブランコさま一同。そのあと、14世紀に改築された際に、壁をあらたに積んで屋根を高くしており、上の段の絵はそのあと追加された。

前回紹介した、アッピアーノ城の礼拝堂は、その鮮やかな色合い、1つ1つの表現のエレガントさで、まさに「宝石箱」だった。最初に行ったテルメーノのサン・ジャコモは、教会自体が住宅街の中にあり、近所の方がお花を供えたりしていて、現役の「教会」らしさが感じられた。
こちらは・・・子どもの「おもちゃばこ」と言ったらバチが当たるだろうか?
でも、アーチを囲む2色使いの天使はエビみたいだし、アーチ下の聖人(?)はシャコみたいだし、やっぱりお子様の落書きみたいなんだもの・・・。

a0091348_19121775.jpg


a0091348_714147.jpg


アッピアーノ同様、チケット売り兼ガイド(?)の男性が、大変親切で、詳しい説明もしてくださったことに感謝。

a0091348_7143684.jpg


Chiesa di San Procolo
Via San Procolo, 39025 Naturno
www.prokulus.org

9 luglio 2010
[PR]
by fumieve | 2010-07-10 07:54 | ほかのイタリア
<< 「旅」の旅4・ナトゥルノのサン... イタリアの夏ごはん >>