ブログトップ

ヴェネツィア ときどき イタリア

fumiemve.exblog.jp

ポルデノーネ無声映画祭

a0091348_40479.jpg


Pordenone Silent Film Festival
2-10 ottobre 2010
www.giornatedelcinemamuto.it

まだ映画にサウンド・トラックがなかったころ、「サイレント映画」が、ピアノの生演奏つきで上映されていたらしい、というのを知ったのは、やはり何かの映画の中でのことだったと思う。

ヴェネツィアから、ウディネ行きの電車に乗って、1時間とちょっと。コネリアーノとウディネの間に位置する、ポルデノーネという町で、初期の映画、無声映画ばかりを集めた、大規模な映画祭が行われている。1982年に創設され、今年で第29回を迎えるこの映画祭、Wikipediaによると2007年には映画専門紙Varietyで、「見逃せない世界50の映画祭」に入り、かつ、「サイレント映画の紹介としては金」と評されているらしい。
有名な作品だけではなく、無名な作品、70年も80年も日の目を見ることのなかった作品、世界各地の映画アーカイブで文字通り「お蔵入り」している作品、修復所で修復したばかりの作品、などをたくさん見せている。いくつかテーマに沿った上映をしているのだが、今年はその中に「松竹の3大巨匠特集」もある。




a0091348_356024.jpg


町の中心、9月20日広場に面したテアトロ・ヴェルディ(Teatro Verdi)がメイン会場。
プログラムを見ると、ここでは朝9時から深夜まで、ほぼ途切れなく何かしら上映しているらしい。チケットは、「日中」(6ユーロ)と「夜」(8ユーロ)の2種で、それぞれの時間帯で、好きなだけ上映を見ることができる。

今日の20:30からの「夜の部」で、
Marizza Genannt die schemuggelermadonna
(F.W. Murnau, ドイツ、1921-22, 13’17’’)
ピアノ:Donald Sosin

Rien Que Les Heures
(Alberto Cavalcanti, フランス、1926, 46’)
ヴァイオリン:Lucio Degani
チェロ:Francesco Ferrarini
ピアノ:Maud Nelissen


La Folie des Vaillants
(Germine Dulac, フランス、1926, 41’)
ヴァイオリン:Lucio Degani
チェロ:Francesco Ferrarini
ピアノ:Maud Nelissen(作曲も)


明日天気になあれ
(島津保次郎、日本、1929, 61’)
ピアノ:Neil Brand

の4本を続けて見た。

面白いのは、かつてのように、ほんとに音楽の生伴奏つきで上映されていること。それも、1,4本めはピアノだけだったが、2,3本目はなんと、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのトリオ。これは、たまたま映画の中で登場人物がヴァイオリンを弾く場面があったため、その効果を出すための、今日だけ特別だったのか、あるいは昔も、ピアノに限らず、そんないろいろな伴奏があり得たのだろうか・・・。
フィルム自体、奇跡的に保存されたり発見されたりしてきたもので、まさか伴奏の楽譜が存在するとは思えない。おそらく、当時は即興に近いものであっただろう。今日の作品の中には、作曲者名が明記されているものとないものがあり、どうやら、今回、このために準備されたもののよう。嘘みたいに贅沢な映画鑑賞。

80年も前の映画をいまさらどうこう言うこともないと思うが、たまたまなのか、1本目も3本目も、兵隊がジプシーの女をひたすら女を追いかける話。(2本めは途中で爆睡・・・)もっとも1本目は14分と短いのは、そこまでしかフィルムが現存しないためで、あとほんとはどうなったのかわからないのだが・・・。まあ、あえて言ってしまえば、あまりに陳腐なストーリーに、無声のため特に演技が大袈裟な最初の3本に比べ、ストーリーといい、つくりといい、「明日天気になあれ」のレベルの高さにびっくり。
子どもたちを中心にした物語、犬をめぐる、2人の少年と1人の「お嬢さん」のお話、たわいもないストーリーなのだが、今見てもそれなりに面白く、会場でもしばしば、笑いが。若干教訓くさいのが、いかにもまた日本らしいのだが、欧州組のただ色恋だけで押しまくる単調な3本を見たあとでは、あまりにも新鮮だった。
観衆の多くは、ここに戦後から戦後から現在までの日本のアニメの原型を見たのではないだろうか?
たった1本見ただけで、おおげさなのは承知で言うと、まさしくこれが日本の映画の「伝統」なのではないかと思った。

a0091348_404445.jpg


順番が逆になってしまったが、今日はほかに、夕方18:00から、別館会場であるすぐ近くの市民ホールで、Jean Darlingという方の講演会というか「お話と歌の会」みたいなものがあった。こちらは入場無料。
私はまったく無知なのだが、無声映画時代の人気子役で、その後ミュージカルで活躍した方らしい。かなりのお年のはずだが、これこそエンターテイナーのプロというべきだろう。キラキラのたくさんついたブラウスに黒のゆったりしたパンツという美しい装い、椅子にかけたまま(もしかしたら、足は不自由なのかもしれない)、オペラやミュージカルの歌で美声を披露したほか、観客を巻き込みながらの語りも面白く、何よりかわいらしかった。ピアノはDonald Sosin。

イタリア語でLe giornate del cinema muto(無声映画の日々)、英語名はPordenone Silent Film Festival。最近、イタリアでもなんでも英語名をつけるのが好きだし、もちろん国際的にはそのほうが通りはいいが、イタリア語名のほうが情緒的な感じがして、それもいいと思う。

a0091348_411339.jpg


6 ottobre 2010
[PR]
by fumieve | 2010-10-07 08:54 | 映画
<< フレスコ競演、ポルデノーネのヴ... 季節到来・・・ >>