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ヴェネツィア ときどき イタリア

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賽が投げられた・・・のはどこ?

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紀元前49年。ガリア属州総督ユリウス・カエサルは、彼のガリアでの目覚ましい活躍をねたみ、独裁的な行動を非難する元老院から「最終勧告」を受けていた。法治国家ローマ共和国の制度を尊重し、おとなしく一旦は勧告に従って再びチャンスをうかがうのか、それとも。
属州総督の駐屯地、ラヴェンナにいたカエサルは、旧体制の共和国に真っ向から挑む道を選ぶ。軍を率いて共和国内に入ってはならないという規則を破り、当時、属州と共和国の境界線であったルビコン川を武装したまま渡り、ローマへ向かう。
alea iacta est ("il dado è tratto")「賽は投げられた」。このとき、カエサルが叫んだとしてあまりにも有名な言葉。
そして、「ルビコンを渡る」は、思い切った、勇気ある行動をとる、ということの代名詞として、今でも(日本語でも)使われている。




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そのルビコン川(Rubicone)について、今日たまたま、興味深い話を聞いた。

古代ローマの歴史の、転換点となったその重要な川は、名前こそよく知られているものの、川としては、当時からそう大きいものではなかったらしい。

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その川は、2000年の間に、人工的に、また、自然の摂理によっても大きく姿や形を常に変化させており、歴史的「ルビコン」はどこなのか、昔から議論はあった。

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1933年に、ムッソリーニが、当時はサヴィニャーノ・ディ・ロマーニャ(Savignano di Romagna、ロマーニャのサヴィニャーノ)と呼ばれていた町をサヴィニャーノ・ディ・ルビコーネ(Savignano di Rubicone、ルビコンのサヴィニャーノ)と改名。それにともない、それまでは単にフィウミチーノ(Fiumicino、小さな川)と呼ばれていた川が、ルビコン川(Rubicone)と呼び習わせるようになったという。
ところが、20年前に設立されたプロ・ルビコーネ(Pro Rubicone)という地元のグループが、考古学的資料や文献の調査の結果、カエサルのルビコンは、今のルビコン(元フィウミチーノ)ではなく、地元の言葉でウルゴン(Urgòn)と呼ばれる川のほうだと主張、現在はそちらの説が認められつつあるらしい。RubiconeとUrgònという字面と音の近さもその理由の1つ。
もっともウルゴンは、一般にはピシャテッロ(Pisciatello)という名で(も)呼ばれているらしいのだが。

「ウルゴン」はともかく、おしっこする、と言う意味の動詞pisciareを思わせるピシャテッロといい、フィウミチーノといい、いずれにしてもカエサルがキメゼリフを吐いた場所にしては案外、こじんまりと小さく目立たない川であったことが予想される。

*****
肥沃な土地を育み、豊かな水を、人にも動植物にも与えてくれる恵みの川、そうしてしばしば歴史の舞台ともなる川はしかし、ときに残酷な武器となる。

ヴェネツィアは今朝、102cmのアックア・アルタ。だが、今日の問題は、数時間待てば水が引くヴェネツィアではなかった。

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同じヴェネト州、ヴェローナ近郊からヴィチェンツァにかけての広い範囲で、悪天候により増水した川が氾濫し、町の中心地や住宅地で浸水、数千人が水の中で家から出られず孤立しているほか、ミラノ~ヴェネツィアを結ぶ高速道路も一部浸水し、通行止めになっているという。
ほかに、リグーリア、ピエモンテ、トスカーナ、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリアなど、北イタリア各地で暴風雨や雷による被害が相次いだ。
被災地や被災者がこれ以上拡大しないことと、一刻も早い日常への復帰を祈るばかり・・・。

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(写真、ルビコン関連はすべてwikipediaから、洪水の写真2枚はwww.corrieredelveneto.itからお借りした。)

1° novembre 2010
by fumieve | 2010-11-02 07:28 | ほかのイタリア
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