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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ペーザロ祭壇画

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現地では、「ベッリーニの祭壇画(pala di Bellini)」と呼ばれていた。
通称、「ペーザロの祭壇画(pala di Pesaro)」、ヴェネツィア・ルネサンスを代表する画家の1人、ジョヴァンニ・ベッリーニの、長いキャリアの中で初期の代表作品と言われる。

あ、意外と大きい、と思った。
画集や教科書などで何度も見なれている作品は、本物を見ると、なんとなく思い描いていたものと特に大きさが違うことがよくある。例えば「モナリザ」は私が思っていたのよりずいぶん小さかったし、こういう祭壇画は逆に想像以上に大きいことがよくある。




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作品についての詳細は、資料があまり残されていないためわかっていない部分が多いが、1475年以降とされるのは、この絵がキャンバス上に描かれた油彩であるため。「洋画」というと油彩が当たり前のような気がするが、この技法が、イタリアで広く普及するのは15世紀末から。それまでは、絵といえば木の板の上に、卵に顔料を混ぜて描いたテンペラ画が普通だった。
もともとフランドル(現在のベルギー)地方で発明された油彩は、アントネッロ・ダ・メッシーナがヴェネツィアに持ち込んだものとされる。直後からヴェネツィアで急激に発展、普及したのは、ラグーナの中に建つヴェネツィアにとって、湿度に強く丈夫な油彩は画期的な技法だったから。板絵はもちろんだが、特に、建物の漆喰の中に顔料を埋めて直接描きこんでいくフレスコ画は、建物の壁が塩分を含んだ水分を(下から)吸収して、乾いて、を繰り返すヴェネツィアでは、表面がやがて剥離するのは、時間の問題だった。
木製の枠にキャンバス(布)を張った油彩は、壁と絵の間に通気性が保たれる上に、「油」彩だから外気の湿度にも強い。世界最大の油彩、ティントレットの「天国」をはじめ、パラッツォ・ドゥカーレ(Palazzo Ducale、総督館)の各部屋や、そのほかのヴェネツィアの多くの建物で室内装飾が油彩になっていくのはそのため。

・・・話がだいぶ逸れたが、そういうわけで、この「ペーザロの祭壇画」は、ジョヴァンニ・ベッリーニの初期の傑作であるだけでなく、イタリア美術史にとっても、油彩による大型作品として、極めて初期なものして重要。

中央は「聖母戴冠」。たくさんの美しい「聖母子像」で知られるベッリーニだが、ここでは、主役である聖母よりも、彼女に冠を与える若いキリストが大変美しく印象的。
師であるマンテーニャ風の厳しいラインも残しつつ、すでにジョヴァンニ・ベッリーニ独特の甘くやさしい表情や色遣いが全面に出ていて、間違いなく彼の代表作の1つだろう。
両脇に縦に並ぶのは聖人たち。
下のプレデッレ(predelle、祭壇画の下に並ぶ小さな絵)は、(当然のことながら)工房、弟子などの手が入っていると思われあまり質の高い絵とはいえないが、ベッリーニが生涯のテーマのようにたくさん描いた「聖ジローラモ」だけは、その後の彼の作品を十分に思い起こさせる。

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写真では一緒になっているが、一番上の「ピエタ(pietà)」は、現在はヴァチカン美術館にある。1797年にナポレオン占領時、この祭壇画のあったサン・フランチェスコ教会は排教扱いになり、その際にパリに持ち去られてしまったため。ナポレオン失脚後の1815年に彫刻家アントニオ・カノーヴァにより救出、最終的にヴァチカンに納められた。

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一方、「ピエタ」をのぞくこの祭壇画本体は、ペーザロの市立美術館(Musei Civici)で見ることができる。

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27 novembre 2010
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by fumieve | 2010-11-28 09:20 | ほかのイタリア
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