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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「ガラスの旅 ヴェネツィア芸術の千年」展

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ヴェネツィア、コッレール美術館
4月25日まで

L’avventura del vetro. Un millenio d’arte veneziana
Museo Correr, Venezia
Dal 11 dic 2010 al 25 aprile 2011
www.museiciviciveneziani.it

982年、10世紀後半にヴェネツィアの文書の中で、初めて「ガラス工」が登場する。彼の名はドメニコ。その古文書は、サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会の寄進帳。
以後、徐々に同業者の数が増えていく。
1291年、議会はガラス工房をヴェネツィア本島から一切締め出すことを決定。
これは、こう見えても中は木材を使った建築の多いヴェネツィア、水に囲まれているようでいて、実はしばしば火事の被害に悩まされていたヴェネツィアの(まるで江戸みたいな)、いってみれば防災対策だった。
そうして、本島からすぐ目の届く範囲の、それでいて完全に離島であるムラーノ島にガラス工房を集中させた。
それは防火対策だけではなく、もはやヴェネツィア共和国にとって重要な産業の1つとなっていたガラス工芸の技術と、とくにその職人をよそに逃さないための一種の隔離・監視システムでもあった。外国、とくにフランスなどからの引き抜きは後を絶たず、お金に目がくらんで一度はムラーノから逃亡しても、1週間だかのうちに改心して戻ってくれば、許されて元の職につけたとか。ガラス工という職人が、それだけ重宝されていたことの表れだろう。




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国も法律も変わっても、ムラーノ島に今でもたくさんのガラス工房があるのは、よく知られている通り。
この展覧会では、そんなムラーノのガラスの1000年を越える歴史を紹介している。
すべてムラーノ・ガラス博物館の所蔵品なので、そちらを見学したことのある方には、いくつか見慣れたものもあるかもしれない。だが、もう少し広々とした空間で、もっとコンパクトにまとめてある。

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スタートは、ヴェネツィアの歴史からさらに1000年ほど前にさかのぼる、古代ローマ~ローマ帝国時代のガラス。

第2室は、(写真がまったくないのが残念だが)、ヴェネツィア内外の、いわゆる「ビーズ」
の紹介。コンテリーエ(conterie)と呼ばれる、ミリ以下の細かいビーズから、金太郎飴方式で作った模様を組み合わせたとんぼ玉まで、その芸の細かさと豊かな色に溜息をつく。

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以降、ガラスの技術の発展の歴史になる。
より透明度の高いガラス。第4室では、「ギアッチョ(ghiaccio、氷)」と呼ばれる、表面がひび割れた氷のようなガラスや、レースのような模様を入れた「フィリグラーナ(filigrana、もともとは金や銀の線細工のこと)」。

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また、ヴェネツィア共和国は、自国の、ムラーノ産のガラスを守るため、他の国の製品、例えばボヘミアン・グラスなどに高い関税をかけたという。

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ガラスの「色」を出すのには、さまざまな鉱物を使うが、いろいろな「石」を混ぜて、そのマーブル効果を狙った「カルチェドニオ(calcedonio)」、さらに、細かい銅を散らしてキラキラ感を出したの「アッヴェントゥリーナ(avventurina)」。
そして、東洋の磁器をまねて作った「ラッティモ(lattimo、乳白)」など。

第7室は、コンテリーエや、ムッリーネ(murrine, いわゆる金太郎飴)を使った製品。
第9室、20世紀に入ってようやく、ガラスがほかの美術作品のように、職人の名前が「作家」として残るようになる。

割れる、欠ける、運命にある繊細なガラス。それこそ、地震にでもあおうものなら、ひとたまりもないし、制作の過程でさえ、ちょっと扱いを誤ればあっという間に割れる。だが、そんな「取り扱い注意」のガラスが、数百年、いや、数千年ものときを越えてなお、ここに存在する奇跡。
壊れる、だからこそガラスはより美しい。

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(写真はすべて公式サイトから拝借)

13 marzo 2011
by fumieve | 2011-03-15 08:52 | ムラーノのガラス
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