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ヴェネツィア ときどき イタリア

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フォルトゥニーのジレンマ、「TRA(間) 転生の縁」展

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パラッツォ・フォルトゥニー
11月27日まで

TRA Edge of becoming
Palazzo Fortuny
4 giu – 27 nov 2011
www.tra-expo.com

このブログでも何度も繰り返しているように、ヴェネツィアの古い建物の、その環境を生かして現代美術の展示をする、そのコーディネートの妙と驚きがヴェネツィア・ビエンナーレの大きな楽しみの一つ。
その中でも、このフォルトゥニー館の企画展はとくに定評がある。
今回、まだメイン会場もろくに回っていない私が、ともかく先に足を運んだのもやはり、期待度がそれだけ高かったからにほかならない。
だが、がっかり、とまではいかないが、正直のところ今回は、こんなものかな、という印象で終わってしまった。




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暗い、レンガの壁むき出しの倉庫のような壁の1階。もっともこのフォルトゥニー館らしい、マリアーノ・フォルトゥニー氏の居住空間そのままのメイン・フロア。大きな作品中心の広く明るい3階に、屋根裏の「茶室」。
その中に、現代美術作品が展示されている様子は確かに面白いし、最近の作家だけでなく、フォンターナやデ・ピシス、カンディンスキーなど大物の作品までさりげなく展示してある様子は相変わらずさすが。
前回、2009年の様子はこちら

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・・・だが、残念ながら、それ自体がすでに、前と同じ、いつもと同じで新鮮味がない。初めて見たときの感激が、贅沢なことかもしれないが、感じられない。
いや、ほんとうにすばらしい美術館や美術作品なら、何度見てもすばらしいものは素晴らしいし、感動できる。だからこれは、現代美術に特有の悲しい現象なのかもしれない。とくにヴェネツィアでは、古い空間を生かす展示、とくにビエンナーレでは同じ建物を毎回鮮やかに見せ方を変えてくる展示に慣れてしまっているから、微妙に中途半端に思えてしまう。これがもし、常設の美術館ならかえって、不満にはならないはずなのだが・・・。
あるいはもしかすると、いかにも現代アートのエリートっぽい、どうです、さりげないけどすごいでしょ?ね、ね、いいでしょ?みたいなメッセージが見え過ぎてしまって、凡人とし
ては疲れてしまうのかもしれない。(一回目は見事にそれに踊らされたわけだが)
テキスタイル・デザイナーであり、ファッション・デザイナーであったフォルトゥニーの場合は、その濃密な個性が「重さ」となって、だんだんしんどくなってしまう。この建物の個性と歴史を生かしつつ、新しい企画展を催すこと、それがこの館の早急に解決すべき課題となるだろう。

1つ嬉しかったのは、私の好きな作家、フェリーチェ・カゾラーティ(Felice Casorati)の作品がいくつか、それも「待つ」(L’attesa)という作品がこれまたさりげなくあったこと。ここで見ると思っていなかっただけに、嬉しいサプライズだった。

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もう1つ、これは気になったのは、最上階に展示されている、國府理(Kokufu Osamu)さんのAttic Gardenという作品。丸い円盤というか、上を向いた大きなパラボラ・アンテナ(もしや死語!?)状のものが、ほんとうはそろそろ緑の芝生でいっぱいになって、真ん中には小さな木がひょろひょろっと生えているはずの頃らしいのだが、パラボラの大部分はドーナツ状に完全に砂漠、真ん中のほうに生えているカイワレ大根状のものもかなり頼りないというか、ほとんどしなびて倒れている。
作家さんご本人の図解メモらしきものがすぐ横の壁に貼ってあり、1時間おきに天井から「雨」を降らす指示があるのだが、近くにいた監視員に寄ると「1時間おきではびしょびしょになりすぎるから、今は確か2時間おきにしているはず」。
・・・でもこれ、どう見ても水が不足していないか???
完全に砂漠化する前に、関係者の善処を望むところ。

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前回同様、今回も展示の一部(2階および最上階)は作品ごとにタイトルなどの表示がなく、ブックレットになっていた。ワークブックらしく、今回は挿絵入りでよりわかりやすくなっていたが、強いていえばこれも、せっかくの住空間の中のさりげない展示なのに、指さし確認的見学になってしまうきらいがあるのが難点。

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文句ばっかり言っているようだが、少なくとも、まだ一度もこのフォルトゥニー館を見たことがない方には、ぜひ一度は来て見てほしい。空間を生かした現代アートの展示としてはやはり、ヴェネツィアらしいし、かつヴェネツィアの中でも超一級だと思う。

(館内の写真はすべて公式サイトより拝借)

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25 luglio 2011
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by fumieve | 2011-07-26 04:25 | 見る・観る
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