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ヴェネツィア ときどき イタリア

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法王と国王

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21世紀現在のローマ法王と、第二次世界大戦直前の大英帝国国王と。どっちがより大変か、考えてみたら、その重責は案外、同じくらいかもしれない。

ヴェネツィアでは先週より、夏恒例の野外映画館が始まっている。この1年の話題作を日替わりで上映するから、見逃していた映画を見るいい機会。野外というすばらしい環境も相まって、毎年楽しみにしている。




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で、さっそく、たまたまよく似たテーマを扱った2本を続けて観た。「英国王のスピーチ」と「Habemus Papam(日本未公開?、新法王誕生、といったような意味、ナンニ・モラッティ監督)」。王家に生まれ、やがて王位を継ぐのと、世襲ではなくあくまでも選挙で選ばれて法王になるのと。それは根本的に違うもののようでいて、結果として、否が応にも多くの人の上に立つ、いや、その言い方がよくないとすると、少なくとも大勢を前にスピーチをしなくてはならない、という点では同じ。しかも、それが好む好まざるに関わらず、という点でも。

ちなみにHabemus Papamとは、新しい法王が選出された際、初めて信者の前に紹介されるときの言葉(ラテン語)。法王選出に関しては、以前ローマ(正確にはヴァチカン)で企画展があったときの様子をこちらで紹介している。

英国の王子ではあったが、長子ではなかったこと、何より子どものころからの酷い吃音に悩み、国王どころか王族としての役割にもストレスを抱えていたにも関わらず、思いがけず王位に着く羽目になってしまったヨーク公アルバート、愛称Bertie。
一方は、前法王が逝去したあとの、新しい法王を選出する枢機卿同士の選挙コンクラーベで、まさかの選出をされてしまった一枢機卿。どちらも、こうして突然、凡人には想像しきれない大変な重圧に直面することになる。片方は史実に基づいたお話、もう一方は完全なるフィクション。できることなら逃げだしたい。もがき苦しみ、戦うのか、それとも・・・。



現エリザベス女王の父王、ジョージ6世の事実を踏まえたストーリーであるらしい「英国王のスピーチ」。コンプレックスを抱えたBertieが徹底的に苦しむ姿は、見ている方もつらい。いつか解決するのか、完治する日が来るのか、もどかしい。あ、すごいと思ったのは(そしてどうやらそれが史実なのだろうが)、最後まで奇跡は起きない、こと。このジョージ6世という国王は、この問題をずっと抱えたまま、国民に向かってスピーチすることが主な仕事であるかのような王という職業を全うしたらしい。本人の強靭な努力と、言語聴覚士ローグという協力者によって、そして家族の愛(と言ってしまうと陳腐だけれども)とに支えられ、それが英国王という自らの立場の責任として、苦しみ続けたのだとしたらすごい。
そう思うと、同じ一人の弱い人間の苦悩を描いたHabemus Papamは、こちらはフィクションとはいえ、ほんとに逃げ出してしまうのだから、やはりちょっと分が悪い。同情はできる、だがやっぱり、同じカッコ悪いなら、どうせなら体当たりするカッコ悪さのほうが気持ちがいい。もっともこの映画は、どちらかというとそんなフィクションにかさを借りた、ヴァチカンの仕組みや内部をジョークにしているというところが本質なのだろうから、ストーリーそのものにはあんまりとやかくこだわる必要もないのだろう。
もちろん、ナンニ・モラッティ本人はやっぱりうまい(し、面白い)。彼の演じる精神科医が、どこかで見たような、誰かに似ているような気がするのはやっぱり気のせいか?



(↑の予告編はあまりにも短いのだが、↓はいろいろなシーンが出ていて面白い)

http://youtu.be/JncWURkKjh8

ジョージ6世を演じたのは、2年前にヴェネツィア映画祭で主演男優賞を取ったコリン・ファース。同じ苦悩する男でも、ゲイであることを静かに内面で苦悩する男を演じ、それをまたファッション・デザイナーであるトム・フォード氏が撮った「シングルマン」は、どこをどう切り取ってもスチール写真のように美しくカッコよかったが、「英国王・・・」では治療に苦労する姿、ときに周りに当たり散らす男の顔を、少し上からカメラで捕えた映像がときにおかしみを生み、なによりリアル。
「英国王・・・」のアカデミー賞受賞には大いに納得。

ついでながら、「英国王・・・」では将来のエリザベス女王となる幼い王女がかわいらしくも利発で、将来を予見させる。いやむしろ、今のエリザベス女王の姿は、この父を見て育ったこそ、なのかもしれない。

「英国王・・・」は今回ヴェネツィアの野外劇場オープニングを飾ったのだが、当日、仕事が終わらずに実は観に行けなかった。仕方なくリド島の小さな映画館で観たのだが、これは野外の、巨大スクリーンで観たかった・・・。(でもあの日は途中、雨が降ったかも・・・)

(↓今年の野外劇場のお知らせポスター、かわいくて結構気に入っている。)
プログラムのダウンロードはこちら:http://www.comune.venezia.it/flex/cm/pages/ServeAttachment.php/L/IT/D/5%252F7%252Fb%252FD.d50a789e581b86635e69/P/BLOB%3AID%3D47198

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31 luglio 2011
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by fumieve | 2011-08-01 16:51 | 映画
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