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ヴェネツィア ときどき イタリア

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第68回ヴェネツィア映画祭・6 イタリア、がんばる



TERRAFERMA
監督 EMANUELE CRIALESE、 イタリア、フランス、88'
Filippo Pucillo, Donatella Finocchiaro, Giuseppe Fiorello, Claudio Santamaria

漁民、難民、そして観光客。
2006年に「ヌオヴォモンド」で銀獅子賞を取っているイタリアのクリアレーゼ監督の新作、「テッラフェルマ」が実質「銅」にあたる審査員特別賞に選ばれた。
「ヌオヴォモンド」は、アメリカ大陸に移住するシチリアの貧しい農民たちの話だったから、「移民問題好き」と言われても無理はない。

アフリカの度重なる内戦に続き、この一連のアラブ社会の解放化運動のために、自らの国や土地を捨て、あるいは一時的に逃れて、ヨーロッパを目指す人々がいる。彼らの最終目的地は、すでに親戚がいるフランスやイギリスだったりする場合もあるが、小さなモーターボートや、ときにはゴムボートにぎゅうぎゅう詰めに乗って地中海を渡り、最初にたどりつくのはイタリア半島南部やシチリアの海岸、とくに、ランペドゥーサという離島は、地図で見れば確かにイタリアよりもアフリカに近いくらいで、ともかく必死の思いでそこに上陸する。
「海で溺れている人を見かけたら助ける」。
海で暮らすもののルールであり、何よりも人として最低限の倫理であるはずの行動が、現代社会においてはそれが法律違反になる理由は「不法移民に対する扶助」。
現実には、小さな離島に、毎日のように何百人と到着する難民のために、収容センターは許容人数を越えて劣悪な環境になっているほか、彼らの中には強制送還を恐れて脱走する人もいるから、新たな問題も発生する。
だが、そういった現実はとりあえず横において、あくまでも、海と島と、その中で交錯する人々の物語を作った。どこで誰に共感するのか、観る人によって違ってくるだろう。そして、結末も観客一人ひとりの判断に任される。






IL VILLAGGIO DI CARTONE
監督 ERMANNO OLMI - イタリア、 87'
Michael Lonsdale, Rutger Hauer, Massimo De Francovich, Alessandro Haber
コンペティション外として上映された、巨匠エルマンノ・オルミの作品。
同じく移民という問題を、「海」の美しい映像の中で、観光客という別世界的存在との対比によってみせた「テッラフェルマ」と対照的に、この映画は、使われなくなった古い教会の中という狭い室内の中でのみ進行し、外は、暗闇と大雨というあくまでも象徴的な存在としてしか登場しない。
舟で、命からがらたどりついた人々と、老神父。
言葉も圧倒的に少ない、暗い映像の中で、黒い肌の彼らの、目がほとんどすべてと言ってもいいくらいで、すごい。これを見てしまうと、「テッラフェルマ」はまだまだ、と思ってしまう。



LÀ-BAS
監督 GUIDO LOMBARDI、イタリア、100'
Kader Alassane, Moussa Mone, Esther Elisha, Billy Serigne Faye, Fatima Traore, Salvatore Ruocco

私は残念ながら観ていないのだが、「国際批評家週間」部門で上映されたイタリア映画でもう1つ、移民がらみの作品が注目を集めた。これも上映直後から評判になっていたのだが、エントリーのカテゴリーを問わず選ばれる「初監督作品賞」に選ばれた。文字通り、監督として第1作めの作品に贈られる。
気がついたら自分の家のすぐ近くに、アフリカ人のコミュニティーができていたというロンバルディ監督。たった今、小舟でたどりついた人々ではなく、すでにそこで根をはって生活している人々。そんな彼らのお祭りで、もともとヴィデオ・カメラマンであった彼は、その撮影を依頼される。そうして中に入り込んでいくうちに、それを映画化することを思いついたのだそう。
音楽と踊り、そして食。「かわいそう」で「哀れ」な難民、地元民の生活を脅かす「犯罪者」予備軍としての難民、そんな偏見とは全く違った彼らのエネルギーに出会えるに違いない。

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QUANDO LA NOTTE
CRISTINA COMENCINI、イタリア、108'
Claudia Pandolfi, Filippo Timi, Michela Cescon, Thomas Trabacchi

同監督の、同題小説の映画化。

育児ノイローゼの母親が、休養のために夏休みを1カ月、山の家を借りて過ごす。
子どもはかわいくて大切。だが思い通りにはいかない。子供を育てるということ、母性本能という言葉だけではくくりきれない葛藤や苦しみ。オリゾンティ賞を受賞した塚本晋也監督の「KOTOKO」と、出だしは共通するものを感じる。
だが、シングルマザーのKOTOKOが、自傷行為という暴力に走るのと違い、電話の向こうにしか登場しない夫をおいて、ほかの男に走るのはさすがイタリアというべきか・・・。(決してどちらをも肯定しているわけではありません。)
言ってしまうと、子どもを産んだり育てたりしたことのない私は、これ以上コメントしてはならないような閉塞感というか、無言の圧力を感じる・・・のは単なるひがみか。

単に面倒を見たり、おしめを代えたりというだけでなく、父親側のもっと根本的な育児参加を訴えたかったというコメンチーニ監督だが、残念ながら上映後の評価はさんざんだった。男性はともかく、女性の共感を得られないのはさびしい。



L'ULTIMO TERRESTRE
監督 GIAN ALFONSO PACINOTTI - Italia, 100'
Gabriele Spinelli, Anna Bellato, Roberto Herlitzka, Teco Celio

世界が宇宙人の到来話で持ち切りの頃、といっても遠い将来ではなく設定はどうやら今日、明日のできごとのようだが、そんな騒ぎにもほとんど無関心な暗い内気な男は、密かに隣人の女性に恋をしている。そんな彼女を覗くために、双眼鏡を買ってきたりして、おいおい、・・・という感じなのだが。
郊外でほそぼそと畜産農家を営む年老いた父親からの呼び出しに、何事かと駆けつけると・・・そこにはなんと宇宙人が!これがまたいかにも宇宙人らしい、頭でっかちで目ばかりが大きい、体は未発達というか、微妙になまめましい大人になりかけの少女のような・・・。
まあなんというか、こうして書いてしまうと話としては特別変わったことも面白いこともないし、最終的にはどさくさにまぎれてとんでもない話も飛び出してきたりするのだが、なにしろこのシュールな宇宙人と、お父さんとの関係がなんともかわいい。
宇宙人といっても、E.T.のような名作を期待しても比較してもいけない、だが、B級映画としては傑作。娯楽ものイタリア映画にしてはめずらしくよくできているし、かわいくて楽しい。
プロデューサーとして知られるパチノッティが初めて監督として撮った作品。

14 settembre 2011
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by fumieve | 2011-09-15 07:24 | 映画
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