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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ロンゴバルドの十字モチーフ、引き続きブレシャのサンタ・ジュリア博物館

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歴史の常として、戦争に敗れて滅びていったロンゴバルド族に関して、現存する資料はそう多くはない。
だが、このブレシャのサンタ・ジュリアおよびサン・サルヴァトーレ教会のように、幸いなことに、征服者による破壊を逃れたものもあったこと、そして、後世の発掘調査などにより、ロンゴバルド時代の美術について、明らかになっていることがいくつかある。

1つめは、金細工が高度に発達していたこと。これはほかの多くの騎馬民族と共通することで、より広い領土よりも、身につけて持ち歩ける(いざというときには持って逃げることができる)金を好んだのはごく当然のこと。
ただし、とくにロンゴバルドの金細工の中で見逃してはならないのが、金の十字架。厚さ1mm以下の薄い板を、上下左右同じ長さの十字に切り、そこに模様を打ちこんだもので、埋葬の際、死装束の胸の部分に縫いつけられたという。
特徴的なのはその模様で、お得意の組み紐模様に加え、中には人の顔を(まるで組み紐の一部のように!)入れたものや、少し大きめのものには、動物の絵が入っていることもある。




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金・銀細工では、ほかにもいくつか特徴的なアクセサリーがあるのだが、それはまた次に譲って、ここではちょっと割愛したい。

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話が前後してしまうが、サンタ・ジュリア博物館に入って、順路にしたがって一番最初に直面するのが、十字を大きく中央に刻んだ石。縦80cm、横60cmのカタマリは、先日の「孔雀」同様、かつてはここの教会を飾っていた建材。おそらく、聖職者席と一般席を分ける、壁というか柵の一部だったと思われる。私がひそかにビスケット彫りと呼ぶ浅浮き彫り、「孔雀」はその写実的なモチーフのために、あまりビスケットっぽくなかったが、こちらはもろにビスケット!中に模様を埋め込んだ十字架、左側の木、右側の毛糸玉のような模様、天真爛漫な花模様など、いずれもこの時代の彫刻で繰り返し使われているモチーフ。
面白いのは、彼らのこの手の石はほとんど、脇に細長い溝がついていること。これは、ある程度の大きさの石を用意して、あとから組み立てて使っていたためと推察される。ちなみに、ほとんどは溝が入っているほうが多いのだが、「孔雀」のレリーフには明らかに、脇にでっぱりがあった。

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すぐ次の部屋には、サン・サルヴァトーレ教会クリプタの柱頭。ここでは、平面的な彫刻以外に、より写実的で丸彫りに近いものもあり、すでにロマネスクへの移行が見られる。

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この最初のいくつかの展示室を出たあと、回廊を通ってその奥、表示にしたがって狭い階段を上るとそこにあるのが、サンタ・マリア・イン・ソラーリオ(Santa Maria in Solario)。

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まるでプラネタリウムのような空間の中に、「デジデリオの十字架」(Croce di Desiderio)と呼ばれる、大きな十字架がある。デジデリオは、前回紹介した通り、この教会と修道院の創設者であり、また、最後のロンゴバルド王でもある。
木製の十字架を金属で覆い、それをカメオや奇石で飾ったもので、宗教行列などの際に使われたものと思われる。

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専門家の研究により、この十字架は8世紀末、つまり、デジデリオより後の時代のものと認定されているのだが、ロンゴバルド族の、十字というモチーフに対する執着や、それを細工で飾った様式がいかにも彼ら好みだと考えられてきたのだろう。今でも「通称・デジデリオの十字架」と呼ばれ、この博物館のパンフレットの表紙にもなっている。デジデリオ(Desderio)はイタリア語で「願い、欲望」を意味するから、「デジデリオの十字架」というその語感も好まれているのかもしれない。

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なにしろ広くて構造が複雑な博物館なので、何かを見逃してしまいそうなのだが、ともかく順路にしたがっていくと、ふたたび途中で現れるのが、「中世初期、ロンゴバルドとカロリング朝時代」(L’età altomedievale. Longobardi e Carolingi)というセクション。ちなみにこの博物館、各セクションの大見出しはイタリア語のみだが、作品別のキャプションはすべて、伊・英2カ国語になっているのは好ましい。

おなじみの石のほか、冒頭の金の十字架を含む、埋葬出土品などがここに展示されている。

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典型的な模様レリーフに混じって、こんなかわいい柱頭も!

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こちらは私が(勝手に)「風車」と呼んでいるパターン。

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これはやはり私が(勝手に)「スターフルーツ」と名付けたパターン(だって、ちゃんと中に種まで彫られている)。きちんと生真面目に整列、なようなのに、1つ間違い発見!・・・この写真でわかりますか・・・?

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ここでもう1つ重要なのは、1945年、サンタ・アフラ教会が爆撃された際にその中の聖遺物入れの中から発見されたという、2切れの布。中東からビザンチン、ギリシャなどで作られたSamiteと呼ばれる高級絹織物で、とくにそのうちの1枚は8-9世紀と大変貴重なもの。

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丸い輪っかの中に埋め込まれた動物、あるいは、1本の木の両側に対称に向き合う動物の図など、初期キリスト教から中世まで、イタリアでも多く用いられたモチーフと共通しており、もともとはこの手の「布」が影響を与えたものではないかとされている。いずれにしても、東西の広い交流や影響を示す例と言える。

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再び博物館ジャングルの中をさまよい、最後にたどりつくのが、先日紹介したサン・サルヴァトーレ教会。その手前に、やはりいくつかの建材のかけらが展示されているが、柱や柱頭のビスケット彫り(正式用語ではありません)の中に、やはり十字のモチーフも好んで用いられているのに注目したい。

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あっこんなとこに「ひげオヤジ」!・・・と思ったが、よく見たらいつもの渦巻き&植物模様だった・・・

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宝石と、キリストそのものも埋め込んでしまった十字架や、ぐるぐるの渦巻き模様は、ラヴェンナからローマのサン・クレメンテ教会まで、モザイクでもよく見られるパターン。「蛮族」ロンゴバルドのプリミティヴな美術表現とされるこれらも、やっぱり脈々と続く流れの一部であることをあらためて確信する。

(あーそういえば「モザイクの旅」シリーズも中断したまま・・・)

(続・・・?)

*ロンゴバルド美術に関しては、今回一緒に世界遺産指定になったチヴィダーレの項もご参照ください。

29 settembre 2011
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by fumieve | 2011-09-30 06:24 | 見る・観る
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