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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「若きティエポロ 光の発見」展、ウディネ

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カステッロ・ディ・ウディネ
12月4日まで

Il giovane Tiepolo: La scoperta della luce
Castello di Udine
4 giu - 4 dic 2011
www.udinecultura.it

18世紀ヴェネツィアを代表する画家、ジャンバッティスタ・ティエポロ(Giambattista Tiepolo)は73年の当時としては比較的長い生涯の間に、数多い作品を残している。今でも、世界の主な美術館には必ずと言ってよいほど彼の作品が収められているが、ティエポロの場合、とくに、ぜひとも見るべきなのは、フレスコ画。
ヴェネツィア内の教会やスクオラ(同信会)などの建物はもちろん、ヴェネツィア周辺やヴィチェンツァの貴族の館、ウディネの司教館、ミラノ、ドイツ、そして、マドリッドの王宮で、お恥ずかしながらヴェネツィア大学で美術史をかじったにも関わらず、ティエポロについては一度もまともに学んだことがなく、つまり系統的に見たことがない。(自分で勉強すればいいのだが・・・)しかも、どこに行っても似たような作品があるような気がして、ついつい素通りしてきてしまったが、ヴェネツィアを語る上ではやはり欠かせない。しかも、ヨーロッパ中あちこちの町の建物に、それもかなり大規模なフレスコ画が残るということはつまり、その当時、ひっぱりだこの超売れっ子だったということにほかならない。




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自らを「ティエポロの町」と定義するウディネは、よほどこの18世紀の画家ジャンバッティスタ・ティエポロにこだわりがあるらしい。
昨年に引き続き、現在は市立博物館になっているカステッロ(castello、城館)でティエポロに関する企画展を開催している。(実際は、ティエポロ・シリーズの第3回目らしい)

ティエポロがヨーロッパの、つまり当時でいうところの国際的な画家として活躍するきっかけとなるのが、1726年、このウディネの司教館の壁を飾ったフレスコ画。(写真上から2枚目)
ヴェネツィア16世紀の巨匠、パオロ・ヴェロネーゼに学んだという、明るく華やかな色使いで建築的だまし絵の中に描かれた祝祭的な空間。天井を見上げると、大胆な短縮法を用いて描かれた聖母や神話の登場人物、あるいは聖人たちが、さらに天へと上っていくかのように見えている。そしてよく見ると、人々のちょっとシニカルな表情。
ティエポロの、ティエポロらしさがすべて凝縮されているように見えるが、実際にこのとき彼自身のスタイルを確立したといえる。

今回の企画展では、その1726年以前のティエポロに焦点をあてることにより、その確立までの道のりを示している。

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例えば、ヴェネツィアのオスペダレット教会(Chiesa di Ospedaletto)の「聖トンマーゾと聖ジョヴァンニ」、「イサクの犠牲」や、同、サン・スタエ教会(Chiesa di San Stae)の「聖バルトロメオの殉教」(1722年)。

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この頃はまだ、当時活躍していた画家ピアッツェッタ(Piazzetta)などの影響が強く、全体に暗く神秘的な背景の中に、人物だけを劇的に浮き上がらせた、テネブリズム(tenebrismo,神秘主義)と呼ばれるスタイルを踏襲している。
確かに、そういわれてみれば、その後のティエポロと比べると、まるで別人のように作風が違う。
あるいは、やはりヴェネツィア、アッカデミア美術館所蔵の「ヨーロッパの掠奪」は、キャンバス全体に対し、肝心のテーマの場面が小さく、むしろ19世紀ドイツの象徴主義を思い起こさせる。(写真一番上)
ヴェネツィアのパラッツォ・ドゥカーレにある、ヴェロネーゼの同主題の作品と比べるとその違いは一目瞭然。

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また、ティエポロは、うら若き美女ヨーロッパが、白い牛の姿に化けたゼウスにさらわれる瞬間ではなく、その少し前、まだ牛の背に座ったヨーロッパが、侍女たちに花で飾り立てられている場面を描いているのも特徴。同じ神話シリーズの「ダイアナとアッテオーネ」も同様で、これも16世紀の巨匠、ティツィアーノと比較して考えると面白い。

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ほかに、同時期の素描や、ほかの作品の下絵などもあり。
カラヴァッジョに始まる、17世紀バロック的な、暗闇の中に浮かび上がる内省的で力強い劇的空間から、同じ劇的ながらも、パステルカラーに包まれた軽やかで極めて女性的かつ祝祭的なロココ世界へ。時代の要請にぴたりとはまる変化を遂げたティエポロの、マーケティング能力を改めて確認させられる、彼自身の栄光のもとを見るようでもある。
実は、事前・事後の「違い」はよくわかったが、ではなぜ、いつ、どうやって変化を遂げたのかがいまひとつわからなかった。それでも、久しぶりにまた、司教館美術館のフレスコも見に行きたい、と思った。

(写真は、公式サイト、www.wga.hu, www.arteantica.eu から拝借)

19 ottobre 2011
by fumieve | 2011-10-20 07:17 | 見る・観る
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