うやうやしく、
鍵のかかったケースからそっと引き出されて鑑賞した「王冠」が伝説からスタートしているとしたら、あたかも伝説のごとく、かわいらしく
礼拝堂にその生涯を描かれているテオドリンダは、伝説ではなくて、実際に、かつてこの地に生きた存在であることを確認できるのがここ、モンツァ大聖堂付属博物館(Museo e Tesoro del Duomo di Monza)。
現在の大聖堂は後世に完全に建て直されたものとしても、この聖堂の創設者であるテオドリンダとその夫、ロンゴバルド王アジルルフォが寄進した貴重品が数多く残されている。
付属博物館は、ファサードに向かって左側、すぐ脇の入り口から入る。
6世紀、パレスティナで作られた香油瓶。残念ながら写真ではよく見えないが、玉座のキリストや聖母などを描いた浅浮き彫りが美しい。
「通称アジルルフォの十字架」。(Croce detta di Agilulfo)
その十字架をそのまま埋め込んだような、「テオドリンダの福音書装丁」(legatura di Teodolinda)。十字の部分とその周囲に奇石とカメオを配し、エナメルで飾った装丁は、豪華だが比較的シンプル。
このあたり、「あ~そうそう、そういえばイタリア美術史の教科書に載ってたわ・・・」というものばかり。失礼ながら、こんな小さな町に、そんなものがゴロゴロある、それがイタリアのすごいところ。
そして、「テオドリンダの冠」(Corona di Teodolinda)。これは、奉納冠として、現存する唯一のロンゴバルド遺産だという。
かわいいのは「雌鶏と7羽のひよこ」。これはテオドリンダの墓から出土したものらしい。これはロンゴバルドというよりは、ローマ時代後期らしい貴金属工芸品。
貴重な資料が残るのは、ロンゴバルド時代のものだけではない。888年にイタリア王、そして915年に神聖ローマ皇帝に選ばれたベレンガリオ・デル・フリウリが、やはりこの聖堂に多くの寄進をした。
そのうちの1つが、「通称 王の十字架」、王の戴冠式のときに身につけられたもの。
また、象牙製のディプティカ(二連祭壇画)など、カロリング朝時代を代表する作品もある。
展示は、中世から近代まで、この大聖堂の歴史を語る美術品や工芸品が並ぶが、特筆すべきは、初期キリスト強時代から中世初期の「布」類。
写真はローマ法王グレゴリウス1世の装束の一部だったとされる、6-7世紀のエジプトの織物で、通常コプト(copti)と呼ばれるものの一種。ほかに、繊細な籠バッグなどかなりおしゃれなものもあって楽しい。
こちらは、現在の大聖堂のファサードを飾る彫刻。
ぼってりと素朴なロマネスク様式で建て始め、建てているうちに(あるいは建てたあと)、北方からやったきた新しいブームに乗って、縦長できらびやかなゴシック風の装飾をとっ付けたらしい、北イタリアらしいロマネスク・ゴシック。
ゴシックらしさに一役買っている、あの独特の格子部分は、よく見ると確かにさまざまな人物や動物、模様がこうして透かし彫りになっていることから生まれているらしい。
教会の付属博物館や宝物殿というと、うす暗く古びた空間でひっそりと、いかにも「お宝」を見せていただく、という雰囲気をついつい思い浮かべてしまうが、最近整備したらしいここは、作品保護のために全体照明こそ落としてあるが、広々ときれいで、展示自体も工夫されていて見やすい。
ついでにいうと、webサイトも見やすく整っており、今回の内容もほとんどそちらに拠った。
館内、作品は撮影禁止のため、ここまで、聖堂外観以外の写真は公式サイトから拝借。
博物館の出入口になっている回廊には、元の聖堂で使われていたものらしき、レリーフがいくつか。テオドリンダ時代のものだとすると、
ブレシャよりも数世紀遡るためか、模様もかっちり形式化する前という感じで、石の質の違いもあって、より素朴に見える。原型、模索中というとこだろうか。
20 ottobre 2011