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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎」 サントリー美術館

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今回の短い日本滞在の間、行きたい展覧会や美術館もあったのだがほとんど果たせず、結局観ることができたのは、ヴェネツィア展と、この「南蛮美術」のみ。イタリアから帰ってきてわざわざ、よりによってその2つというのもどうかと思うが、やはりそういう縁なのかもしれない。
サントリー美術館はもともと好きな美術館の1つで、だからほとんど時間調整のつもりであまり気負いも気合いもなく行った。もともと、立派な騎馬像より、ちまちまといろいろな人の様子が描かれた洛中風俗図屏風などが好みなので、表題の「泰西王侯騎馬図屏風」よりも、いわゆる南蛮屏風を見るつもりで。




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ところが、その「泰西王侯・・・」の前に立って、あらためてよく見て、しまった!と思った。
計8人の泰西王侯のうちの1人が、なんと見事な「垂れ袖」を纏っている!!!
「垂れ袖」というのは私の勝手な命名で、要するに上衣の袖の真ん中あたりに切り込みを入れ、先半分をあえてひじから下へ垂らしているもの。
イタリアでは古くは14世紀から見られ、16世紀には爆発的大流行を収めるものの、その後17世紀に入るとぴったりと止まり、少なくとも現存する美術作品の中においては、「垂れ袖」をまとっているのは外国人、とくに異教徒(東方三賢士含む)、黒人、あるいは老人がほとんど。
実は、ヴァチカン内の元・図書館に、天正少年使節団と思われる人々が、そんな不思議な姿で描かれている。

(このあたりの詳細については、以下ご参照ください:
3・ローマの天正少年使節団
6・番外編:ない袖は振れぬ?
7・番外編:ない袖は振れぬ?2

サントリー美術館所蔵のこちらは、右から、ペルシャ王、アビシニア(エチオピア)王、フランス王アンリ4世、イギリス王またはギーズ大公フランソワ・ド・ローランまたはカール5世。
くだんの「垂れ袖」はエチオピアの王で、この場合はキリスト教徒だがやはり8人のうちの唯一の黒人で、まさに条件にぴったり。しかも、その袖のあるオレンジ色の上衣といい、下からのぞく白い袖や裾といい、生地の模様が8人の中でも一番凝っていていかにもクラシックな雰囲気を称えている。これはいかにも、「東方の三賢士」でよくあるパターン。

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神戸市立博物館所蔵の四曲一隻は右からタタール・カン、モスクワ大公、トルコ王、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世。
こちらは1対1、前述のサントリーは3対1の違いはあるが、いずれも、キリスト教の王が異教徒の王と対峙している形になっている。
ちなみに、こちらではやはりトルコ王が一種の「垂れ袖」を身につけているのだが、これはまさに、トルコ含む中央アジアで数世紀後まで見られるスタイル。

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一方、フランス王アンリ4世は、ゴルジェーラと呼ばれる、細かいレースをぴったりと詰めた襟をつけているが、これは16世紀にスペインで始まり、当時欧州中に広まったスタイル。日本にやってきた「南蛮人」たちもほとんどこの格好だったはずで、実際、南蛮屏風に登場するのはほとんどこのスタイルで描かれているが、つまり、この8人の騎士王たちの中で唯一、当世流行の服装で描かれていることになる。

一見洋風だが、顔料や手法は日本画の伝統にのっとったもので、日本のキリシタン学校セミナリオで描かれたものとされる。が、もちろん、日本の画家が想像で描いたものではない。
騎馬像については、17世紀初め、アムステルダムで刊行されたウィレム・J・ブラウの世界地図を参考にしたと言われているが、そのオリジナルは現存しない。そのブラウ地図の騎馬像が、では何を元に描かれたものであったのか、私としては気になるところ。
その関連で、「四都図・世界図屏風」を展示替えのため見られなかったのがちょっと残念だった。

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今回の展示では、赤外線、X線撮影などによる下絵を初公開。細かい筆致なども興味深いが、金箔を貼るところに「金」と指示してあったりして面白い。

誰が何のために描かせたか、よくわかっていない不思議な和洋折衷画。
なお、屏風の歴史や由来については、NHK日曜美術館での解説をこちらで丁寧に詳報されているので、ぜひご参照ください。http://cardiac.exblog.jp/17020961

画像はすべて公式サイトから拝借。

南蛮美術の光と影 泰西王侯騎馬図屏風の謎
サントリー美術館
12月4日まで
http://suntory.jp/SMA/

30 novembre 2011
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by fumieve | 2011-12-01 18:03 | 日本事情
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