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ヴェネツィア ときどき イタリア

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能面と能装束 神と幽玄のかたち、三井記念美術館

能面と能装束 神と幽玄のかたち、三井記念美術館_a0091348_17175290.jpg


2011年11月23日~12年1月28日

帰国直後には、あれも見たい、これも見たい、と展覧会情報を詳しくチェックしていたのだが、今回、実際に足を運ぶことができたのはこれだけ。
最初にここに向かったのは、どうせなら年末年始らしい、華やかな企画展を観たかったこともあるが、2007年に開館したという、三井記念美術館を訪ねてみたかったのも理由の1つ。企業(財閥)の持つ美術館は、東京だけでもサントリー、出光、山種、三菱・・・と快挙にいとまがないが、私企業が多くの美術品を所有し、美術館化し一般に公開する、それもしばしば、それぞれ特化した分野で最高峰のコレクションを有していたりするというのは、日本独特の文化なのではないだろうか?(アメリカもそうかな?と思うが、企業と株主の関係が日本とだいぶ違うアメリカでは、企業がその利益を企業のためにプールして使うというのは難しいようにも思う。どなたか詳しい方がいらしたらぜひご示唆を。)
少なくともイタリアではなかなかありえないことで、フィレンツェのフェラガモ博物館やオープンしたばかりのグッチ博物館など、最近でこそとくにファッションの分野では、企業が博物館を開いたりしているが、基本的には、創業から現在に至るまでの同社の歴史的な記録を残すものであって、上述の日本の美術館とはその意図が大きく異なる。また、ヴェネツィアのプラダ財団やピノー財団の場合は、現存の作家の作品を積極的に集めており、どちらかというとメセナ的活動で、これも日本企業のコレクター的活動とは若干違うように思う。しかも、いずれも企業のコレクションというよりは、企業主個人のコレクションというイメージが強い。




能面と能装束 神と幽玄のかたち、三井記念美術館_a0091348_1718353.jpg


話がだいぶ脱線しているが、能面と能装束の三井所蔵品の展示、私はどちらかというと装束のほうが楽しみで行ったのだが、圧倒的に面の展示がよかった。というのも、お能はこれまで何度か舞台を観たことがあるものの、なにしろお能と言えば、「お面をかぶって、無言で動きの少ない演技だし、なんだかわけがわからなくて難しい」もの。ところがここでは、その「面」を、まず、翁、尉(じょう)、鬼神、男、女の5つに分けられるというところから始まって、それぞれの中でさらに細かく分け、用途(役割)や特徴を1つ1つ明記して展示。「能面のような」といえば、無表情の比喩に使われるが、とんでもない!これまで十把一絡げ(でもないか?)に「能面」だと思っていたものが、こうして見ると、いかに表情豊かで、個性あふれるものなのだろう。
偶然なのか、意図したものなのか、大きなガラスケースの中に1つ1つ間をあけて展示された能面が、ちょうど自分の顔よりほんの少し高いところにあって、近づいてじっと見つめていると、ふと、角度によって自分の顔が面に重なって、あるいは真横に見えて、あたかも自分が面をつけたり外したりしているように見えて、はっとする。

圧巻は「女面」。
ただでさえ、数がほかに比べても圧倒的に多いのだが、若く美しい女性を表す小面(こおもて)に始まり、だんだん年を重ねていくのだが、痩女(やせおんな)、老女、姥・・・ときてもまだ事足りず、山姥、般若ときて、最後はなんと・・・「蛇(じゃ)」!
「般若」でも十分恐ろしい顔だが、「蛇」はもはや文字通り、人間を超えた怪物の形相。
いやー・・・。この「蛇」は「道成寺」のみで使われる面だそうだが、まあ、女の変化というものはかくも恐ろしきものだったとは・・・(笑)。

機会があれば、ぜひ本物を見に行くことをお勧めしたいが、残念ながら行けない方も、公式サイトにかなり詳しく、写真つきで解説が出ているので、もしよければそちらをご覧ください。

www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html

9 gen 2012
by fumieve | 2012-01-10 17:19 | 日本事情
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