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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「ヴェネツィアとエジプト」展、パラッツォ・ドゥカーレ

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Venezia e l’Egitto
Palazzo Ducale, Venezia
1° ott 2011 – 22 gen 2012

ヴェネツィアとエジプト。
かつて東方貿易で栄え、オリエントへの窓口と言われたヴェネツィア共和国は、それだけでエジプトと深い交流関係にあったわけだが、ヴェネツィアにとってエジプトといえば、まず何と言ってもサン・マルコ。新約聖書の「マルコ福音書」を書いた聖人マルコは、伝説によると、エジプトのアレッサンドリアに布教に赴き、当地で最初のキリスト教教会を建て、そして同じアレッサンドリアで殉教したという。
ヴェネツィアがヴェネツィア共和国として頭角を現し始めたころ、すでにアレッサンドリアはイスラム教の支配下にあったが、この町と貿易関係にあったヴェネツィアは、聖マルコの遺体を、イスラム教徒の忌み嫌う豚肉の下に隠し、さらにキャベツで覆って彼らの目をごまかして持ちだした。そしてヴェネツィアは晴れて(?)、その聖マルコを守護聖人として掲げ、聖マルコのシンボルである有翼の獅子をそのまま共和国のシンボルとし、簡単に言うと今に至っている。
つまりエジプトはヴェネツィアにとって、「聖マルコの地」であり、切っても切れない縁にある。




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会場に入ると、まず目の前に展示されているのは、パオロ・ヴェネツィアーノの「祭壇画」。サン・マルコ大聖堂にあるパラ・ドーロ(Pala d’oro)は、現在でも祝祭日のみ、信者の側に向かって展示されるが、その裏というか、つまり、もともと平日用として描かれたのがこのパオロの祭壇画。もともとは「平日」用とはいえ、今や14世紀ヴェネツィア絵画を代表する貴重な絵画の1つであり、現在はサン・マルコ大聖堂付属博物館にある。
この絵が、ここで展示されているのは、下段に、聖マルコの奇跡の場面がいろいろと描かれているため。

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いきなり主役級の登場に驚くが、展示は聖マルコ以前、つまり、古代ローマ時代のヴェネツィアとエジプトの関係にさかのぼる。といっても、そのころ、現在のようなヴェネツィアは存在しなかったから、その周辺、主にヴェネト地方で発掘された考古学資料などが中心。

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次のセクションが聖マルコ、そして、主に16世紀ごろの航海に関する資料だが、地図や地球儀のほか、当時の、一種のガイドブックのようなもの。さらに、何世紀にもわたる交流関係の間に、エジプトからヴェネツィアにもたらされた、貴重品や、あるいは日用品。ガラス製品や染付陶器のかけら、コプト織りと呼ばれる中世初期のエジプトの独特の布。見事な彫金細工の香炉や燭台。当時の硬貨。

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そして・・・おお!チェーザレ・ヴェチェッリオの「世界の古今の服装」も(詳しくは、「卒論物語・1」を:http://fumiemve.exblog.jp/6939590/)!!!
展示されているのは1590年初版だから「日本人の若者」が登場しない版。ここでは、「アフリカの服装」という章の最初、カイロのスルタンなどの服装のページが開いてある。

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続いての「想像上のエジプト」というセクションに入って、また、あっと驚いた。フィレンツェのウフィツィ美術館所蔵、ジョルジョーネの「モーゼの火の試練」、ミラノのブレラ美術館にある、ボニファーチョ・ヴェロネーゼの「モーゼの発見」はどちらも卒論で参考にした作品。(http://fumiemve.exblog.jp/7154485/ )まさかこんなとこで同時に見ることができるとは!

ヴェネツィア人にとってエジプトは聖マルコの地だが、多くのイタリア人にとっては、旧約聖書のモーゼの地でもあり、あるいはクレオパトラの地でもある。
そして忘れてはならないのは、新約聖書の「エジプトへの逃避」。イエスが生まれたあと、ヘロデ王が新生児を全員虐殺するというお触れに恐れをなした聖母マリアと夫のジュゼッペが、幼児を連れてエジプトへ逃避行する。「ロバに乗った聖母子と、そのロバをひくジュゼッペ」や、その親子が木陰で一休みする様子などは、繰り返し描かれてきた場面なのだが、ここで展示されているジャンバッテイスタ・ティエポロの「エジプト逃避行」のシリーズのエッチングはすばらしい。通常なら、一連のキリストの物語の中で、一枚に収められるはずの場面だが、ここでは27枚もの少しずつ違った場面が描かれている。「エジプト逃避行のための絵画的アイディア」というタイトルがついており、一枚一枚がそれぞれ独立した絵としてすでに完成しつつ、こうして並べてみると、まるで親子3人の旅をドキュメンタリーで追っているかのように見える。個人コレクションだそうで、ここで見ることができたのはありがたい。(残念ながら写真資料なし)

そして時代は19世紀へ。ヨーロッパ人にとってエジプトは、同時代を生きる土地ではなく、探検し、発掘しに出かけるところであり、ノスタルジックかつロマンを感じさせる砂漠の地となった。
ヴェネツィアの考古学者らが発掘し、持ち帰ったワニのミイラ(ヴェネツィア市立自然史博物館所蔵)も展示されているが、中央に置かれた「Nemenkhetamonのミイラ」(ヴェネツィア、アルメニア博物館所蔵)に目を見張った。首から下、足首のあたりまで全身、見事なビーズの飾りで覆われている。ミイラは怖いので、これまではあまりよく見たことがなかったのだが、この飾りがここまで完璧な形で残されている(展示されている)例はそう多くはないのではないだろうか?トリノのエジプト博物館でも、この破片というか、一部分のビーズの飾りはあったけれども、なるほど、それがこういう風に編まれていたのか・・・。

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ずっと気になりつつも、見に行くのが最終日1日前になってしまった。
思っていた以上に幅広く、奥も深い展示で、なんとか来ることができてほんとうによかった。

(写真は、ヴェネツィア市立博物館群公式サイト、およびwww.wga.huより拝借)

21 gen 2012
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by fumieve | 2012-01-22 10:13 | 見る・観る
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