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ヴェネツィア ときどき イタリア

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あまりにもリアルな「コジ・ファン・トゥッテ」、フェニーチェ劇場

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Cosi' fan tutte
脚本 Lorenzo Da Ponte
音楽 Wolfgang Amadeus Mozart

Fiordiligi Maria Bengtsson
Dorabella Jose' Maria Lo Monaco
Guglielmo Markus Werba
Ferrando Marlin Miller
Despina Caterina Di Tonno
Don Alfonso Andrea Concetti

指揮 Stefano Montanari
監督 Damiano Michieletto
舞台美術 Paolo Fantin
衣装 Carla Teti
照明 Fabio Barettin

フェニーチェ劇場管弦楽団および合唱団
合唱指揮 Claudio Marino Moretti

幕が開くとそこは、モダンなインテリアのホテルのレセプション。
・・・このあたり、極めて保守的な私は、オペラの「古典」を現代風に演出することに非常に抵抗がある。・・・というか、無理に置きかえるよりは、それっぽい、つまりモーツァルトの時代っぽい衣装で無難にやってくれたほうがいい、と思っている。

が、先に言ってしまうと、今回のこの舞台設定は大当たりだった。




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レセプションのカウンターで、1人てきぱきと仕事をする女性の横で、だらだらぐずぐず、女のことでぐだぐだしゃっべっている男たち。あーあるある、こういう場面、いるいる、こういう怪しいおやじ(ドン・アルフォンソ)と思わずニヤついてしまう。
あまりにもリアルで、ほとんどテレビのトレンディ・ドラマ(死語?)イタリア版かというツクリ。

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舞台は、ホテルのバーカウンター、そしてバスルームつきの客室へと移っていく。
恋人たちの突然の出航で荒れ狂う女たち。これはもう、今のイタリア人の女性そのもの。全員が全員とはもちろん言わないけど、きれいで気の強い女性にありがち・・・ドラマを通り越して、リアリティー番組を見ているよう。これ、ひょっとして演技でなくて「地」じゃないの?と思ったり。

ところが、その、ちょっとフィフティーズっぽい、でもこれまたいかにも今のセレブぶった女性たちの1人から突然、あまりにも美しいソプラノが聞こえてきてビックリ。すぐに寄り添ってくるメゾソプラノもしかり。

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だがそれが、なぜか全く違和感がない。そしてまた、変装した男たちが相手を変えて誘惑するという破天荒なストーリー展開もまた、もはや何でもアリみたいな今の時代からすると、変装うんぬんはともかく、あんまりびっくりすることでもない。いってみれば、超安っぽいメロドラマ、だが、そのお話が、現代風の舞台と衣装とに全く違和感がないのは、それだけダ・ポンテの脚本とモーツァルトの音楽が普遍的ということか、あるいは、人間結局そんなに進歩してない、というべきか。

自分たちで始めたゲームなのに、思いがけぬ展開になって、世界の不幸をすべて背負ったかのように騒ぐ男たちもまたしかり(失礼)。

全部はとても書ききれないが、ともかく演出もたいへん細かく凝っていて、なんとカラオケまで登場するのには笑ってしまう。それにしても、歌手のみなさんはドラマなみにあれだけ演技をつけながら、モーツァルトを歌っているのだから大変。

男女3人ずつ、次々と相手を変えていく2重唱、そして4重唱にもちろんソロと、めまぐるしい歌がまた美しく楽しいのだが、役の上でも姉のフィオルデイリジを演じるBengtssonの声が、母のように姉のように全体を大きくまとめている。

それにしても、モーツァルト喜劇の現代版演出、これはいい。お見事!
舞台演出のパオロ・ファンティンは、なんと1981年、ヴェネツィアに近いカステルフランコ生まれ。ヴェネツィア美術院を卒業したのが2004年だというから、その若さにさらにビックリ。

2 mar 2012
by fumieve | 2012-03-03 04:48 | 聞く・聴く
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