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シモーネ・マルティーニ シエナ派の魅力

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(写真はすべて、www.wga.hu より拝借)


シエナのパラッツォ・プッブリコでもう1つ、久しぶりに見に行こうと思ったのが、シモーネ・マルティーニの「マエスタ(Maestà)(1312-15年)。見逃そうにも見逃すはずのない、世界地図の間(Sala del Mappamondo)という、実質この建物の中心になる部屋の、正面に描かれている。




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不思議な絵だ、と思う。見事に、確かに壁一面に描かれている巨大な絵なのに、そういう威圧感のようなものがなく、柔らかい。部屋に置いてあるベンチに座ってゆっくりと眺めながら、なぜだろう?と考えていたのだが、それはもしかしたら、この絵が、まるで壁にかかったタピスリーのように描かれているからかもしれない、と思いあたった。

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シモーネ・マルティーニは、私が最も好きな画家の1人だが、女性的で優美なラインや色に加え、特に、アウレオラ(aureora、光輪)と呼ばれる、聖人の頭の後ろにくっついている輪っかが、まるで金細工のように細かく、ほんとにラインだけでなく彫り込まれていたりする芸の細かさが特徴。さらに、聖人たちの衣類にも、細かい模様が入っていることが多い。この絵でも、聖母のほか、聖カテリーナなど、何人かの聖人は模様入りの服を纏っている。さらに、彼らを覆う天蓋も、赤地、青地の部分それぞれに模様が描きこまれ、それによって天蓋のたわみというか、やわらかい生地の感触が表現されている。

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これが、パドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂のフレスコ画(1304-06年)などで知られるジョットとなると、まずジョットの場合、建築的要素を生かした背景に、人物表現はと言うと、もっとずんぐりむっくりで男女ともにもっと男性的。かつ、人々や聖人たちの服装はみな、無地で胸や袖口などに金色で模様(つまり刺繍)がほどこされている程度。聖なる場面の背後を飾る布や、祭壇にかけられた布には細かい模様が入っているが、聖母であろうが誰であろうが、纏っているのはみな無地の生地。これはこれで、背景から人物をはっきりと浮き立たせる効果を出しているのだが、ともかく、その意向に大きな違いがあるのは明らか。

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ちなみに、アッシジの聖フランチェスコ聖堂では、両者のフレスコ画があり、違いを堪能できる。

聖なる人を浮き立たせるのではなく、高級な織物にくるんで「高貴」感を出すシモーネ・マルティーニの特徴は、まさに当時のシエナにおいて育まれたのかもしれない。たとえばこのパラッツォ・プップリコの中だけでも、時代を前後する異なる画家のフレスコ画において、同じように生地の模様に気を使っている作品がいくつもあるのに気がつく。
前回紹介したアンブロージョ・ロレンツェッティしかりで、ロレンツェッティは、人物の体格こそ、比較的ずんぐり系でジョットに近いが、細部へのこだわりはずいぶん違う。

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たとえば、「良い政府の効果」の中で輪になって踊る女性たちの服は、全員模様が違っているし、「良い政府」の下、「調和」の寓意の前に並ぶ人々にいたっては、よーく見ると、靴がちょっとずつ違っている!

そして、ロレンツェッティの「良い政府・悪い政府」、マルティーニの「マエスタ」、パラッツォ・プッブリコでその次に知られているのが、「マエスタ」と向き合うようにある、「シエナ将軍グイドリッチョ・ダ・フォリアーノの騎馬像(Guidoriccio da Fogliano, capitano deli senesi, si reca all’assedio di Montemassi)」だろう。こちらも1328年、シモーネ・マルティーニの作とされるが、将軍と馬と、完全にコーディネートした騎馬像は見事で、他に類を見ない。

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Museo Civico
Piazza del Campo, 1
Tel. 0577 292232

*シエナの項、今回はとりあえず終了。シエナの大聖堂および洗礼堂については前回のこちらを参照:http://fumiemve.exblog.jp/d2010-05-25

28 marzo 2012
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by fumieve | 2012-03-29 06:23 | ほかのイタリア
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