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ヴェネツィア ときどき イタリア

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日本の写真(1860-1910年)・傑作展

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(画像はすべて、www.artribune.com から拝借)

ヴェネツィア、パラッツォ・フランケッティ
4月1日まで

La fotografia del Giappone (1860-1910). I capolavori
Venezia, Istituto Veneto di Scienze, Lettere ed Arti
Palazzo Franchetti
17 dic 2011 – 1° apr 2012
www.fotogafiagiappoense.it

またもや、期間終了間際に駆け込む羽目になってしまったが、写真黎明期の日本の写真展がヴェネツィアで開催されている。

西洋から日本に初めて写真がもたらされたのは1843年以前、オランダの出島とされる。
だが、日本で実際に、写真の技術を学び始めるのはそのおよそ10年後。そして、日本初の、写真館が開くには、さらに10年待たねばならない。1862年、上野彦馬が長崎で写真館を開くと、ほぼ同時に下岡蓮杖は横浜でスタジオを開館した。




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今でこそ、旅行には欠かせない、いや、もはや日常生活の一部となっている写真だが、初期の需要はおそらく、やはり肖像写真であっただろう。だが、開国ニッポンにおいて、意外なところで写真の需要が急増した。
それは、日本の近代化の指導のために、あるいは新しい商機を求めて、欧米からやってきた外国人たち。コンパクト・カメラのない時代、彼らは、日本にきた記念に、おみやげに、日本の写真を求めたのであった。
今でいえば観光地の絵ハガキ、18世紀でいえば、イタリアへ物見遊山旅行に来た英国の貴族の子弟たちが、思い出がわりにカナレットの描いたヴェネツィアの絵を買って帰ったのと同じこと。異文化に触れて、とくに目で見たイメージを、なんとか持ち帰りたいと思うのは、古今東西みな変わらない。

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港町ヨコハマでその生産が花開いたことから、「横浜写真」と呼ばれるこれらの写真の、そのジャンルは風景に限らず、実にさまざま。もっとも、急速に近代化を遂げる日本の中で、変わらぬ庶民の生活や風景が外国人たちにより好まれたのは言うまでもない。

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面白いのは、風景にせよ、風俗画にせよ、しばしば、浮世絵にあるような構図のものが多いこと。版画から写真へと、媒体が変わっても、彼らが日本に対して持つイメージの根底に、やはり浮世絵があったのだろう。
もう1つ興味深いのは、女性たちの写真。舞子、芸者、といった、いわばきれいどころのおめかし写真もさることながら、同じ芸者でも部屋でくつろいでいる姿や(これもやはり浮世絵からか)、それ以上に、ふつうの庶民の生活の姿が多く撮られており、これは今の私たちから見ても十分に面白い。それも、呉服屋で反物を選ぶ女性や、お花見に赴く女性など、華やかな姿だけではなく、台所仕事をする女性、店番をする女性、織物を織る女性、縫い仕事をする女性、田畑で働く女性・・・と、みな忙しい。そしてそんな彼女らはたくましく美しい。

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発色が、妙に不自然なように見えるのは、実は白黒写真の上に彩色してあるため。
この彩色が横浜写真の特徴の1つであり、まだカラー写真のなかったこの時代、彩色師たちが1枚1枚、手描きで色を載せた。これを発案したのは実は、フェリーチェ・ベアート(Felice Beato)という人物。イタリア系だが、当時英国領だったコルフ島に生まれ、報道写真家としてインド、中国などを経たあと、1863年に来日し20年を過ごした。彼は日本に滞在中、撮影した写真に、彩色することを考え付く。確かに彩り豊かな着物の模様や、桜や藤の花など、今のカラー写真ともまた違った独特の効果を出している。

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中にはこんな、絵のような写真も。

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ベアートの「発明」は彩色にとどまらず、それらの写真を集め1冊のアルバムにし、蒔絵などの豪華な表紙をつけて売り出したところ、これが大当たり。写真という西洋の新しい技術と、日本の伝統工芸を融合させ、正真正銘、外国人向けの新しい工芸品を作りだしたのだった。
会場には、この蒔絵アルバムも1冊、展示されている。

芸術とも、また報道とも違う、「おみやげ」としての写真。だからこそ、古き良き日本がぎっしり詰まっている。

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29 mar 2012
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by fumieve | 2012-03-30 04:22 | 見る・観る
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