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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「クリムト ホフマンと分離派の足跡の中で」展

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ヴェネツィア、コッレール美術館
7月8日まで

Klimt. Nel segno di Hoffmann e della Secessione
Museo Correr, Venezia
24 mar – 8 lug 2012
www.mostraklimt.it

(写真は公式サイトおよび、http://www.secession.at/ から拝借。)

19世紀末ウィーンで「分離派(セセッション)」の創立者となったグスタフ・クリムトが、ヴェネツィアと切っても切り離せない関係にあることは、案外知られていないのではないだろうか?
1899年に、初めての国外旅行でヴェネツィアを訪れたクリムトは、サン・マルコ大聖堂の内部を飾る黄金のモザイクに深く感銘を受け、それが彼のいわゆる「黄金時代」に明確に影響を与えている、という。
確かに、装飾的、模様的な彼の作品は、ただ単に金箔や金地を多用しているということだけではなく、金に包まれた赤や青やそのほかの鮮やかな色合いは、まさにあのモザイクのきらめきによく似ている。
加えて、1910年には、第9回ビエンナーレ国際美術展にクリムトは「サロメ」を出展。当時の慣習で、この作品はヴェネツィア市が買い上げ、現在は市立のカ・ペーザロ現代美術館に展示されている。

生誕150周年を記念して、だからヴェネツィアがクリムトの回顧展を企画したのも、ごく自然な流れだっただろう。




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コッレール美術館に入って、特別展会場へと上がる階段から、すでに凝った内装の空間が始まる。お金をかけること=いい企画展というわけでは決してないが、それでもやはり、主催者のこの企画展への意気込みのようなものがムンムンと伝わってきて気分が盛り上がる。

弟のエルンストら、周辺の画家と本人の初期の作品。分離派の結成。独特の色気を放つ、女性の肖像画。彼の発展の軌跡をたどるように順路をたどって、あるところで思わず、あっと声をあげた。

1902年、分離派はベートーベンに捧げた大展覧会を開催、そこにクリムトは「ベートーベン・フリーズ」という作品を出展した。横13.92m x 縦 2.15mが2枚、同6.30m x 2.15mの1枚で構成されたそのフリーズ(壁の最上部の装飾)が、そのままここに、元の展示そのままにコの字型に展示されている。展示室が細かく仕切られて、あまり大きな空間のないこのコレールの特別展会場で、その部屋の一つに、ぴったりはまるサイズだったのはこの上なくラッキーだったと思うが、さらに幸運なことに、天井があまり高くないために、本来は高いところにあるべきフリーズが、そのまま目の高さ、目の前にどーーーんと展示されている。おそらくふだん常設で展示されているウィーンのセセッション館で見るよりも、これはよく見えているのではないか・・・。あまりの迫力と、これをここで、ヴェネツィアで見られることに思わず震えが起きる。・・・大きく深呼吸して、目をこすって・・・やっぱり本物!!!!!すごい。

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(この写真は、www.venezia.net より拝借)

弱い人間たちを背に控えながら、幸福を求めて前に向かって進む「力」。

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途中で出会う、怪物や蛇らは、悪や誘惑、弱さや苦しみの象徴。

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それらを乗り越えた勝利のヒーローを取り囲む、女性コーラスからは、高らかな声のあの「喜びの歌」が聴こえてくるようだ。

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ベートーベンの交響曲第9番を土台に、ただし、クリムト・オリジナルと言えるのは、その勇者を最後に、抱擁の姿で描いたこと。これは、「接吻」をはじめ、彼の代表作におけるイコン的なモチーフといえる。
こうして見ると、なるほど、フリーズとは、あくまでも装飾であって、例えば肖像画とは全く性質の異なるものだということが改めてよくわかる。そして、装飾美術にこだわったクリムトだからこそ、あの数々の代表作が生まれたのだということも。
さらに、フリーズという、本来ならこうして目の高さで見られることのないはずのもの、絵ではなく、あくまでも装飾であるのに、どこを見ても決して手を抜いていない。
部屋の中央には、建物の模型もあり、その中でどこにこのクリムトの「ベートーベン・フリーズ」があったかもわかるようになっている。

企画展副題にある(ヨセフ・)ホフマンは、同時代の建築家、デザイナー。このベートーベン・フリーズを始め、クリムトと数多く仕事をしている。

もう一度唸ったのが、「ユーディット」の部屋。右に「ユーディット(Giuditta)」(ウィーン、ベルヴェデーレ美術館、画像1番上)、左に「サロメ(ユーディットII)(Salomé (Giuditta II))」(ヴェネツィア、カ・ペーザロ現代美術館、画像上から2番目)と、2枚が対峙しているだけでもかなりの迫力なのに、細長い2つの作品の間に、「ストックレー・フリーズ用の下絵」(studio per il fregio Stoclet、個人蔵)。下絵とはいえ、水彩に金箔、銀箔まで使った大型(194.4 x 119,8m)のもので、完成作品と言ってまったく遜色ない。

ほかに、肖像画とそのスケッチなどが並べて展示されているのも興味深い。
いちいち全部語り尽くせないが、クリムト年だからこその企画展とはいえ、まさにクリムト年にこれだけの作品を、ウィーンから持ちだしてしまって大丈夫なのか?と余計な心配してしまうほど。せっかくウィーンに行っても、お目当ての作品はヴェネツィアに貸出中だった!なんてことになりかねないのでは?なんだかウィーンに申し訳ないような・・・。
・・・いやいややっぱり、まだまだウィーンにはたくさん、クリムトの作品がある。だが、ヴェネツィアにいて、この企画展を見ることができてほんとうによかった、と思った。
規模、質ともに、ここ数年のヴェネツィアの企画展の中でこれに並ぶものは、ちょっと思い出せない。

・・・そしてやっぱり、もっともっとクリムトを見に、ウィーンに強烈に行きたくなる。

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8 aprile 2012
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by fumieve | 2012-04-09 10:31 | 見る・観る
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