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ヴェネツィア ときどき イタリア

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秘密の花園?~「文化週間」修復所見学

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あー、また、これまで無知のためにいくつ嘘を書いてきたかと、考えたら頭が痛い。

建材や彫刻の材料として、ヴェネツィアでは多く、「イストリア石」(pietro d’Istria)と呼ばれる石が使われている。白くて丈夫で、かつ、イストリア(現クロアチア)は、ヴェネツィア共和国の支配下だったから、調達も簡単。ただ単に、だからヴェネツィアで多用されているのであって、石の質としては、同じ白い石でも、たとえばカッラーラの大理石(marmo di Carrara)などのほうがなんとなく「高級」なのかと思っていた。だいたいヴェネツィアは、大理石に見せかけて作った「なんちゃって大理石」(marmorino)も存在するくらいだから、安くて手軽な材料を使っているのだろう、と。
ところがその選択には、ちゃんと理由があったらしい。
(いや、もちろん「なんちゃって大理石」だって、建物の表には白い石を使いたい、でもヴェネツィアの特殊な構造上、できるだけ建材は軽くしたい、というもっともな理由はあったのだが。)
いわゆる「大理石」(marmo、英語でmarble)は、結晶質石灰岩で、私の科学知識ゼロの頭で理解したところによると、要するに結晶と結晶の集まりだから、一旦その間に不純物が入りこむと、それがばらばらになる運命にある。
ところが、「イストリア石」の場合は、ミクロレベルの結晶による石灰岩で(?)、気孔率が低くそもそも不純物が入り込みにくい。つまり、まず正確に言うと、「イストリア石」は、「大理石」ではない。(えええ~っそうだったの・・・???)




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海の上に人工的に建てられたヴェネツィアでは、建物がみな、塩分を吸収する運命にある。たとえ、海水を直接浴びることのない高さの壁や上階でも、地下から吸い上げた水に含まれる塩分が徐々に浸透する。その塩分が壁の中で結晶化するために、どうしても、ヴェネツィアの壁は崩れやすい運命にあるのだが、例えばそれは、壁に取り付けられた大理石の装飾なども同じことらしい。測定すると、高濃度の塩分を含んでおり、簡単にぼろぼろと崩れる運命にある。
イストリアの石の場合は、その石の構成の違いにより、この現象が起きにくい、つまり、ヴェネツィアでは建材として丈夫で長持ちする、ということになる。古代ローマでも珍重された「紫斑岩」(porfido)と同程度の固さだというのだから、ちょっとびっくり。
かつてのヴェネツィアの人々は、おそらく、そのイストリア石の特性を知った上で、この町で重用していたと思われる。・・・

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昨日に引き続き、「文化週間」で今日は修復研究所の見学に参加した。

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元修道院の建物を利用したこの研究所は、「ヴェネツィアおよび大ラグーナ内各市の、歴史・文化・人類学的遺産、博物館の特別監督庁」(簡単に言うとこのあたりの文化遺産全般を管轄する国の出先機関)直轄の修復および科学分析研究所。
ここでは、絵画、石材、金属、紙と大きく分けて4種の修復を行っているほか、修復対象作品の科学的分析を行う研究所も併設しており、それぞれ、担当官の説明を受けた。

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まず最初は、「美術品修復」というと真っ先に頭に浮かぶ絵画部門。嘘かまことか、広い部屋で今まさに修復作業を行っているのは、ティッツィアーノの「マリアの神殿奉献」(アッカデミア美術館)。それもそのはず、ここはアッカデミア美術館等と同列の機関なのだから、あっても不思議ではないのだが、いきなり目の前に現れた大作に、本物!?と思わず目を疑ってしまった。全体の洗浄と、剥離部分の固定を行っているのだが、これもふだんは高い位置にある作品で(変型なのは、下の扉の形に少し切り取られているため)、こうして目の高さで見るのは初めて。

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もう1つは、やはりティツィアーノの「ダヴィデとゴリアテ」。聖母サルーテ大聖堂の聖具室、天井にほかの2枚とともに飾られているこの作品は、2年前に、聖堂の隣の建物で火事があった際に被害を受けた。不幸中の幸いで火はつかなかったものの、大量の消防水(400L!)が天井から入り込み、つまりその水が絵の裏に流れ、キャンバスで支えるような格好になったのだろう、もともと既に損傷の激しかったあわれな「ダヴィデとゴリアテ」は、そうやって一晩を過ごしたために、裏からの水圧で絵の具がずいぶんと剥離してしまった。
修復にはまだまだ時間がかかりそう。

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(実際の作品は、表面がかなりボロボロだった。)

今日は、仕事の急な呼び出しで駆けずり回ったあと、集合時間に10分ほど遅れてしまった。固く閉ざされた扉に気が萎えたが、思い切って呼び鈴を鳴らすと、ガチャリと鍵が開いて、「どうぞ、どうぞ!全然問題ないわよ!」と迎え入れられた。あやうく貴重な機会を見逃すはずだった無礼な参加者にも、あたたかく扉を開けてくれた心遣いに、深く感謝したい。

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今日は、修復の現場はすべて撮影不可だったので、中庭の様子を・・・。
(絵画作品の画像は、www.wga.hu より拝借。)

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19 aprile 2012
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by fumieve | 2012-04-20 08:30 | ヴェネツィア
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