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ヴェネツィア ときどき イタリア

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シルヴィ・ギエム、ヴェネツィアで栄誉金獅子賞

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元パリ・オペラ座エトワール、英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルで、47歳の現在も現役のダンサーとして活躍するギエムに、ヴェネツィア・ビエンナーレのコンテンポラリー・ダンス部門、ビエンナーレ・ダンツァ(Biennale Danza)が、栄誉金獅子賞を贈った。
ダンス部門は、1998年に音楽部門から独立して99年より毎年開催。栄誉金獅子賞は不定期に、Merce Cunningham (1995), Carolyn Carlson (2006), Pina Bausch (2007), Jirí Kylián (2008) e William Forsythe (2010)に贈られてきたが、栄誉賞自体、長いキャリアを称えるものだけに、これまではすべて振付家で、現役ダンサーの受賞は初めて。

ちょっと紹介が遅れてしまったが、先日、6月20日に受賞式とそれに引き続き一般公開のトークがあった。




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受賞にあたっては、ビエンナーレ・ダンツァのディレクター、イスマイル・イーヴォ氏や、これまでの受賞者の名前を挙げ、その中で自分が受賞した喜びを素直に表現。「何か特別なことをやってきたつもりはない、ただ、何年も前に始めたこと、好きでやってきたことが、こんなふうな結果になった」と、イタリア語で挨拶し、会場を一段と盛り上げると、そのあとのトークも、ほんとうはフランス語(同時通訳つき)で行われる予定だったのが、結局最後までイタリア語で話したのには脱帽した。

トークでは前半は、司会者に促されるままに、これまでのキャリアなどについておしゃべり。もともとは体操から始めて、11歳のときにダンスを始めたが、とくにオペラ座のバレエ団は非常にフェミニンな雰囲気で違和感があり、正直のところ体操のほうが自由を感じたこと。バレエ・スクールの厳格な感じは好きではなかったが、あるとき、舞台が終わったあとに、「(自分で)踊ってみたいか?」と言われ、初めて自由を感じたこと。
クラシック・バレエは嫌いだった、とはっきり言ってしまうところは彼女らしいし、やっぱりそうだったのか、と納得。
パリからロンドンへ移ったのも、結果としてそうなった、のだそうで、パリ・オペラ座では自由な時間、自分のやりたいことをやる時間がほしいと交渉したが認められず、「それなら辞めます」と言って、ほんとにやめたときには、たかをくくっていた幹部は相当びっくりした、とか。(そりゃそうだろう・・・)辞めたときにロンドン行きが決まっていたわけではなく、声がかかったのはやめてから2週間ほど後だったそう。
辞めてすぐ、ではなかったのは、パリもロンドンも、ほんとに本気にはしていなかったのかもしれない。
結果として、ロンドンでは新しい振付師たちと出会うことになったが、それだけでなく、ロイヤル・バレエ団の、シアターへのアプローチも気に入ったと言う。パリではともかく踊ることだけに集中しなければならなかったが、ロンドンでは、それプラス人生、生活があった、とか。意外なようだが、外国人だからこそ、そう思えたのかもしれないし、すでに特別なダンサーだったから扱いも違ったのかもしれないし、その辺はわからない。
現代の振付家に出会うのはしかし、さらに10年ほど待たねばならない。ま、ともかく、重要なのは出会えたことだ、と。常に挑戦することが好きだと言う彼女にとって、そういう出会いはまさに水を得た魚だったのだろう。ときに激しく対立しながらも、次々と新しい振付家を魅了していく。
クラシック・バレエは、それそのものにもちろん価値がある、という。だが、残念ながら時代の変遷とともに、今の人が見ても意味が伝わらないものになっている。彼女にとっては、ダンスもまた、言葉や流行とともに時代とともに移り変わっていくものなのだろう。
そして衰えを知らぬかのような彼女も、25歳くらいのときには、これで踊り続けていていいのか、という疑問も感じたらしい。だが、36, 40歳になって、むしろ踊っていることがふつうになった、と。今は、踊り続けていくために、体が何を必要としているかを学んだそう。
最新の、6000 miles awayというプログラムは、昨年、ちょうど創作中に日本の震災が起きた。ウィリアム・フォーサイス、イリ・キリアン、マッツ・エックという、現代を代表する振付家3名による3部作仕立ての作品は、日本をテーマにしているわけではないが、被災した日本の人々への思いを込めたタイトルになっている。

その6000 miles awayが22日、金獅子賞受賞記念として、ヴェネツィアのマリブラン劇場で上演された。私は都合により観に行けなかったのだが、(比較的珍しいプログラムの上演が多いために)いっぱいになることの少ないマリブランが完全満席御礼、もちろんすばらしい舞台で観客を魅了し、大きな拍手を浴びたという。

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(写真は公式サイトより)

自他ともに妥協を許さず、主張の強い「コワイ」女のイメージのあったギエムだが、トークでは終始笑顔で、むしろ非常にかわいらしく思えた。終了後も気さくにサインや写真撮影に応じていたのがまた印象的だった。

長すぎる手足を、不自然なまでの角度にびよ~んと伸ばして踊る姿を観て、ロイヤル・バレエ団の中でまさに「はみだしている」と思ったのは、日本で、もう15年くらい前のことだろうか・・・。あのときの微妙な違和感は忘れられない。あのあと、数限りないキャリアを経て、さらにパワーアップしたギエム、またどこかで公演を観る機会があることを心から願っている。

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25 giu 2012
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by fumieve | 2012-06-26 03:38 | 見る・観る
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