ブログトップ

ヴェネツィア ときどき イタリア

fumiemve.exblog.jp

夏の野外劇場、開始~「私は、Li」

a0091348_1840168.jpg


真夏のヴェネツィアの、この時期の楽しみの1つ、サン・ポーロ広場での野外映画館が始まった。
軽く夕食を済ませて、できれば一度シャワーもしてさっぱりしてから、(どうせ暗くて見えないから)普段着にノーメイクで、食後の夕涼みがわりにぶらりと出かけ、ひろーい開放的な空間でのんびりと映画を見て、さらに涼しく、人も少なくなった夜のヴェネツィアをのんびりと家に帰る。そののんびり感がすごく好き。

1カ月かけて日替わりで、前年のヴェネツィア映画祭から1年間を振り返って、とくに主な映画祭での受賞作品などを中心に上映するこの野外劇場、初日は、開幕式とまではいかずとも、挨拶とかちょっとした何かあるのかと思っていたら特に何もなく。明日以降の上映のように、ごく普通に始まった。






今日の上映は、「私は、リ(Io sono Li)」。
舞台はヴェネツィア・ラグーナの南端にある、キオッジャ島(Chioggia)。漁師たちの町であるこの島は、ヴェネツィアのようであって、ヴェネツィアでない。運河があって、橋があって、でも自転車や車も走っている。
ヴェネツィア本島から見ると、辺境の地にあるかのようなキオッジャ、それでもまだ夏の間は、魚祭りを始めとしてリゾート需要もあり、明るい雰囲気にもなるが、冬はうんと暗く、寂しい。

大陸中国から、出稼ぎにやってきた1人の女性。巨大な組織の中の1コマとして、住む場所も仕事も、すべて「上」の一言に従って動くのみ。ローマの縫製工場で働いていたLiは、ある日突然、キオッジャのバールのバリスタ(と言っていいのかどうか・・・)として送り込まれる。与えられた部屋の、同室は中華料理屋で働く女の子。
もう何年も前から、ヴェネツィアを始めイタリアの各都市で、市内のふつうのイタリアン・レストランやバールが、ある日、中国人の経営に代わってしまうことはしばしは起きている。それ以前に、古くからある、中華料理屋の、独特の怪しい雰囲気。また、Made in Italyには違いない、だが実際は、多くのイタリア製ブランドが、イタリア国内にある中国人経営の下請け工場で作られている。・・・そんなさまざまな、中国人がらみの「現実」、だが、皆、嘆くだけでどうにもできずにいる現実を、あっさりと描き、キオッジャという小さな町の現実と交錯させた。
霧と重く垂れこめる雲と、灰色にくぐもった海と、アックア・アルタ(高潮)。寒い寒い冬のキオッジャ。
悪気のない(つもりであろう)差別意識、罪のない(つもりであろう)自己中心主義。伝統産業である漁業を営む人々の高齢化と過疎化、一方で、暴力とアルコールにエネルギーを発散するしかない、ぶらぶらしている若者たち。ああ、いるいる、こういう人、と、イタリア側の現実、言いようもない閉塞感も、ずっしりリアルに見せる。キオッジャという、小さなムラ社会を描いているようでいて、実はヴェネツィアも、いや、おそらくイタリア全体が同じ穴の狢であろう。

(彼らの会話は基本、方言なのでイタリア標準語の字幕がついています)

地元で撮影した映画であり、評判も高かったとはいえ、地味な、重いテーマのこの作品を初日に持ってくるのが、しぶい。この夏の野外劇場が、映画「祭」ではなくて、あくまでも地元密着の日常のイベントであることを象徴しているようだった。
また、初日からいきなり、「機材の故障」のため、途中でいきなり中断したのもまた、ご愛嬌というべきか、相変わらずというべきか・・・。

25 luglio 2012
[PR]
by fumieve | 2012-07-26 18:42 | 映画
<< ヴェネツィアから行くアウトレッ... 家庭菜園ならぬ・・・!? >>