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モザイクの旅・番外編~デセンツァーノの(元)豪邸

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先日紹介した絶景遺跡の町シルミオーネなど、ガルダ湖周遊の南の起点となるデセンツァーノ・デル・ガルダには、床モザイクを含むローマ帝国後期の邸宅の跡が残っている。その規模は、現存するローマ遺跡の中で、北イタリア最大とされる。

ローマ帝国時代後期、帝国内の経済危機は、市民の間の経済格差を拡大することになった。農家も、豪農と貧しい小作に二分化されてくると、豪農は町を離れ、田畑の中に豪邸を建てるようになった。
ブレシャ、マンドヴァ、ヴェローナを結ぶ幹線街道沿い、ガルダ湖畔に建てられた豪邸の跡は、調査の結果、紀元後1世紀から5世紀くらいまで何度か改築を重ねられていることがわかっている。




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町の中に、目立たぬようにある入口を入って、ほんの小さな博物館部分を通り抜けて、目の前にあるのが、セクションAと名付けられている部分。
間取りも床モザイクも、一番きれいに残っているこのセクションは、4世紀のもの。

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一番手前が六角形の部屋、大きな回廊つき中庭、広々とした部屋、さらに3ツ葉型の部屋、それに平行するように小部屋がいくつか、そしてその向こうに五角形、八角形の部屋が1つずつ。

規模の大きさと、なんといっても見事なモザイクに思わず歓声をあげる。

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多角形の部屋と、3ツ葉の葉の部分はすべて幾何学模様。4世紀ごろのモザイクの特徴的なパターンのものも多いが、ほかでは見かけない、より複雑なパターンも多く、自由度が高い。

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中央の2つの部屋は、いくつかのパネルに区切られている。1つ目は、キューピッドたちの釣りの場面。

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これは、アクイレイアの大聖堂の床モザイクで見た図像とよく似ているが、アクイレイアではそれが、旧約聖書のヨナの場面になっていたが、ここではどうやら、単純に釣りの場面として描かれているよう。

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3ツ葉型の部屋にはやはり、狩猟の場面のような動物たちのパネル、キューピッドたちが相撲かにらめっこでもしているようなパネルは、どちらも絵も写実的で色使いも細かいが、十字形の中に描かれた水差しと植物のつるは、写実からかなり離れて形式化したものになっている。

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小鳥もかわいい!

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隣の小部屋に残る、やはりキューピーたちのお祭りのような図は、春と夏の寓意らしい。残念ながら失われているが、当然のことながら、秋と冬もあったと思われる。細かい絵もさることながら、周りの幾何学模様もお祭り気分いっぱいでかわいい。

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その近くにある、動物と男性の図。オルフェウスか、または「よき羊飼い」と思われる。

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ラヴェンナのモザイクでも紹介した「よき羊飼い」は、とくに初期キリスト教、キリストそのものとして聖堂や石棺に使われていた。
立派なモザイクで装飾された大広間が2つあるこのセクションAは、客間というかサロンのようなスペースであったと考えられているが、ひょっとするとキリスト教が公認となった直後に聖堂に建て直されたか、あるいはもともと公認以前に、信者たちの集会所として使われていた可能性もないとはいえない。残念ながらまだそこまでは、解明されていない。
「よき羊飼い」をはじめ、キリスト教黎明期は、もともと古代ローマで使われていたシンボルや図像を、カモフラージュの意味もあってそのまま使っているものが多い。なので、何か決定的な図像や碑文でもない限り、キリスト教信者の家だったか否かは確定できない。

以前紹介した、ブレシャのサンタ・ジュリア博物館のように、遺跡をまるごと建物で覆ってしまうのが、保護・保存の観点からすると最も好ましいのは間違いない。簡素な天井だけでは、ちょっとした雨はともかく、紫外線や風、砂埃は防げないだろう。実際、モザイクもそれぞれ、ちょっと水を流して洗えば、もっと色鮮やかにきれいに見えるだろうと思う。だが、案外こういうオープンな形のほうが、もとの建物の全体の規模が想像しやすい上に、見学者の勝手を言うと、この方が遺跡見学の気分を味わえて、楽しい。

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15 agosto 2012
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by fumieve | 2012-08-16 08:06 | モザイクの旅
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