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ヴェネツィア ときどき イタリア

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過去と現在と〜第69回、ヴェネツィア国際映画祭・5

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Superstar
Xavier Giannoli - 仏, ベルギー, 112'
Kad Merad, Cecile De France

このおじさん(失礼)の、ちょっと困ったような顔のアップの写真と、「スーパースター」というタイトルを見たときに、かなり違和感を感じた。えっ、私の大好きな爆笑フランス映画「北へ下る」の、あの彼(Kad Merad)がスーパースター?
・・・いやいや、彼がスーパースターというわけではないのかもしれない。それともフランスでは、superstarという単語に、何か別の含みがあるのだろうか?
・・・などなど、うすうす期待しつつ観た映画。
ほんとに見た目通りの(失礼)なんてことはないおじさん、町の工場で、地味にマジメに働くごくふつーのおじさんが、ある日、通勤の地下鉄の中で、みんなに見られていることに気付く。いや、見られているだけではない、みんながケータイで写真やビデオを撮り始めたかと思うと、サインを求める人まで。
そして気がつくと、その写真やら映像やらが大量にネット上にアップされ、自分の名前で検索すると、何千、何万件もの情報がヒットする・・・。
いったい「なぜ?」・・・だが、そう思うのは彼本人だけ。追っかける方にとっては、すでに話題の「あの」人なのだから。何かの間違いなのか、悪質ないたずらなのか。「なぜ」なのか全くわからないまま、世界中の人に突然注目を浴びている自分がいる、という事実。
大げさで派手な展開の、皮肉なシンデレラ・ストーリーは、あまりフランス映画らしくない。パリの町並みをその舞台背景として存分に生かすでもなく、むしろこれは、世界中のどこでも、誰にでも起こりうる「グローバル」なストーリーといえる。




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Après Mai (Something in the Air)
Olivier Assayas - 仏, 122'
Clément Métayer, Lola Créton, Félix Armand

私は比較的好きだった上記「スーパースター」は、ほとんど話題にならずに終わったのと対象的に、もう1つフランス映画で、これはイタリア各紙で評判の高かったのがこちら、「5月のあと( Après Mai)」。
1968年5月にパリで起きた反体制運動、五月革命のあとのフランス。いろいろな意味での「自由」を手にした学生たちの倦怠と自分探し。
・・・と、正直のところそれしか書きようがない。おそらくこれ、とくに今、映画関係の記者とか評論家とか、ある年代のとくに現在のインテリ層にとっては「我が青春」という感じで、なんとも甘酸っぱい、ノスタルジックな映画なのだろうと思う。 いや、今の学生もそう変わっているとも思えず、だからここでは、もっと若い人にとっても、たいがい「我が青春」なのかもしれない。・・・だが、その感情を共感できないものにとっては、あまり面白いとおもえるところのない映画。だから、どう、っていうのか・・・。

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Linhas de Wellington
Valeria Sarmiento - ポルトガル, 仏, 151'
Nuno Lopes, Soraia Chaves, John Malkovich, Marisa Paredes, Melvil Poupaud, Mathieu Amalric

ヨーロッパの西端、ポルトガルの歴史については、かつては海洋帝国として鳴らし、アフリカ、インドを経て日本へも到達し交流を深めた、というぐらいのことしか、そういえば知らない。
19世紀初め、ごたぶんに漏れずナポレオンの支配下に置かれていたポルトガルは、はじめは民衆達を中心に独立に向けて立ち上がる。それを支援したのが、大英帝国であり、実際に送り込まれてきたのが、(初代)ウェリントン公爵という軍人だった。彼はのちにワーテルローの戦いで最終的にナポレオンを破ったことで知られる。
そんなポルトガルの、ウェリントン側からでなく、抵抗してフランス軍を破るポルトガル民衆側の苦しみを描いた超・長大な大河ドラマなのだが、そもそもその歴史のところがいまいちよくわかっていないとわかりづらい。
前半にいくつか出てきた、軍に接収された、あるいは強制退去によりほぼ空っぽになった貴族のお屋敷の中でなにげにちらちらと写り込む、アズレージョ(ポルトガル語で「青」)のタイルがさすがポルトガルで美しく、モザイクに負けず劣らずタイルも大好きな私としては、ついついそちらに目が引き寄せられた。
超・長大にしたい気持ちはわからなくもないが、150分でなく、120分以内に納まるようにしたら、少しコンパクトになって今よりもむしろわかりやすくなるのでは、と思った。

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Izmena (Betrayal)
Kirill Serebrennikov - ロシア, 115'
Franziska Petri, Dejan Lilic, Albina Dzhanabaeva, Arturs Skrastins

定期検診だろうか、心電図を取りにきた男に、担当の女医が一言。
「私の夫、浮気してるの。」「・・・」
突然の、見知らぬ女性の告白に戸惑う男。だが、ほんとうの爆弾はその次だった。
「それもね、あなたの奥さんと。」
ここで思わず、笑いと拍手が起きるのがイタリア。だが、スクリーン上では男の苦悩が始まる。疑いと恐れ。そして目の前でたまたま起きる、交通事故。
半信半疑の男を、ダブル不倫の逢瀬の現場に導く女。そして起こるべくしてなのか、起きてしまう悲劇。
数十年後。すでにそれぞれ、まったく違う人生を歩んでいた男と女が、偶然出会う。
忌まわしい過去、そして・・・。
因果応報、なのだろうか。エロスを中心に人間のどろどろを描いた、べっとりとした後味の残る作品。

5 ottobre 2012
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by fumieve | 2012-10-06 07:14 | 映画
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