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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「イタリアの旅から 科学者による美術紀行」多田富雄・著、新潮社文庫

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その「旅」はいきなり、パドヴァから始まる。
そして、私はまだ行ったことのない、だが何年も前から機会を伺っているポンポーザ、次はラヴェンナ。もうそれだけで、わくわくと胸が高鳴ってしまう。

この一冊の、そう厚くもない文庫本の中に、いったいどれだけの町が紹介されているだろう?
表紙の写真はベルガモのコレオーニ礼拝堂。イタリア北部から中部にかけての、「珠玉の・・・」とよばれる町たち。そして南へと下って、ロマネスクの聖堂と、ギリシャ文化と、さらにそれ以前の民族の名残りと。
「イタリアの旅」、「美術紀行」とタイトルにはあるのに、ヴェネツィアもフィレンツェも、ローマもミラノも登場しない。大きな町の中で、例外的に1つだけ、1章まるまる費やして語られているのはナポリ。あとは、それぞれ観光客も多い、イタリアらしい中小の町と、えっ!?そんなところまで?とびっくりしてしまうような、観光地としてはほとんど知られていないであろう小さな町と。

著者は、世界的な免疫学者であった多田富雄氏。だが、簡潔かつ適切で非常にわかりやすい説明は、とても専門外とは思えない。といって、美術の解説書のような堅苦しさは一切なく、あくまでも旅エッセイ、紀行としての軽やかさを保っている。
そうしてそんな旅の中で、さすが、イタリアの本質をぴたりと見抜き、ややあきれつつも淡々と語られる「キウソの国」はお見事。何度も何度も訪れたイタリアで、いろいろとご苦労やお怒り、あきらめ・・・等々、いろいろあったのだろう。

レッジョ・カラブリアの「リアーチェの戦士」と呼ばれる彫像を初めて生で見たときの衝撃と感動は、まさに多田さんが落ち着いた、だが興奮を隠しきれない文章の中で語っている通り。あるいはバロック建築はさほど好みでない私が、なぜ、「バロックのレッチェ」にはとても惹かれたのか。
行ったことのあるところ、見たことのあるものは、そうそう、うんうん、と共感しながら、まだ行ったことのないところは、明らかに羨望を感じつつ、ゆっくり、ひとつひとつかみしめるように読んだ。
そして圧巻は最終章。美術と歴史に詳しく、だが、あくまでも一旅行者として綴られたエッセイの最後に、免疫学者ならではの重要な謎解きが1つ。

一筋縄には行かない歴史を背負うイタリア、やっぱり面白い。

・・・また、旅に出たくなった。

4 novembre 2012
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by fumieve | 2012-11-05 11:26 | 学ぶ・調べる
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