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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「ムッリーネ」の魅力にどっぷり、ムラーノ・ガラス博物館

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(展示作品の写真はすべて、公式サイトより拝借)

Vetro Murrino, da Altino a Murano
Gioielli. Le murrine
Mario Dei Rossi e Antonio Dei Rossi. La murrina figurativa contemporanea

Museo del Vetro, Murano
16 giu 2012 - 28 gen 2013
www.visitmuve.it/

ムッリーネ・ガラス、アルティーノからムラーノへ
ムッリーネ、ジュエリー
マリオ・デイ・ロッシとアントニオ・デイ・ロッシ ムッリーネによる現代具象作品

ガラス博物館、ムラーノ
2013年1月6日まで1月28日まで(会期延長)

ムッリーネ(murrine)とは、通常ミッレフィオーリ(millefiori、千の花)とも呼ばれているように、単色、または多色の細長い棒状のガラスをのり巻きの要領で合わせて、断面に花や星などの模様が出るようにしたもの。金太郎飴のようなもの、と言って、果たして最近の若い方に通じるのかどうかわからないが・・・。
それを細かく切って並べて作ったガラス製品まで含め、ミッレフィオーリと呼ばれていることが多い。




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(上の写真2枚は、www.murrina.it より拝借)

例えば同じお皿1枚、花瓶1つ作るにも手間が何段階も余分にかかるのだが、細かい花で埋め尽くされた、あるいは星や渦巻き模様がガラスの中に点々と見え隠れするムッリーネのガラスは、数多いガラスのテクニックの中でもとくに、ヴェネツィア、ムラーノのガラスのトレードマークのようなものと言っていいだろう。実際、ムラーノ島で作られるガラス製品には、たくさんのムッリーネが使われている。
が、このムッリーネ、実はすべての工房で1から作っているわけではない。今ではムラーノ内のいくつかの工房がこのムッリーネ専門で作っており、ほかの工房はそこから、必要に応じてムッリーネを仕入れている。つまり、ムラーノのガラス工房にとって、棒状のガラスに花や星が閉じ込められたムッリーネは、原材料の1つになっているということ。島全体がガラスの工房という世界に類を見ない特殊な環境だからこその分業と言えるだろう。
ちなみに、もちろん手間のかかるムッリーネはコストもかかる。だから原材料としてお高いムッリーネの入っているガラス製品は、同じものならば、入っていないものに比べてお値段がお高いのが普通。

このムッリーネという手法は、既に紀元前1世紀には使われていた。
が、その技法と魅力が再発見されたのは比較的最近のことで、19世紀以降、ムラーノのガラス職人や作家たちの間でムッリーネの使用が飛躍的に発展、たゆまぬ技術の追求と、流行や好みの変化で、さまざまなムッリーネ・ガラスが作られてきた。

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前置きがかなり長くなったが、ムラーノのガラス博物館では現在、そのムッリーネの歴史的発展を紹介する展覧会が開かれている。
時代を追って歴史的にムッリーネの発展を追う同展のほか、メインの展示室のある2階大広間の片隅では、「ムッリーネ、ジュエリー」として、ムッリーネを使用したモダンなジュエリーを展示。(ジュジー・モレッティ・コレクション)

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また1階展示室では、「マリオ・デイ・ロッシとアントニオ・デイ・ロッシ ムッリーネによる現代具象作品」展として、現代におけるムッリーネ作品の大家である両氏の作品を紹介している。肖像画や聖母像から始まり、いわゆる世界の名作を、わずか1センチほどの円形や四角形の中に、描いたマリオ氏。ダヴィンチ、ミケランジェロ、カラヴァッジョにクリムト。フェルメールにゴッホ。筆やペンを使った「絵」であれば、もちろん本物そっくりに描ける人はいくらもいるだろう。だがそれを、わざわざ細長いガラスの束で作って、スライスしたものがこれなのだから・・・もちろんそれを実現できるだけの能力があってのこととはいえ、それ以上に、その根性というか、忍耐というか、に脱帽する。

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もちろん、スライスしたときに、思惑通り「モナリザ」がにっこりと微笑み出てきたら、その嬉しさはまた格別だろうとは思うが。

「切っても切っても金太郎」、とは言え、すべて人の手による作業だから、スライスの顔が同じようでいて、実は2つとして同じにならないのがムッリーネ。 デイ・ロッシの超ミニチュアな世界から、ムッリーネを使ったシンプル・モダンの大きな作品まで、ガラス職人たちの技術に感嘆しつつ、ムッリーネの魅力にどっぷり浸れる。

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9 dicembre 2012
by fumieve | 2012-12-10 07:45 | 見る・観る
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