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ヴェネツィア ときどき イタリア

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インベーダーの成長にわくわく、「カポグロッシ回顧展」ヴェネツィア

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おもしろかった。
一言で言って、ほんと、おもしろかった。

インベーダーゲーム(古い・・・)のような、不器用でぶっとい線で描いたへんてこりんな半円が画面を埋めているカポグロッシという抽象画家には、正直のところこれまであまり興味がなかった。たまたま家の近所にある美術館で回顧展をやっていて、しかもそれが、なかなかいいらしい、と評判を聞いていなければ、すっかり見逃していたかもしれない。



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ジュゼッペ・カポグロッシ(Giuseppe Capogrossi, 1900-1972)、ローマ生まれ、ローマ育ち。彼も最初から抽象画を描いていたわけではなかった。
1930年代。若いころはとくに、絵を描く対象として人間の体、それも女性の体に強い興味を示していたらしい。その「人々」を、イタリア・ルネサンスの幕開けを告げる画家の1人、ピエロ・デッラ・フランチェスカに比較されているように、正確な遠近法の枠組みの中に、配置した。あの殴り描きのような作風からは想像しがたい、どちらかというと、ぴっちり屋の画風。

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模索が始まるのは戦後のこと。48年の、「窓の習作」。ほとんど啓示と言ってもいいだろう、ここで彼は、見えているものをそのまま描くのではなく、「見えていないものを描く」ことに目覚めていく。

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すでに「ローマ派」の一角として名をなしていたカポグロッシが、同48年にヴェネツィア・ビエンナーレに出展した「2つのギター」という作品は、セザンヌや、あるいはピカソのキュビズムを思わせる。
そんな、立体を面に分解した女性像などを経てたどりついた抽象の最初は、はじめはともかく、文字で言うと「E」のタテをうんと長くして、中の棒をいっぱい足したような、そんな形。あるいは、男性の櫛のような。

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そして突如、彼のトレードマークと言える、あの、女性の櫛のような、半円のカタチが登場する。ただ、”Suerficie(表面)”とだけ名付け、番号を振られた作品群の中で、おや、いったいいつからこの半円形に変わっていったのだろう?と思うと、答えはその次の部屋に。

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“Superficie 021”, これが、あの半円形がはっきりと現れる、最初の絵となった。まだほかの、三角やら「E」やらに囲まれて登場している様子は、いかにも初々しい。
まるで象形文字から、古代中国の漢字ができ、そして日本の「かな」が生まれたような、その誕生の瞬間を見ているよう。

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最初はやや遠慮がちに登場したかに見えるこの「記号」は、だが、すぐに彼のすべてになった。まさに水を得た魚、と言うのだろうか、自らの「表現言語」を得て、カポグロッシは文字通り自由に生き生きと、独自の作品を創り上げていく。

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「記号」で空間を生める。それは、小さなブロックで立体を作るのに似ている。そしてその記号自体、延びたり縮んだり、自由自在。篆刻風あり、モンドリアン風あり。単なる「記号」なはずなのに、その「記号」がうごめくさまは、何か生き物のようにも見える。線路の上を走るミニ・トレインのように見えたり、あるいは、象の行進のように見えたり。

自分の言葉を見つけたアーチストは強い。ともかく、1つ1つの作品がいかにも楽しそうだし、何か次々にアイディアがわいてくるのが見えるよう。
また、同じ形の「記号」が、サイズを自由に変える。または、1つ1つの「記号」が集まって、全体でまた同じ形を構成する。
あるいは色の反転。

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そして、「あれ、まるで人の顔みたい・・・会議中?」と思うと、次の部屋ではもっと、テーブルを囲んで、カード・ゲームをする人たちのようになっていたり。

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「記号」が自由自在に発展していくのと同時に、色彩も変わっていく。最初は、「記号」の黒のほか、赤・青・黄の3原色だったのが、茶やグレー、落ち着いた黄色、と渋めの色合いに。

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おお・・・いいな、こんなの。家に広ーいサロンがあったら、このあたり一枚、いただきたいわ〜・・・。

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と、こちらはヴァチカン美術館のコレクション。さすが、いいものをお持ちで・・・。

66年から70年にかけての、モノクロ・レリーフ・ヴァージョン。これもかなりツボ。

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初めはたくさん集まって画面を構成していたはずの「記号」は、もはや巨大化して、画面をはみ出していく。

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あまり興味のなかったはずの、へんてこりんな半円形だが、こうして誕生から成長していくさまをつぶさに観察して、なんだかとても気になる存在になってしまった。

展示と解説がまた、すばらしい。
必ずしも厳密な年代順にこだわらず、自然に彼の世界に入っていくような構成に、見事にはめられた。

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カポグロッシ 回顧展
グッゲンハイム美術館、ヴェネツィア
2月10日まで

Capogrossi. Una retrospettiva
Peggy Guggenheim collection
29 set 2012 - 10 feb 2013
www.guggenheim-venice.it

22 gen 2013
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by fumieve | 2013-01-22 20:00 | 見る・観る
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