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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「白隠展 禅画に込めたメッセージ」にどきどき

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年末年始の短い日本滞在の間に見た展覧会で、一番よかったのは、白隠展かもしれない。
出し惜しみをしていたわけではないけど、これはまだまだ先まで開館しているので・・・と油断しているうちに、あと数週間を残すのみになっていた。

禅僧、白隠の代名詞ともいえる「達磨図」など、いくつかの作品については、これまでも少なくともその画像はどこかで目にしたことがあっただろう。1人の個性的な画家として意識したのはおそらく、辻惟雄さんの「奇想の図譜」を読んでからではないかと思う。
もともと美術としての価値があまり高くなかったせいもあろう、美術館よりも各地の寺院の所有や個人コレクションが多い白隠を、これだけ一気に集めて展示したのは、まずそれだけでもすごい。



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(専門の画家でないという意味で)日曜画家というか、あるいはもっと言うと「下手ウマ」の境地のようなイメージの強い白隠。だが入ってすぐの部屋に並ぶ観音図にまず、あれ?と思った。大きな満月を背に、池に浮かぶ蓮の花を愛でつつ、自らも中空に浮いているかのような観音さまは、繊細で優美で、 彼の特徴とされる、殴り書きのような大胆な筆致、シンプルな表現とは全然違う。

振り返って、「地獄極楽変相図」にびっくり。

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お釈迦さまをトップに文殊、普賢と徳の高い順に並び、閻魔大王から下が地獄。数段に分けた構図といい、地獄でのご沙汰がかなり明確に詳しく描かれているところは、ヴェネツィア、トルチェッロ島にあるサンタ・マリア・アッスンタ聖堂のモザイク画による「最後の晩餐」とてもよく似ている。白隠がヴェネツィアに来たわけではないが、宗教や時代、民族を超えて、人々の考えることは案外変わらないということだろうか。そういえば、トルチェッロのモザイクを見たときに「あ、閻魔さま!」とつい思ってしまったっけ。
(トルチェッロのモザイクについて詳細は、http://www.japanitalytravel.com/back/mosaici/2012_01/01.htmlをどうぞ。)

そして「達磨」。六角形の空間にぐるりと大小各種、白隠の「達磨」が展示されているのは圧巻。六角形という形は、案外美術展で珍しいのではないか。四方八方ならぬ、六方から達磨のギョロ目ににらまれてるような感じですらある。一周回って、逆流してみたり、後ろを振り返ってみたり、まさにいろいろな角度で比較鑑賞できておもしろい。そういえばダルマという語感のイメージに近い。
どれも強烈なのだが、やはり何といっても「赤達磨」の迫力はすごい。ほとんどが墨だけのモノクロの表現の中で、赤の効果は強烈で、これだけデフォルメされた表情にも関わらず、描かれた達磨に命を与えているような、今にも動き出しそうなリアルな緊迫感にあふれている。

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そして、大燈国師、布袋さん、と続くのだが、こちらはどちらかというと、ユーモラス系。いや、達磨さんも結構ユーモラスなのだが、でもやはり迫力がまず先に立つのに対し、布袋さんときたらもう、ユーモラス100%以上。

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多作であった白隠の、ほんの一部よりぬきの展示と言えるだろう。だが、まさに1枚1枚、見るたびにうわ!え?どひゃー!うーむ、なんじゃこりゃー!?・・・と、いちいち声をあげてしまう。いったいどれだけのアイディアが頭の中にあった人なのだろう・・・。
もちろん白隠は、これらの書画を単なる絵や書として描いて(書いて)いたわけではない。禅の教えを少しでも多くの人に広めるためにせっせと描いていたわけで、そこに書き込まれた一言とその意図するところが正確にわかったほうが、より書画の理解も深まるのは間違いない。だが、白隠の作品はほんとに強烈で、はっきり言ってまずは「見るだけ」でも楽しめる。そして、会場のキャプションや解説がとてもわかりやすいので、出て来るころにはすっかり、なんだか自分も白隠通になったような気分が味わえる。
帰りにミュージアムショップで、図録や芸術新潮、あるいは別冊太陽の特集号を買って、ああ、これはこういうことだったのか!なんて道々読んで帰るのも楽しい。もちろん、お気に入りの絵のページを開いて、本物を思い出しつつ、にまにまと眺めるだけでもいい。

そういえば、横浜美術館の「はじまりは国芳」展は、場所柄か、クリスマス当日だったためか、比較的年齢層の高いヴィジターの中に若いカップルがちらほら混じっていたが、Bunkamuraの「白隠展」は、仕事帰り?(あるいは仕事途中???)と思われる若めの、シングルの男性の姿が目立ったのが印象的だった。男性が1人で行きたくなる展覧会、というのはなかなか嬉しい。

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白隠展
禅画に込めたメッセージ
Bunkamura ザ・ミュージアム
2012年12月22日〜13年2月24日
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_hakuin.html

2 feb 2013
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by fumieve | 2013-02-03 09:22 | 見る・観る
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