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「人類の「アルファベット」」展に見る、美しい聖書たち ミラノ、アンブロジアーナ絵画館

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キリスト教やその源流であるユダヤ教と、仏教や日本の神道との一番の違いはまず「聖書」にある。彼らにとって、神の教えはまず「ことば」ありきで、そのことばまとめた「本」が聖書であり、その「聖書」という共通の本を数千年を越えて、解釈し、翻訳し、研究し、伝え続けてきたのがキリスト教であり、「聖書」は彼らにとって、思想や哲学の基礎であり、文字通り「バイブル」であった。その「ことば」ひとつの解釈をめぐって議論し、対立し、そのままいくつもの「流派」に分かれたまま、現在に至っている。

そのもとはたった1つの、いやほんとうはいくつかあったはずの古文書をまとめた「聖書」の展覧会が、ミラノのアンブロジアーナ絵画館ほかで開催されている。

例えば、1230年代の、ユダヤ聖書。(羊皮紙にインクなど)
大きな青い輪の中に、太陽と月、星が描かれているのは、よく教会の中でも「天地創造」の場面で描かれているのに似ている。4つ角に4種類の動物がいるのは、まるでキリスト教の4人の福音書家のシンボル。しかも、鷲、牛、ライオンまでは福音書家と全く一緒。福音書家の場合、残りは「天使」なのだが、ここでは「鶏」なのが違っているが、ここから派生しているのは間違いない。

また、なかなか興味深いのは、多言語聖書。たとえば「五言語によるパウロの手紙」(13世紀後半〜14世紀前半、紙にインク)は、コプト(エジプトのキリスト教民族)語、シリア語、エチオピア語、アラビア語、そしてアルメニア語が、見開きで5段に、対訳で書かれている(らしい)。あとからちょっと直したり追加したりしたのか、赤で吹き出しみたいなものが入っているのが面白い。




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あるいは、3世紀前半、というからかなり初期のギリシャ語聖書の、14−5世紀の写し。これは見た目も「写し」を重視したのか、パピルスに細かい字で書かれている。

アンブロジアーナ絵画館は、企画展用の展示室がなく、これらの貴重な図書が常設の展示室の中で展示されているのだが、それがかえっていい効果を出している。このパピルスは、初期ルネサンスの絵画などが展示されている第2室にあるのだが、同じ部屋の中で、ボッティチェッリの大変美しい「天蓋の聖母」の前には、同時期の大型聖書の細密複製版があったり、と、常設の絵画と、特別展示の「聖書」とを同時に楽しめるようになっている。

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細密複製版も悪くはないのだが、やはりホンモノには絶対に叶わない。
・・・そう思わせるのが、次の部屋に展示されている「ギリシャ語、ラテン語による詩篇」(15世紀、羊皮紙にインクなど、写真冒頭)。きっちりと区切られた額縁、ローマ時代の碑文のようなすっきりとクラシックな書体は、まさにルネサンス期の写本。大型本ではなく、両手で十分に開いて閲覧できる大きさ、左ページがギリシャ語、右がラテン語と対訳になっている。「ことば」が、「本」がまさに宝石そのものといって過言ではない。
もう1つ、写真がなくて残念だが、やはりタメイキものだったのが、11世紀のギリシャ語聖書。(1079年、羊皮紙にインクなど)これは、4つの福音書がそれぞれ、福音書家の挿絵から始まっている。福音書家らが、机に向かって書き物をしている姿は、ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂のモザイクをはじめ、あちこちに描かれているが、こうして、一千年も昔の繊細な細密画が残されているのかと思うと感慨深い。

同展、後半はシャガールの版画と絵画。ユダヤ系であったシャガールは、周囲の画家たちが宗教的なテーマを捨てていく中で、聖書のテーマを繰り返し描いている。
これだけちょっと離れた部屋に置かれているので、注意。

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「聖書 人類の偉大なるアルファベット(基礎)」展
ミラノ、アンブロジアーナ絵画館ほか
6月29日まで
La bibbia, il grande alfabeto dell’umanità
Milano, Pinacoteca Ambrosiana
26 mar - 29 giu 2013
http://www.leonardo-ambrosiana.it/la-bibbia-il-grande-alfabeto-dellumanita/

8 aprile 2013
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by fumieve | 2013-04-09 06:40 | 見る・観る
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