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衝撃!?・・・深く納得の「フランシス・ベーコン」展

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フランシス・ベーコン。芸術新潮今月号(4月号)の大特集で、安藤モモ子さん、金沢百枝さん、原田マハさん、そして松井冬子さんと、各界で大活躍の今をときめく女性たちが、大熱狂で盛り上がっていると聞いて、これは絶対に行ってみなくては、と思っていた。
正直のところ、これまで私は、特別にベーコンに興味を持っていたとは言い難いし、みなさんが熱く語るように、初めて見たときに鮮烈な印象を受けたわけではない。(初めて彼の作品を見たのがいつどこでか、はっきり言って記憶にない)でも、とくに現代美術の場合は、わからない、とか、好きじゃない、と言うと自分の理解力や教養の不足を露呈するようで、だからどちらかというと消極的に「見なければ」と思っていたのだが、特集号を読んで、かなり積極的な「見なければ」に変わっていた。



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結果。
これはもう、一言で言ってほんとに面白かった。
例えば初期の彼の作品のテーマである「叫び」。叫ぶという一種、抑圧や呪縛からの肉体的、身体的解放を「絵」で表すということ。人間、それも徹底して男性の肉体とその動きに対する興味。写真の活用。リアルと非リアル、線描と立体化、男と女など対比する要素を共存。ここまでで十分あまりあるほどに、すでに彼独自の世界を切り開いている。
以前、カポグロッシのときにも思ったことだが、自分のスタイルを見つけた画家は強い。(その意味でも、このベーコンは、試行錯誤中であったはずの自らの最も初期の作品をカウントせず、あえてスタイルを確立したところからキャリアのスタートと定義しているのはごもっともでわかりやすい。)
そしてさらに、三幅対、すなわち3枚の絵をセットで1つの作品とする、キリスト教美術の世界ならばごく伝統的な手法を、まったく新しいモチーフに用いることにより、そのベーコン・ワールドを完成させたと言っていいだろう。

まず最初は、恋人ジョージ・ダイアの正面、左、右からの顔をそれぞれ描き「まるで警察の記録写真のように」仕立て上げる。ピカソらキュビズムの画家たちが、対象を分析、分解し、一枚のキャンバスの中に再構成したのに対し、ベーコンはそれを3枚に分けて対象の3次元を表現した。だから、ある意味もっとわかりやすいといえば、わかりやすい。対象を、三面鏡に写してみた、と言えばいいだろうか。
それを今度はもっと大きなサイズへと発展させる。描かれる対象も、頭部だけではなく、椅子に座る人(彼)だったり、サーカスの綱渡りでもしているかというようなアクロバチックな肉体だったり。三次元、つまり立体を表すと同時に、対象の動きをも捕えているのも、「叫び」の時代からの発展。
最期の作となったやはり三幅対も圧巻。自画像の「顔」が足に乗っかっただけのような奇妙な「体」。片足を闇の向こうに突っ込んでいるのが、まさに「棺桶に片足を突っ込」みながらこちらにサヨナラと告げているように見える。なんてシュール。なんてリアル。

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かつては土方巽が彼の「舞踏」、今でもウィリアム・フォーサイスなど、ダンスの世界にも大きな影響を与えたと知り、納得。彼らの映像、とくに最後に置かれたフォーサイスは、3つのスクリーンで同じダンサーの動きが3方から映し出されており、まさに「ベーコン」の映像化!

新しい「芸術」に向き合うとき、余計な予備知識を入れずに、自分が直接作品に「出会う」インパクトはとても大切だと思う。でも、ちょっとわかっていたほうが、よりすんなりと入っていけることもある。

私の場合、今回は芸術新潮の特集号前半をじっくり読んでから展覧会に臨んで大正解。しかも、冒頭に紹介した「ベーコン女子会」はかなり気になったけど、実は展覧会を見た後に取っておいた。で、それがさらに大正解。みなさんほどの強烈なベーコン・ファンでなくとも、「そうそう」「ふむふむ」「やっぱりねー」とまるで座談会の末席にひっそりと参加させていただいている気分で読んだ。

もともとのベーコン好きはもちろん、食わず嫌いの方にはぜひぜひこの特集を読んで展覧会に足を運んでみることをお勧めしたい。

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フランシス・ベーコン展
東京国立近代美術館
5月26日まで
http://bacon.exhn,jp

20 aprile 2013
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by fumieve | 2013-04-21 00:54 | 見る・観る
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