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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ティツィアーノ展、ローマ

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正直のところ、期待半分、不安半分だった。期待していたのは、もう何年も前からローマでは、ヴェネツィア派の画家のいい展覧会が開催されており、このティツィアーノもそれに続くものであろうという部分。一方で、不安をかきたてたのはヴィジュアル・イメージ。サイトやポスターなどに使われていたのが、ウフィッツィ美術館の「フローラ」だったため。私も、初めてイタリアに来たときにはティツィアーノなど正直よく知らなかったし、ガイドブックに紹介されている「見るべき作品」の1つとして、一応見たものの、「なるほど」以上の感想を持てなかった。確かに美しい作品であるし、ティツィアーノの特徴をいくつも兼ね備えているとはいえ、多少ヴェネツィアで美術史をかじった身からすると、これをティツィアーノの(最)代表作とするのは少々がっかり。




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疑心暗鬼の中、会場へ入って、いきなりガツンとやられた。
最初に、目に飛び込んできたのが、ヴェネツィアのジェズイーティ(イエズス会)教会の「聖ラウレンティスの殉教(Martirio di san Lorenzo)」だったから。
この会場のおもしろい特徴なのだが、第1室、入口正面の壁は、順路の最後にもう一度、上から見下ろすことができるようになっている。そのために必ず、高さがあり、かつ、最も重要な作品(の1つ)が展示される。そして展覧会構成の都合上、初期の作品、出世作であることが多い。
「聖ラウレンティス(以下、ロレンツォ)・・・」は、すでに熟年であったティツィアーノが、国際的な名声を手にし、とくにスペイン宮廷のお気に入り画家として一世を風靡していたころの作品。
聖人の火あぶりの刑という残忍な場面。強い短縮法で描かれた聖人の体、登場人物たちの大げさなまでのポーズに、闇の中で、たいまつと、聖人に今まさに燃え移ろうかという火が、場面により劇的な効果を与えている。奥行きの深い空間。ヴェネツィア画壇に新たなヒーローとして登場したヤコポ・ティントレットに影響を受けたか、あるいは挑戦状をたたきつけるような。知られざる、というよりは、あえて見て見ぬ振りをされてきたかのような、ヴェチェッリオ・ティツァーノという画家の一面をよく表している。
昨年末に修復を終え、今回の展示にいたった。

右横には、彼の自画像。

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そのあとは、ほぼ年代順で、まずは一連の宗教画から。アンコーナの「栄光の聖母子と、聖フランチェスコ、聖ビアジオと寄進者アルヴィーゼ・ゴッツィ」(Vergine con il Bambino in gloria, con i santi Francesco e Biagio, e il donatore Alvise Gozzi)では、背景にヴェネツィアの風景が描かれているのに注目!また、この大きな板絵は、裏がわざわざ見せてあって、何かと思ったら、下書きというかいくつかのデッサンが残っている。カタログによると、そのうちの子どもの頭部などは、ティツィアーノ自身の手によるものの可能性もあるという。

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そして上階では肖像画と続いている。くだんの「フローラ」も、肖像画の並びにごく普通に。やっぱりきれいなことは疑いない(笑)。ちなみに、ティツィアーノの肖像画は、女性はみんなとても愛らしく美しい。服装や装飾品の美しさにもほれぼれ。ところが、法王やスペイン王の肖像は、力が入っているのは見てとれるが、いずれもあまり美しくない・・・というか、ほぼお下品に見えてしまうほどなのは気のせいなのだろうか、あるいは写実的すぎるのだろうか? 男性でも、名前の特定されていない「紳士の肖像」といったタイトルのものは、つくづく見入ってしまうほど美しいものが多いのだが・・・。

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最後はこれまた衝撃的な「マルシュアスの刑罰(La punizione di Marsia)」。

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アポロに挑戦し負けた罪を問われ、半獣半人のマルシュアスは、生きたまま皮を剥がれる刑にあう。当時好んで美術品の題材に使われた、オヴィディウスの「変身物語(メタモルフォジ)」の中のエピソードの1つ。ほかの宗教画でもしばしば見られるように、ティツィアーノは登場人物の1人に自画像を重ねている。
もう1つの自画像が隣に展示されているので、比べてみると一目瞭然だろう。

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ティツィアーノは当時としては異例の長生きで作品数も、代表作といわれる作品も多いから、どれだけかき集めても、なかなか「これが完璧」というのは難しい。だからあえてケチをつけるとすると、全体のバランスから行って神話画が少ないのと、宗教画についてはヴェネツィアから大作が出ていないのがやや残念、というぐらい。
むしろ、大手の美術館所蔵作品だけでなく、(私としては)見たいと思ってもなかなか自分では見に行けないところの作品もいくつかあって、とてもよかった。

(写真は「聖ラウレンティス・・・」は、http://www.atlantedellarteitaliana.it/ から拝借。残りはすべて公式サイトから)

ティツィアーノ
ローマ、スクデリーエ・デル・クイリナーレ
6月16日まで

Tiziano
Roma, Squderie del Quirinale
5 marzo - 16 giugno 2013
http://www.scuderiequirinale.it/categorie/mostra-tiziano-roma

18 maggio 2013
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by fumieve | 2013-05-18 19:28 | 見る・観る
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