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モザイクの旅・番外編〜ナポリ、サン・ジョヴァンニ洗礼堂

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狭いエリアに、たくさんの教会がひしめきあうナポリの旧市街で、それでもやはり一段と大きくそびえ立つドゥオーモ(大聖堂)は、フランス統治時代、13世紀から14世紀にかけてシャルル1世の命により建てられており、今でもゴシック様式の様相を残している。そのドゥーモの中に入って、左側、3つ目の礼拝堂の位置にあるのが、サンタ・レスティトゥイータ教会(Santa Restituita)。何度も改装されており、オリジナルで現存するところはわずかだが、もともとは4世紀、皇帝コスタンティーノがキリスト教を公認した直後にできたとされている。
そしてその教会のさらに奥にあるのが、「泉の聖ヨハネ洗礼堂(Battistero di S. Giovanni in Fonte、イタリア語でサン・ジョヴァンニ)」。



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正方形の空間の真ん中に、円形の洗礼盤が残る。文書記録に欠けるものの、科学調査の結果から、この洗礼堂が作られたのは4世紀終わりで、すなわち、ほぼそのままの形で現存する洗礼堂としては、西洋で最古であるらしい。もともとは、(当時の、初期キリスト教から中世の洗礼堂で一般的であったように)独立した建物だった。奥の階段は17世紀につけられたもの。

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天井を見上げると、中央に、キリストのモノグラムが燦然と輝いている。ギリシャ語でキリストの頭文字を示す「XP」を重ねた「クリスモン」と呼ばれるモノグラムから発展し、十字架とPを重ねたもの、左右のα(アルファ)、ω(オメガ)は、アルファベットのA, Zにあたり、自ら「ことばのはじめと終わりである」と定義したキリストを表している。(蛇足ながら、同じマークを展覧会で半年前に見た!と思ったが、どうやらこのブログで紹介するのを忘れていたらしい。今、ローマでやっているので、気が向いたらまとめてみようと思う。)

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(Costantino 313 d.C. より、4-6世紀のブロンズによるキリストのモノグラム、ウィーン歴史博物館所蔵)

これらはすべて、ガラスのモザイクによる装飾で、建物から何十年かあと、5世紀に入ってからのもの。

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その上の王冠から、よく見ると「神の手」が祝福を与えている。夜空にきらめく星は、ラヴェンナの「ガッラ・プラチディアの霊廟」を思わせる。実際、時代も近く、ほかにも、このモノグラムを取り囲む円環や、そのまわりを8つに分ける仕切りに描かれた、鳥と果物かごなど、まだまだローマ時代のクラシック趣味が残る図像は、「ガッラ・プラチディア」によく似ている。

8つに分けられた台形には、洗礼堂らしく、主に水にまつわる聖書の中のエピソードが描かれている。
井戸の前のサマリア人とキリスト。

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こちらは、グローブ(世界)の上にのるキリストがピエトロとパオロに律法(巻物)を渡すところ。

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その右側には嵐をしずめる奇跡(上段)、漁の奇跡(下段)。
わかりやすいのは、4角に描かれた、4人の福音書家のシンボルだろう。これは、キリスト教初期の時代から好んで使われた図像で、ラヴェンナの「ガッラ・プラチディア」でもやはり、4動物が夜の闇に浮かんでいたが、先日紹介したサン・ガウディオーゾのカタコンベでも、かなり薄くてわかりづらいものの、同じく4隅に描かれていた。

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残念ながら、はっきりと残っているのは、天使(マタイ)と獅子(マルコ)。

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繰り返し使われていくシンボルとはいえ、時代が下るにつれ、とくに獅子は摩訶不思議な姿になっていくのだが、このライオンはまだまだかなりリアルで、そういえば、同じくナポリの考古学博物館で見たライオンと似ていなくもない。あちらは400年以上前の床モザイクだが、まだこの写実性が残っていたのだろう。

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壁には、床モザイクの残りが・・・

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洗礼堂を出て、サンタ・レスティトゥイータ教会に戻ると、その中の礼拝堂1つには、14世紀のモザイクが残る。こちらもこれだけ見たらすばらしいのだが、 図像といい、色合い(テクニック)の美しさといい、初期キリスト教美術を代表する稀少な、5世紀のモザイクを見たあとには、おなかいっぱいでもうとてもじっくり鑑賞する力が残っていなかった。

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痛恨だったのは、うかつにもここにたどり着く前に、デジカメのバッテリーが切れてしまったこと。仕方なく、手元のスマートフォンで撮ったのだが、コンパクトとはいえ、やはりカメラで撮ればもう少しマシだっただろうと思うと、残念でならない。・・・今度はちゃんとカメラを携えて、もう一度見に行こう。
(大聖堂は撮影禁止だったが、ここは有料のためか?自由だった。その日によって違う可能性あり)

26 maggio 2013
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by fumieve | 2013-05-26 17:06 | モザイクの旅
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