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第55回ビエンナーレ・4 私的「金」はロシア館

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参加88カ国、まだすべてを見終わったわけではないので何ともいえないが、少なくともジャルディーニ、アルセナーレの両メイン会場の国別パヴィリオンで、最も気に入ったのはロシア館。
テーマは「ダナエ」。
ギリシャ神話の登場人物の1人であるダナエは、簡単に言うと、たいへん美しい王女だったが、孫に殺されるという予言を恐れた父親によって幽閉されていたが、ある日、全知全能の神で好色なゼウスが、金の雨に姿を変えて彼女と交わってしまう、というもの。



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(上は、ナポリ、カポディモンティ美術館所蔵の、ティツィアーノ作「ダナエ」。これが展示されているわけではない。ご参考まで)

最初の部屋では、ハシゴの上に座った蝋人形のような青年が、ときおり落花生の皮をむいては、ぱらり、ぱらり。あとから思うと、これは次室への暗示となっているのだろう。

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次の部屋では、中央に四角く開けられた「穴」をのぞきこむ人々。

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何かと思いきや、これまたときおり、ばらばらばらばらっとこちらは金貨が降ってくる!
まさにダナエ。
それにしても、この「金の雨」はどうやって降ってくるのだろう?天井を見上げると、そう大きなタンクがついているわけでもない。

・・・と、次の部屋でその謎が解明される。これまた蝋人形のような、おそろしく足の長い無表情のお兄さんが、ときおり下からバケツで金貨をくみあげている!

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そしてその金貨は、なんとベルトコンベアーで天井へ!!!金貨は天で発生しているわけではなかった!!!

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では、金貨は地下からわいているのだろうか?

・・・出口から出て、1階の入口へ。
金貨の降ってくる、あの部屋へは備え付けの傘を借りて入るのだが、男性厳禁、18歳以上の女性のみアクセス可。そりゃそうだ、だってダナエだもの!

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もちろん、傘も特製。

そうして入場を許された女性たちは、空から降ってくる金貨をひとつかみつかんで、手前の部屋のバケツへ。こうして「金の雨」の循環が成り立っているのだった。

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ああ、なんと現実的でわかりやすいのだろうか・・・。

アート、という意味ではあまりにも即物的、俗物的すぎるのかもしれない。だが、「これは一体、何を言いたいのだろうか?」と小難しく考えなくてはいけない作品が並びがちな現代アート展で、いっそこれだけわかりやすい作品は潔くて気持ちがいい。俗っぽいのは間違いない、だが、決して下品でも下世話でもなく、ツクリは洗練されていて美しい。

かつての王侯貴族だって、「ダナエ」の絵を好んで寝室に飾ったのは、もちろんその美しいダナエのヌードを楽しむため。誰もが知る画題を、そのヌードの方でなく、「金の雨」というナンセンス部分に焦点をあて、その仕組みを現実的に、俗っぽく、だが大マジメに種明かししてしまったのには脱帽。
こうして思い出しながら書いているだけでも、笑ってしまう。

そうそう、この金貨、1枚は記念に持って帰っていいですよ、というのでもちろんありがたく頂戴してきた。これももちろん、作品の一部で、表(?)にOne Danae、裏にTrust Unity Freedam Love. the artist guarantees the value with his honor 2013とある。ご利益がありそうなのでお守り代わりにお財布に入れておくことに。

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正直のところ、数年前までロシアの展示はあまり惹かれるところがなかったのだが、昨年の建築展といい、今年の「ダナエ」といい、一般向けのわかりやすさと洗練さのバランスが見事で一歩抜けたな、という印象を持った。フランス、ドイツ、英国、そしてアメリカのいわゆる(アート的)列強大国の各館に追いつけ・追い越せではなく、すでに同レベルに立ちむしろ余裕をかましている感じ。まさに国の勢いを象徴しているといえるだろう。来年以降も楽しみ。

Padiglione Russia, Giardini
Vadim Zakharov : Danae

7 giugno 2013
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by fumieve | 2013-06-07 17:28 | ビエンナーレ2013
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