ブログトップ

ヴェネツィア ときどき イタリア

fumiemve.exblog.jp

第55回ビエンナーレ・10、ユングに始まる中央展示館

a0091348_19401874.jpg


ビエンナーレ企画部門の「ノスタルジック感」は、ジャルディーニ会場内の中央展示館(Palazzo delle Esposizione, 元イタリア館)でもまた顕著だった。



a0091348_19405610.jpg


夢分析で知られるカール・グスタフ・ユングは、幼少の頃から自身、強い幻覚に悩まされていたという。精神医学、心理学を学び、研究者として活躍しはじめてから、再び見るようになった幻覚をメモに残すようになる。『黒の書』(イタリア語ではtaccuini neri, 黒の手帳)と呼ばれるその一連の手帳から、さらに本人が精密な絵として清書したのが、
絵として残すようになった。1913年から足掛け16年にわたって描きためられた1冊のノートは、その革の表紙の色から『赤の書』(イタリア語では、Libro rosso、赤い本」と呼ばれている。(なんと現在は日本語版も出ているらしい。http://www.sogensha.co.jp/special/TheRedBook/index.html )

a0091348_19422418.jpg


建物を入ってすぐ、「赤の書」のオリジナルが中央に、周囲に複製を展示した「キーニの間(Sala Chini)」。天井の、8房のクーポラが、長年の修復作業の末に今年公開となった。1909年、第8回ビエンナーレ開催時に、ガリレオ・キーニという画家が「新しい文明」をテーマに描いたもの。
青を貴重に、赤と金のアクセントを効かせた、クラシックでやや世紀末ウィーン的な雰囲気は、ユングの「赤の書」の幻想画にぴったりで、まさにあつらえたよう。

a0091348_19431312.jpg


肝心のユングの書、いや、幻想・空想画は、私が言うのも失礼だが、美術作品としても相当レベルの高いもの。ユングと言われるとついついそういう目で見てしまうが、美術作品として、まるで細密画のような緻密な絵は技術的にもすばらしいし、絵として見てもほんとうに面白い。
壁の鏡もいい効果を出していて、この部屋だけとっても、十分に小さな企画展として成り立っている。

a0091348_19435818.jpg


a0091348_19443939.jpg


紹介が遅れたが、今回のビエンナーレで生涯業績部門の金獅子賞を受賞した、2人の女性作家の作品も、同じ中央展示館の中に展示されている。すでにお知らせした通り、今年のビエンナーレの受賞作品は、映像ものがほとんどだった。
4年前には、オノ・ヨーコさんも受賞したこの栄誉ある賞に、造形を専門とする2人の作家が選ばれたのは、ほっとするというべきなのか、あるいは暗示的というべきなのか。

a0091348_19464738.jpg


1919年オーストリア生まれでウィーンを拠点に活動するマリア・ラスニック(Maria Lassnig)、31年生まれ、トリノのマリーザ・メルツ(Marisa Merz)、まだまだ現役で活躍する両氏の作品は、気のせいかやはり、いい意味で懐かしい感じがした。

a0091348_19521778.jpg


6 ago 2013
[PR]
by fumieve | 2013-08-06 19:53 | ビエンナーレ2013
<< クロアチアの旅2013・4〜ロ... クロアチアの旅2013・3〜モ... >>