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ヴェネツィア ときどき イタリア

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トレントの(一月足りない)「12カ月」のフレスコ画

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町中の、外壁のフレスコ画も美しいのだが、トレントの「フレスコ」といえば「12カ月」のフレスコ。





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ブオンコンシリオ城(Castello del Buonconsiglio)内、トッレ・デッラクイラ(Torre dell’Aquila、鷲の塔の意味)。

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ガイドさんに従って、狭い城壁沿いに沿って歩いたどん詰まり、小さな入口から中に入ると、四方の壁が色鮮やかなフレスコ画で飾られている。

ちなみにフレスコ画とは、フレッシュを意味するイタリア語のフレスコ(fresco)に由来し、壁に下地として漆喰を塗り、その漆喰が生乾きのうちに、顔料を乗せて絵を描き、そのまま乾かして絵を壁に定着させるもの。一日に描ける量が限られていること、一度乾いてしまうと描き直しがきかないこと、など制限はあるが、一度描いてしまえば、基本的には丈夫で長持ちするため、イタリアではローマ時代より外壁、内壁ともに多用されている。
既に存在した塔の内部を、14世紀末にトレントの司教領主となったジョルジョ・ディ・リキテンシュタイン(Giorgio di Liechtenstein)が改装させたもので、このフレスコ画は1391年から1407年の間に描かれた。画家の名は知られていない。

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入口を入って、正面の壁、左端が4月。以降、時計回りにぐるっと1周、1年各月ごとの場面が展開する。
貴族階級の生活と、農民の農作業の様子が同時に描かれているが、実は彼ら同士が交わることはない。
12カ月の、生活や労働のモチーフは、中世中〜後期でよく好まれており、イタリア各地で、とくに教会の彫刻装飾にもよく見られる。例えば、オートラント大聖堂の床モザイク、パルマの洗礼堂の彫刻など。ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂の入口にも彫刻の装飾がある。また、教会以外で、特にフレスコ画(壁画)ではフェッラーラのスキファノイア館の「12カ月の間」が有名。

4月、春の到来。農民は畑を耕し、種をまく。宮廷の女性達は緑の庭を散歩しつつ、次の5月へと観るものをいざなう。

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その5月は、城壁に囲まれた町から外へ出て、1年でもっとも美しい季節を謳歌する人々。庭での会食、ダンス、そして愛のささやき。ここには農民たちが姿を見せる余裕はない。人間の手によって完全に支配された自然、城壁に守られた「理想郷」は、シエナの「よい政府・悪い政府の寓意」にも共通し、国際ゴシックと呼ばれる14世紀絵画の典型的なもの。
また、画面内に遠近感がなく、重要なもの、たとえば人間ならば貴族らが農民たちより大きく描かれているのも特徴。

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6月。上部では牛の乳をしぼり、チーズを作る女性達。下半分は、町のお祭りだろうか、華やかな楽隊に先立ち、宮廷の男女がそぞろ歩く。

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次の壁へ移って7月。上部ではおそらく、牧草を刈っているのだろうか、鎌やすきを使って必死に働く人々の左下には、刃物を研ぐ鍛冶屋も。真ん中のに浮かぶ船は漁師たち、その下は鷹師。そして一番下に描かれているのは、プロポーズの場面。

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8月は刈り取り。果物がたわわに実る柵のこちら側では、宮廷人たちが鷹を愛でている。

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9月はその次の壁へ。再び、畑を耕す農民達をよそに、手前の広いスペースでは狩猟のシーンが繰り広げられている。ここで言う狩猟は、生活のための狩りではなく、あくまでも王侯貴族の趣味としての狩り。だから服装も優雅で、中には女性たちも混じっている。
その間のスペース、かぶのようなものをたくさん収穫しているのもリアル。

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そして10月は、ぶどうの摘み取り。たわたに実ったぶどうをせっせと摘んでは、しぼる。今でいう醸造師だろうか、それなりの格好をした人が、ちゃんと味見もしている。そんな農民達に交わることは決してないが、ここでは高貴な女性や男性、そして修道女たちも摘み取りのマネゴトをしている。

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11月は冬支度。ふたたび狩りの姿が見えるほか、夏の間は放牧していたらしき家畜たちを、町の中に入れているのもまた極めて写実的。

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既に雪の見える12月。薪を刈っては、町に運ぶ作業で大わらわ。

入口から入ってすぐ左の壁が1月(写真冒頭)。この「12カ月」のサイクルの中でも、もっとも知られている絵だろう。山間の町らしく、すっかり雪に覆われたトレント。その手前で、なんと優雅な姿の宮廷人たちが雪合戦をしている様子が描かれている!男女混じって、結構真剣に勝負しているらしいのは、1人1人、豊かな表情から見て取れる。雪で遊ぶ貴族たちの姿を描いた、イタリアで最初の絵画とされている。

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お隣が2月。カーニヴァルの騎馬合戦をする男性陣と、それを塀の上から見物する女性たち。右下には再び鍛冶屋が描かれていて、なかなか芸が細かい。

「12カ月」と呼んでいるが、実はここには3月が欠けている。2月と4月の間の壁に、らせん階段という木製の筒が貼り付いており、おそらくそれを作った際に、もともとはあったはずの3月の部分が隠れてしまったと思われる。
「12カ月」というもともと好きなモチーフの中で、自分の誕生月である3月がないのは、なんとも寂しい限りなのだが・・・。

「12カ月」のフレスコ画は、ただ見て美しいというだけでなく、当時の貴族や農民の生活を伝える、貴重な資料ともなっている。

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塔内撮影禁止のため、フレスコ画の画像はすべてwikipediaから拝借した。
(部分的にカットされているところあり。)

見学は、ブオンコンシリオ城から。お城のチケットを買う際に、「12カ月」も見るかどうか聞かれる。城内は自由見学、撮影も自由だが、「12カ月」へのアクセスは時間指定制。音声ガイドつき。

Castello di Buonconsiglio, Trento
www.buonconsiglio.it
Tel. 0461 233770

9 agosto 2013
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by fumieve | 2013-08-10 00:38 | ほかのイタリア
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