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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「北斎の大波 かたちの感情に触れる」展、東洋美術館

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あの富士山を遠くに小さく、荒れ狂う波を手前に大きく描いた大胆な構図。深い青と波頭の白の対比の鮮やかさ。北斎の、いや、日本の浮世絵の中でも世界中で最も知られていると思われる「神奈川沖浪裏」。

版画だから、現存するだけでもいくつもあるが、ヴェネツィアでの展示は初めてと聞いて早速行ってみた。

が、展示は二重の意味でちょっとがっかりするかもしれない。
イタリア語ではただ「大波」と訳されている「神奈川沖浪裏」(ジェノヴァ、キヨッソーネ東洋美術館所蔵)、その作品そのものはやはり、文句なくすばらしい。これが、初めて欧米人が見た当時、度肝を抜いたであろうことは簡単に想像がつく。今見ても十分にモダンで美しい。

だが、1つめのがっかりは、おそらく、たいていの人が想像しているより、実際の作品が小さいこと。これは私が初めて、ルーヴル美術館でモナリザを見たときに起きた現象のため、個人的にはモナリザ現象と呼んでいるが、有名な作品、写真やとくにポスターなどで見慣れすぎている作品にありがちなことで、これに限ったことではない。だが、ヘタに「大」波とタイトルがついてしまっているだけに、とくに、西洋の巨大な絵画に見慣れた人々からすると、あれっ!?と思うかもしれない。
しかもご丁寧に、そこだけ壁を青く塗って、さらにご丁寧にそこだけ近くに寄れないようにロープがかかっていたりするものだから、縮小効果抜群。




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もう1つは、実質、今回あらためて展示されているのは、この作品1つだということ。

「富獄三十六景」の作品いくつか、あるいはそうでなくても、何枚か北斎の版画を並べて展示していれば、「神奈川沖」でも「おおっ!これか!」と思うほうが強くて、「思っていたより小さい」というのは二の次になると思うのだが・・・。

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ほかに展示されている、もちろん北斎漫画だって北斎の重要な作品の1つには違いないが、それなら先日、ミラノの「マンガ展」にだってあったし・・・。もう1つ、北斎の軸だって、このヴェネツィア東洋美術館のお宝であるのは間違いないけど、これは常設だし・・・。

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ヴェネツィア(だけでなく、たぶんイタリアのほかの町でも)では、1作品を見せる企画展というのもしばしば行なわれる。それは、作品の修復後であったり、何かテーマを決めてフォーカスを当てたり、もちろん、めったにないけど、新規購入という場合もあるだろう。
だから、「神奈川沖」ほどの作品なら、1点展示だっていいと思う。

かつ、今回は展覧会名が暗示している通り、視覚障害を持つ方のための美術教育を考える機関なども参画しており、手で触れて鑑賞できる、樹脂でできた立体の複製も合わせて展示されていて、それについてはもちろんいい試みだと思う。

イタリアの北斎というと、2000年にミラノで行なわれた大展覧会がすばらしかったと聞く。もちろん、今回の展示作品だって1つ1つは興味深い。だが、2000年のミラノほどではなくとも、もう少し、期待していたのだが・・・。

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文句ついでに言うと、これらの本を置くために、自慢の常設コレクション、漆の小皿類のケースが全て取っ払われているのはかなり残念。

さらに・・・なんと、私が行った先日15日(日)は、「人出不足のため」と断り書きがあって、そのほかのこれまた重要な蒔絵のコレクションなどを展示する数室が閉鎖。・・・これ、チケットを買って入っていたら怒るよ!!!
(ヴェネツィア市民は入場無料)

2週間前に始まった「レオナルド・ダ・ヴィンチ」展は、圧倒的な作品群に息を飲んだが、 展示に関しては疑問がいっぱいだった。ヴェネツィアという環境で、場所が限られていることはよくよく承知している、その中で、そして予算も限りなく少ない中で、なんとか企画展をやろうという試みは大変すばらしいしありがたいと思う。だが、これが国立美術館の展覧会かと思うとちょっと悲しい。

まあとりあえず、イタリアでは津波のイメージと誤解して使われるようになってしまったこの作品が、津波ではなくふつうの大波を、北斎独自のデフォルメで表現されていることが、少しでも多くの人にわかってもらえるといいのだが。

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「北斎の大波 かたちの感情に触れる」展
ヴェネツィア、国立東洋美術館(カ・ペーザロ内)
11月3日まで
La Grande Onda di Hokusai. Toccare il sentimento della forma
Venezia, Museo d’Arte Orientale di Venezia a Ca’Pesaro
8 settembre - 3 novembre 2013
http://www.polomuseale.venezia.beniculturali.it/eventi-e-mostre/?p=3147

19 settembre 2013
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by fumieve | 2013-09-20 14:33 | 見る・観る
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