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ヴェネツィア ときどき イタリア

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マザッチョの弟、ロ・スケッジャという画家

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15世紀前後のイタリアの絵で、横に細長い板に描かれたものがあったら、1つにはプレデッラ(predella)と呼ばれる大きな祭壇画の「足」の部分である可能性もあるが、明らかに宗教的なテーマではない場合は、かつての長持の一部であることが多い。



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フィレンツェのアッカデミア美術館で、この「Cassone Adimari(アディマリの長持)」は、大小の作品が一面にびっしりとかけられた壁の中でも、中央で一段と強く主張していた。 カッソーネ(cassone)と呼び習わされているものの、縦88.5cm、横が303cmとは、長持にしてはかなり大きい。実際に、長持ではなく、おそらく壁の装飾の一部だったものであろうと推察されている。

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1450年ごろの作品で、描かれているのはおそらく、結婚式の祝祭の場面。
写真では全く、本物の魅力の半分も伝わらないのだが、まず、とくに手前の女性たのドレスの、生地の見事なこと!奥には、フィレンツェの、今も変わらぬ八角形の洗礼堂が見える。

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今までに見たどんな「長持」よりも圧倒的にきれいだと思い、あらためて作者を見ると「ロ・スケッジャ(Lo Scheggia)」とある。本名ジョヴァンニ・ディ・セルジョヴァンニ(Giovanni di serGiovanni)お恥ずかしながらよく知らなかったのだが実は、サンタ・マリア・デル・カルミネ教会ブランカッチ礼拝堂のフレスコ画などを描いたマザッチョ(Masaccio)の弟らしい。
1406年、アレッツォ郊外で生まれたジョヴァンニの父は公証人だったが、祖父が長持職人だったらしい。1420-21年にビッチ・ディ・ロレンツォの工房に入った後、兄マザッチョの工房に移る。
初期の作品には実際、イタリア・ルネサンスの立役者の1人である兄の影響が強い。
32年には独立して、自ら画家組合に登録。この頃には、大きな祭壇画やフレスコ画を得意とした兄とは異なり、家具など室内装飾の専門家として頭角を表していった。

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とくに28年に兄マザッチョが亡くなってからは、作風もフラ・アンジェリコ、ドメニコ・ヴェネツィアーノ、フィリッポ・リッピらに近づいていった。あまり適切な表現ではないかもしれないが、あえて言うと、大きな画面に正確な遠近法を取り入れ、合理的、かつよりダイナミックで「男らしい」絵画でルネサンスという新しい時代を切り開いた兄と違い、国際ゴシック様式の名残りを惜しむかのような、より装飾的でやや耽美な、極めて「女性的」なスタイルで人気を得た。
豪華でかつ繊細なその画風が好まれたのだろう、メディチ家でもしばしば仕事をしており、ロレンツォの誕生祝いの「デスコ・ダ・パルト」もその1例。

いや、ルネサンス期のフィレンツェで出産のお祝いに使われたという「デスコ・ダ・パルト(Desco da parto)」が引っかかったのは、そもそも、この作品からだった。ロ・スケッジャという名前を引くと、必ず「デスコ」が代表作としてこの「カッソーネ」とともに登場する。ヴェネツィアではほとんど見かけない「デスコ」、フィレンツェではあちこちに残っているのに興味を覚えたのだった。

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邸宅博物館では、同じく「デスコ」のほか、いくつかロ・スケッジャの作品を見ることができる。
「スザンナの物語」は、写真は絵の部分だけだが、カッソーネ(cassone、長持)の形のまま残っており、床置きで展示されている。
「スザンナと老人」のテーマは、女性のヌードを描く格好のテーマとして好まれ、その場面だけ登場するものが多いが、ここではご丁寧に(?)着衣のスザンナも描かれており、これがまたすばらしい装束でタメイキもの。入浴の場面を老役人たちにのぞかれ、狡猾な脅しに乗らず拒否した「スザンナ」は貞節の象徴としてこうした嫁入り道具の長持などにもよく描かれたらしい。

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驚くのはペトラルカの詩「凱旋」を描いた4点セット。
これはカッソーネやデスコと同じく板の上に描かれたテンペラ画ながら、U字型に深くカーヴした形をしている。メディチ家のクローゼットの一部だったらしい。

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愛の凱旋(Trionfo dell’Amore)

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死の凱旋(Trionfo della Morte)

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栄誉の凱旋(Trionfo della Fama)

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永遠の凱旋(Trionfo dell’Eternità)

装飾が目的とはいえ、実用品にこれだけちまちまと絵を描き込んだロ・スケッジャ。当面、気になる画家になりそう。

(画像はすべて各美術館公式サイトとwikipediaから拝借)


28 settembre 2013
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by fumieve | 2013-09-28 16:12 | 見る・観る
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