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ヴェネツィア ときどき イタリア

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バルセロナにて・6〜国立カタルーニャ美術館

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度肝を抜いたのがサグラダ・ファミリアなら、腰を抜かしたのがこちら、国立カタルーニャ美術館。
巨大な美術館であることは予測済みで、中世マニアとしてはともかく、今回はロマネスク美術部門を見られればいいか、と思っていたのだが、そのロマネスクだけで十分に腰を抜かしてしまった。

巨大な建物だが、エントランス・ホールから、セクションごとに四方八方に散った入口に大きな表示が出ており、わかりやすい。「ロマネスク」方面へと、どきどきしながら足を踏み入れると、入ったすぐ正面がいきなり、大きな祭壇になっていた。



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(Seu d’Urgellのマエストロ、Seu d’Urgell、12世紀第2四半世紀)

ピレネー山脈で11-13世紀に建てられた教会について、発見・研究されたのは20世紀に入ってから。1907年に本格的な調査が行なわれ、その後、「Les pintures murals catalanes (カタルーニャの壁画)」として内容が出版されると、数年後には外国の骨董商らのグループが訪れるようになる。米国などのコレクター向けに持ち出されるところを、すんでのところで食い止めたのは、当時のバルセロナ美術館のボードメンバー。美術館自ら買い取って同館で保存することに決定したのだった。
こうして、1919年から23年の間に、いったいいくつになるのだろう?・・・数多くの教会の壁画が剥がされ、ごっそりとここへ運ばれた。

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(Boíのマエストロ、Sant Joan de Boí、1100年ごろ)

まず一番初期、11世紀末から12世紀前半の壁画には、フランスのカロリング朝時代、そしてイタリアの影響が強く見られるという。

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(Pedretのマエストロ周辺の画家、Sant Quirze de Pedret、11世紀末〜12世紀初め)

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(Pedretのマエストロ周辺の画家、Burgal、11世紀末〜12世紀初め)

このころの絵画では、ヘンなものを見つけるのもまた楽しみの1つ。

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(作者不詳、カタルーニャ、Esterri de Cardós、12世紀後半)

4人の福音書家の1人として、聖マルコは、キリストの足元に、そのシンボルであるライオンの姿で表されているのだが、ライオンというよりはどうみても豚みたい・・・。でもご丁寧に、マルコと明記されているから間違いない。

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ヘンと言えば中には、ひょっとすると絵画の知識も経験もない人が描いたのかもしれない、かなり稚拙なものもある。

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(作者不詳、カタルーニャ、Marmellar、12世紀)

生で見たときには気がつかなかったが、こうして写真で見ると、色合いのためだろうか、壁画というよりは刺繍か何かのようにも見える。天使もかなりへんてこりんだが、それがなんともかわいらしい。

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そして、このロマネスク部門のハイライト。教会がまるごと、そこに組み込まれているかのようだった。

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(Santa Maria de Taüllのマエストロ、Santa Maria de Taüll、1123年ごろ)

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横壁はそれ以降に描かれたもので、作者も別。

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(最後の審判のマエストロ、Lluita de David i Goliat、1123年以降)

そして、ガイドブックや教科書に必ず載っている、一番有名な絵。

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(Taüllのマエストロ、Sant Climent de Taüll、1123年ごろ)

ああ、これ、と思いつつ、写真で見るよりも、ずっとずっとずっと美しくて息を飲む。・・・今まで甘く見ていてごめんなさい、という気分。
このころには完全に、独自のスタイルを確立している。印象的なのはまずその色彩。最も目につくのはターコイズ・ブルーだが、赤や黄も強く主張している。教会の中の宗教画のはずなのに、明るく、生き生きとして快活だ。
ちなみにここのマルコ(ライオン)は、だいぶやせ型とはいえ、かなりまとも。

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一方、こんな水晶玉みたいなとこに閉じ込められちゃったライオンはちょっと珍しい。

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(Santa Coloma d’Andorraのマエストロ周辺の画家、Absis d’Engolasers、1160年ごろ)

教会に限ったことではないが、絵画も彫刻も、その本来の場所を離れた時点でその意味を失う。どんなに美的に優れたものでも、博物館や美術館に展示されたモノは、言ってみればまさにミイラの陳列にほかならない。
だが、いくら元の聖堂と同じではないとはいえ、アプシスや礼拝堂、柱やアーチなど、建物の形をできるだけ元のように再現してあり、いつのまにかまるで、聖堂から聖堂へと、お遍路さんをしている気分にさせられる。 もっとも、元の教会の外観の写真も小さく展示されているものもあり、その中ががらんどうになってしまったのかと思うと、心が痛むが・・・。

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(作者不詳、カタルーニャ、Maiestas Domini i Tetramorf de Cardona、1200年ごろ)

21世紀の現在であれば、おそらくできるだけ現地で保護・保存の方法を模索するはず。だが100年前にそのままにしておけば、そのまますっかりアメリカに売られてしまっていただろう。運良くその場に残されていても、その後の戦争や内戦で失われてしまっていたかもしれない。
本来であれば、遠い山の中にあったお宝を、こうして一気に(気楽に)見ることができるのは、奇跡と言うしかない。

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(Sant Esteve d’Andorraのマエストロ、Absidiola de Sant Esteve d’Andorra、12世紀)

バルセロナ、恐るべし・・・。

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(作者不詳、アラゴン、Sigena、1190-1194年ごろ)

Museu Nacional d’Art de Catalunya
http://www.mnac.cat/

18 ottobre 2013
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by fumieve | 2013-10-19 08:28 | 異国の旅
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