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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ヴェネツィアは救われるか?〜ヴェネツィア映画2本

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当時から世界中の人が集まっていたヴェネツィア。
現在、人口わずか58,000人のこの島には、毎日平均60,000人の観光客が訪れる。
Andreas Pichler監督のドキュメンタリー映画「Teorema Venezia(ヴェネツィア定理)」冒頭、人であふれるヴェネツィアの町の映像に重ねてさらっと現れるテロップ。その人口は、1438年の大疫病直後の人口数に毛がはえた程度だと言う。商業の中心地として当時から外国人の出入りの多かったとはいえ、「ヨソモノ」の数はいったい何倍になっているのだろう?

昔は安かったから買えたけど、ヴェネツィアは修復・維持に莫大なお金がかかるから、と持ち家を今は外国人に貸す女性。それでもほかに自分が住むことのできる「書斎」があるのだからまだ幸いな方だろう。
長年、運送業をしてきた男性。これまでに、多くの住民がヴェネツィアを離れ、そのあとがホテルになり、観光施設になって行くのをさんざん見てきた、という。自分の住む小さな屋上のアパートのお向かいは、常に雨戸が閉まっている。開くのは年に2回。クリスマスとビエンナーレの開幕のころだけ。ずいぶん前にフランス人が購入したらしい。その横もまた、外国人向けのアパート。そう、自分は船で暮らしてきたようなものとつぶやく彼も、やがて引っ越さなくてはならなくなる。
昔は、ヴェネツィア一いい男と言われていたという元ゴンドリエーレ(ゴンドラ漕ぎ)とその奥さん。そのときはヴェネツィア中の女性にうらやまれたけど、彼と結婚しなかった彼女らがうらやましいわよ。ほんと大変だった、という彼女。そう、いろいろあったけど、引っ越し?いやーあとはサン・ミケーレ島(墓地)へ行くだけだよ、がっはっはと笑う彼。
ヴェネツィアでひっそりと暮らす、人々の生活が同じ目線で描かれる。
毎日、まるで町を包囲するかのように押し寄せる大型客船におののきつつ、このままではだめだと市がきちんと対策を立てないと、と苦情を呈しつつ、観光を生業にしている人も多く、葛藤を抱えつつ生きている。
ヴェネツィアは年間、1,5000,000ユーロの観光収入がある、とテロップが流れる。

今は、小さなアパート1軒、まともな仕事をしていては一生働いても買えない価格になってしまった。
「いやー昔はね、シーズンは半年だったんだよ。半年働いて、半年は休む。今は12カ月、いや13カ月働いているようなもんだからね」。その「昔」からして、そもそもマトモであったとは言い難い。特殊な町。

あちこちに、500年、600年前の建物が残る。修復や室内の改装は、手早く、安上がりな材料と手法で行なわれるから数十年ももたない、という建築家。わかっていても、でも、自分に何ができる?

テロップは、このままでは、2030年には住民は一人もいなくなってしまうだろう、と結ぶ。

どれもまぎれもなく、日々目にしている事実。私もまた、ヨソモノな外国人の1人。だが、ここに映し出されているのは、決して誇張でも何でもない、ありのままの事実だとはっきりと言える。




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本業は画家であるセレーナ・ノーノ(Serena Nono)監督の3本目の映画「Venezia Salva(救われたヴェネツィア)」。1618年のスペインによるヴェネツィア陰謀未遂事件を題材にした20世紀のフランス人哲学者、シモーヌ・ヴェイユによる戯曲「救われたヴェネツィア」を「自由解釈」して撮影、ヴェネツィアの「家のない人たちのための家」に住む人々によって演じられた。もちろんプロの俳優ではない。
ノーノは前作2本を、同じ「家のない人たちのための家」の人々で撮影しているという。ただし、これまではドキュメンタリー。今回は彼らにシナリオを与え、この時代劇を演じさせた。

日本以上に、生まれ育った環境によって、教育から仕事からすべての機会に格差のあるイタリアで、社会的に弱い立場のある人に文化的活動にも参加するチャンスを与えるという意味においては、有意義なのだろうと思う。たとえば演劇であったり音楽であったり、あるいは美術作品にしても、活動そのものを支援するだけでなく、発表会を行なうこともあるだろうし、そういう意味ではそれが映画でもいいはず。
そしてその活動の継続を支援するために、有料にするのは決して悪くないと思う。
だが、ではこの映画は一種の慈善活動なのだろうか?

いや、おそらく、作者の意図はそこにはないだろう。プロの俳優ではない彼らを役者として使うことにより生まれる「何か」を期待しているのだろうと思う。

・・・これはつまり、一種の実験的映画ということなのだろう。
あまりにも棒読み、棒立ちの作品は、それがやはり素人による演技だからなのか、あるいはあえてそういう演出なのか、どう見たらいいのか、こちらがどういう立ち位置で臨めばいいのかがわからず、 混乱をきたした。
タイトルと(内容と)は裏腹に、残念ながら救われたとは言い難かった。

Venezia Salva(救われたヴェネツィア)
http://www.veneziasalva.it/

21 ottobre 2013
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by fumieve | 2013-10-21 16:11 | 映画
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