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ヴェネツィア ときどき イタリア

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マルチャーナ図書館のお宝公開〜豪華装丁聖書

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ヨーロッパで紙と活版印刷が普及する前、羊皮紙に手で書いた「本」はそれだけで大変貴重なもので、とくに聖なる書「聖書」は、金銀宝石で飾った豪華な表紙をつけた。

ヴェネツィア共和国の、今でいう大統領にあたる総督(Doge、ドージェ)の付属専用礼拝堂であったサン・マルコ大聖堂は、そんな豪華装丁書をいくつも所有していたが、共和国がナポレオンに降伏した際、これらの豪華本は接収された。ただし、ヴェネツィアにとって幸いなことに、どうやらナポレオン好みではなかったらしい。大聖堂のすぐ目の前にあるマルチャーナ図書館へと管轄が移された。
図書館とはいえ、やはりふだんはひっそりと、厳重に書庫にしまわれている豪華装丁書のカヴァー5冊分が先月、期間限定で公開された。
驚くべきことにフラッシュなしなら撮影OKだったので、とはいってもプロテクションのためかガラスが斜めに入っており、あまりきれいに撮れているとは言い難いのだが、ほかに画像も見つからないのでこのまま載せておきたい。



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1つめがこちら、9世紀末〜10世紀はじめのもの。
うひゃあああ・・・とガラスに張り付いて、なめるように凝視。
額縁と、中央の十字と、周りの聖人の顔の入ったメダルは、「クロワゾネ」と呼ばれる、一種の七宝。金属の薄い、細いリボン状の板を立てて壁を作り、そこに色ガラスの粉を入れて釜に入れると、粉がとけてガラスが鮮やかな色になる。
周りを、小さな真珠の粒が飾る。
聖書カヴァーではないが、以前、ロンドンの大英博物館の「ビザンティウム」展で見た、V&A美術館所蔵の「ベレスフォード・ホープの十字架」を思い出した。あちらも9世紀後半と時代も近いし、あらためて写真を見るとやはりよく似ているが、こちらの聖書カヴァーの方が周りもある分、より豪華感たっぷりだった。

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1. サン・マルコの使徒書簡集、カヴァー
(Coperta dell’Epistolario di San Marco)
板に銀、金メッキ、真珠、ガラス、エマイユ・クロワゾネ、9世紀末〜10世紀はじめ

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2つめがこちら。これはまさに、大英博物館の「ビザンティウム」に出ていたが、聖人たちを丸いメダル型にして装飾的に使うのは、書物カヴァーだけでなく、聖遺物入れなどあちこちで見かける。今でもサン・マルコ大聖堂の宝物館(Tesoro)所蔵で、やはり大英博物館にも出ていた「レオン6世の王冠」(9-10世紀とそれ以降)は代表例。

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2. サン・マルコの福音書、カヴァー
(Coperta dell’Evangelistario di San Marco)
板に銀、金メッキ、真珠、ガラス、石、エマイユ・クロワゾネ、10世紀末〜11世紀はじめ

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3つめは、全体を丸でなく四角で分割し、びっしりとスペースの「無駄」がなくなっているところは、サン・マルコの「パラ・ドーロ(Pala d’oro、黄金の衝立)」を思わせる。もっともあれに比べるとずいぶん「質素」かもしれないが・・・。時代はパラ・ドーロよりかなり下る。

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3. サン・マルコのミサ典書、カヴァー
(Coperta del Messale di San Marco)
板に銀、金メッキ、ガラス、石、クロワゾネ・エマイユ、(真珠、現存せず)11世紀、および14世紀

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あとの2つは時代が下って、13世紀以降。聖書の場面を描いたレリーフ、これはこれですばらしい(はずな)のだけど、個人的に好きなのは前半の3つなので、急激に熱がすーっと下がる。辛うじて、部分的に使われているクロワゾネを眺める。

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このメダルの周りの唐草模様は、同じエマイユでもシャンプレヴェと呼ばれるもので、金属のリボンで色を仕切るのではなく、金属を掘って溝を作り、そこにガラスを流し込む。テクニックとしては象嵌に近い。

4. ギリシャの福音書、カヴァー
(Coperta dell’Evangelistario greco)
板に銀、金メッキ、クロワゾネ・エマイユおよびシャンプレヴェ、13世紀末〜14世紀はじめ

最後の1つは、完全にレリーフだけかと思ったら、なんと背表紙がこんなふうに凝っていて、ここでクロワゾネが使われていた。

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5. ギリシャの福音書、カヴァー
(Coperta dell’Evangelistario greco)
板に銀、金メッキ、背表紙にエナメル・クロワゾネ、14世紀中盤

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すばらしい展覧会で、それぞれの作品の横に、比較的長めの解説があってそれも充実していた。あえて難点を上げると、その解説がイタリア語のみだったことと、もう1つは、解説の中でも「○×と類似している」などと記述があるのに、その○×が展示されていないこと。工芸品にせよ、書物にせよ、実物をここに一緒に並べるとなると次元が根本的に変わってきてしまうのだろうし、写真でいいから目で見て比較できるものがあるとよかったと思う。

これも最終日に焦って見に行ったので、会期はすでに終了。自分の記憶のために、ここに記録をとどめておきたい。

Le cinque legature bizantine marciane
Biblioteca Marciana
http://marciana.venezia.sbn.it/le-cinque-legature-bizantine-marciane

7 novembre 2013
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by fumieve | 2013-11-08 07:55 | 見る・観る
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