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ヴェネツィア ときどき イタリア

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「西洋絵画の歴史1 ルネサンスの驚愕」、遠山公一・著

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なにを隠そうワタクシ、イタリアの大学でイタリア美術史を専攻したが、実は、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエッロを一度もまともに学んだことがないというと驚かれるだろうか?

この本を手に取って、まずぱらぱらっと開いて、ああっ、そうそうっ!!!と思ったのは、日本ではどうなのかわからないけど、少なくともイタリアでは、ルネサンスの絵画というとまず、マザッチョ(Masaccio)だし、その源にはジョット(Giotto)あり、というのが基本だったから。



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巻頭に監修の高階秀爾先生が書いていらっしゃるように、ほんのつい最近まで、絵画や彫刻というのは特定の場所のために、特定の目的を持って作られたもので、たとえそれが移動可能なタブローなどであったとしても、その環境から切り離した段階で、どんなにそれが目で見て美しい作品であれ、本来の意味を大きく損なうことになる。が、幸いなことにイタリアでは、その絵が今でも、描かれた当初のままの場所に残されているものも多い。
10数年前にイタリアに来てここで初めて美術史を学んで、授業の理解力やイタリア語の読解力ではまったくほかの学生に叶わない分、ともかくできるだけ直接観に行って、「足」で稼いだ。

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マザッチョのブランカッチ礼拝堂(Cappella Brancacci, Santa Maria del Carmine, Firenze)。ジョットのスクロヴェーニ礼拝堂(Cappella degli Scrovegni, Padova)。ティツィアーノ(Tiziano)の「聖母被昇天(L’assunta)」(Basilica di Santa Maria Gloriosa dei Frari, Venezia)。アンブロージョ・ロレンツェッティ(Ambrogio Lorenzetti)の「善政と悪政の寓意(Allegorie di buon governo e di cattivo governo)」(Palazzo Pubblico, Siena)・・・。

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美術史上、非常に重要な記念碑的なこれらの作品はいずれも、時を経た現在においてなお、当時あったそのままの場所で鑑賞することができる。

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本書では、コンパクトな新書にも関わらず、その場所の特性を生かした画家たちの工夫にも言及されている。例えばティツィアーノの「聖母被昇天」については、この画家を代表する傑作の1つであることは間違いなく、作品そのものを賞賛、解説する書はいくらでもあると思うが、ここでは、なぜあの大きさであの形なのか、サンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ聖堂という大きな教会の中で、その場における効果をいかに計算したものであるか、3枚の写真と1枚の平面図でコンパクトかつ丁寧に説明されている。作品と環境との関係が明解に示されており、思わず心の中で大拍手!!!

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ほかに、一見同じテーマの絵でも、依頼主や描かれる場所によってその意図が変わってくることなど。フラ・アンジェリコの、サン・マルコ美術館にある2つ「受胎告知」も、もともと修道院の同じ建物の中、数十メートルの距離にあるにも関わらず、ずいぶんと違って見えるのには、やはりきちんと意味があった。これもやはり「場」がほぼそのまま、今でも残ったままで見学できるのでわかりやすい。

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救貧院や孤児院における美術作品にも、やはりそれぞれ明確な意図があった。

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元々は病院で現在は美術館になっているシエナのサンタ・マリア・デッラ・スカーラ(Santa Maria della Scala)にあるドメニコ・ディ・バルトロ(Domenico di Bartolo)のフレスコ画や、フィレンツェのサン・マルコ修道院にあるドメニコ・ギルランダイオ(Domenico Ghirlandaio)の「最後の晩餐」など、これまで実は気になっていながら自分ではあまりちゃんと調べたりしていなかった作品に触れられているのは個人的にまさにツボ。さらに、半年ほど前に興味を持った「生誕盆」が紹介されていたのも嬉しかった。

ミケランジェロのシスティーナ礼拝堂や、ラファエロの「アテネの学堂」、レオナルドの「最後の晩餐」は、多くの方がイタリア旅行の際に見学されているだろう。だが、それだけではないということ、この本を読んで、もっともっとイタリアに絵を見に来てくれる人が増えるといいなと思った。

全3巻というので、続巻も楽しみ。

(画像は1番上をのぞいてすべて、http://www.wga.hu/ から拝借した)

16 gennaio 2014
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by fumieve | 2014-01-17 05:31 | 読む
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