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ヴェネツィア ときどき イタリア

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ルネサンスの美の凝縮、「貴婦人の肖像」 ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館

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ルネサンス初期、すなわち15世紀いっぱいくらいまで、古代のメダルや硬貨のように、横顔を描いた肖像が、いわゆる今で言うところのお見合い写真、あるいは結婚記念写真として使われた。
ある程度以上のご身分の方々にとって結婚は、すなわち家と家との契約だったから、その売り込み、あるいは紹介のために、こうして持ち運びしやすいサイズの肖像画を作成し、相手の家に届けたらしい。



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また、結婚の記念の場合でも、夫婦2人を並べて描くのではなく、1人1人の横顔を別々に、対にしたものが多かった。例えばウフィッツィ美術館所蔵、ピエロ・デッラ・フランチェスカによる、「モンテフェルトロ伯とバッティスタ・スフォルツァの肖像」(1465-1472年)はよく知られているが、ちょうどこの「貴婦人」と同じ頃に描かれている。

ルネサンスの美の基準を凝縮したと言ってもよい、見れば見るほど美しいこの女性像は、裏に銀行家ジョヴァンニ・デ・バルディの妻、と入っていたが、近年になって、それが後から足されたものだと判明しており、モデルが正確に誰なのか、わかっていない。

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まず、滑らかな白い肌を引き立てる、真珠の首飾り。真珠は未婚あるいは新婚の女性にのみ許される装身具で、その時期を過ぎると身につけることができない。シニョンに結い上げられた柔らかそうな金髪は、よくみると薄いヴェールで覆われている。耳は当時、高貴な女性は人目にさらしてはいけなかったはずで、こうしてヴェールの中に透けて見えているのは、ややセクシーな感じだったと思われる。そのヴェールも小粒の真珠と金でできた飾りと銀色のリボンでまとめられている。真珠の粒をあえて中心をずらして連ねてあったり、と、1つ1つが控えめながら凝った作りで、当時の貴金属工芸のセンスと技術の高さが伺える。

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服装の部分は、全体のバランスでいうとそう多くないが、その色と質感で十分にその存在感を示している。胴の部分は深緑色、一見無地のように見えるが、おそらくビロードの単色による模様織りだろう。首あきには別の縁取りがかがられており、前は細かい丸ボタンがびっしりと並んでいる。

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より目を引くのは袖の部分。といってもほんとうに一部だが、これはやはり当時流行した、ビロードまたは錦織り(ブロケード)による、アザミ模様だろう。「アザミ」とも「ザクロ」と呼ばれるこの模様は、高級織物のモチーフとして一般に好まれ、流行したが、とくにこちらも新婚のシンボルとして愛用された。これらの織物もまた、当時の最高峰の工芸品といえる。
ちなみに当時、こういった豪華な袖は、胴衣から取り外し可能で、リボンを通して肩からつなぐようになっていたが、ここではその様子はよくわからない。

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(アザミ模様については、またそのうち・・・
一部はこちらに。http://fumiemve.exblog.jp/9307898/

今見ても、十分に美しいと思えるこの女性、今と全く違うのは実は、おでこやうなじを剃り上げていること。
現代においてファッションの流行が毎年変わっていくように、今ほどのスピードではないにせよ、おしゃれなもの、つまり美の基準は時代により常に変遷してきた。この時代、女性(男性もだが)はほっそりと華奢であることがよしとされ、服装もハイウエストで裾の長いものが主流となるが、身体の縦のラインを強調するために額はより高く、首はより長く見せるため、おでことうなじを剃りあげていた。(たぶん、眉も)

今から思うと奇妙な習慣だが、それがはやりだったのだから仕方がない。やがて16世紀に入ると、人の体も、経済的な豊かさを強調するように、豊かに、つまり横にたっぷりと広いのがよしとされるようになっていく。

ヴェネツィアと違い、1つの工房で絵画も彫刻も請け負っていたフィレンツェにおいて、より彫刻家と知られる兄アントニオ・ポッライオーロではなく、絵画を得意とした弟、ピエロ・ポッライオーロが1470年ごろ、この「貴婦人」を描いたとされている。

ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館の、文字通り「顔」であるだけでなく、ロゴにもなっているこの作品、4月4日(金)から始まる同美術館展に登場する。
イタリア・ルネサンスの、まさに「珠玉の美」、1人でも多くの方が会場に足を運び、間近でその美を味わっていただきたいと思う。

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これまでの、同美術館に関する紹介

ポルディ・ペッツォーリ美術館のボッティチェッリ
http://fumiemve.exblog.jp/19484953/

ミラノで見るルネサンスのモード
http://fumiemve.exblog.jp/19492500/

ミラノ ポルディ・ペッツォーリ美術館 華麗なる貴族コレクション
東京展、Bunkamura ザ・ミュージアム
2014年4月4日(金)〜5月25日(日)

大阪展、あべのハルカス美術館
5月31日(土)〜7月21日(月)
http://www.poldi2014.com/

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19 mar 2014
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by fumieve | 2014-03-20 03:27 | 見る・観る
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