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ヴェネツィア ときどき イタリア

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カルロ・サラチェーニ展、アッカデミア美術館

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またもや白状すると、その名前についてはほとんど覚えがなかった。ヴェネツィア出身の画家、カルロ・サラチェーニの回顧展が、この冬、ローマで行なわれていたときにも、だからポスターなどを見ても、ふーん・・・と思って流していた。
今回、ヴェネツィアのアッカデミア美術館での展覧会は、そのローマでの回顧展を、なんとか出身地のヴェネツィアでも、という関係者の願いが実現したということらしい。
当初予定していた会場が不測の事態により不可になり、改装中で何かと不便なアッカデミアでなんとかやろうと正式に決定したのは数カ月前だそう。関係各位のご苦労には頭が下がる。

カルロ・サラチェーニは、1579年にヴェネツィアで生まれたが、とくに早くからカラヴァッジョの影響を受け、カラヴァッジョ風のスタイルを追随、普及させたうちの1人で、長くローマで活躍していた。
1620年、故郷ヴェネツィアに、パラッツォ・ドゥカーレの装飾のために呼ばれたものの、完成することなく、6カ月で、わずか40歳で亡くなってしまった、という。
なるほど、なので、ヴェネツィアにあまり作品がないこともあり、ここではあまり名前を聞かない(大学の美術史の授業でも出てこなかったと思う)のだが、ローマでは「ヴェネツィアーノ(veneziano、ヴェネツィア人)」とあだ名されていた。




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初期の小品、とくに銅板に油彩で描いた作品などは、筆致の細かい、「クラシック」なスタイルは、ヴェネツィア時代に培われたものだろうか、フランドルなど北方の絵画の影響と思われる。また「鎖につながれたアンドロメダ」など、神話のテーマを借りたお色気絵画では、構図などはヴェネツィアの大御所、ティツィアーノを思い起こさせるが、表現はあくまでも「クラシック」で、フィレンツェやローマの画家がルネサンスのあと通過してきた、マニエリスム(様式主義)からバロックへの流れとは一線を画して、むしろロココ〜ネオクラシックにひとっとびしてしまっているくらいの感じ。
今見ると、やや面白みに欠けるような気もするが、当時はこれはこれで画期的だったのだろうか。

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そして、ローマでの「発見」、カラヴァッジョとの対面へと続くのだが、なるほど、ドラマチックでリアルな表現、聖人を一般の貧しい人々のように描いた作品は、確かにカラヴァッジョ的。だが、その点でまさに、カラヴァッジョを越えることなく、あくまでも追随者でしかない。

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それ以上に驚きなのは、この作風の変化で、前の作品とこの作品とが、同じ作者によるものかと疑ってしまうくらい。ヴェネツィア風あり、トスコ・ロマーナ風あり・・・よくいえば器用なのだろうし、どれもきれいはきれいなのだけど、かえって彼自身の個性がどこにあるのかがわかりづらい。

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ポスターにもなっている「幼子イエスに精霊を示す、聖母と聖アンナ」はこれまた全然印象が違って、全体が写真のようにクリアで写実的、中央の幼子イエスに焦点があたっているものの、彼を抱くマリア、鳩を見せるアンナにも光は十分に行き渡っており、その分、ドラマチック性は抑えられ、より平和で日常的な場面のようになっている。

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・・・と見ているうちに、正直のところ、やはりヴェネツィアの絵画は、15-16世紀のほうが圧倒的にすばらしい、と再認識するにいたった。
展覧会会場の終わりとなっているところから、そのまま、15-16世紀のヴェネツィア絵画の常設部分を逆流しつつ、ヴェロネーゼ、ティントレット、ティツィアーノ、ロット、ベッリーニにカルパッチョ・・・のそうそうたるメンツの数々の代表作品を確認しながら、出口へと向かった。

・・・それはそれで、この展覧会の1つ効果だと言えるのかもしれないが。

注意 アッカデミア美術館は現在改装工事のため、その日により部分的に鑑賞不可の展示室や作品があります。
また、第10室の「聖カテリーナの結婚」(パオロ・ヴェロネーゼ)は、現在、ロンドンのナショナル・ギャラリーで開催中の「ヴェロネーゼ展」(2014年3月19日〜6月15日、http://www.nationalgallery.org.uk/whats-on/exhibitions/veronese-magnificence-in-renaissance-venice)に出品中のため、現在ここでは鑑賞できません。


カルロ・サラチェーニ、ローマとヨーロッパの間のヴェネツィア人画家
ヴェネツィア、アッカデミア美術館
6月29日まで

Carlo Saraceni. Un veneziano tra Roma e l’Europa
Gallerie dell’Accademia, Venezia
22 mar - 29 giu 2014
www.gallerieaccademia.org

(画像はすべて公式サイトから拝借)

6 aprile 2014
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by fumieve | 2014-04-06 20:23 | 見る・観る
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